ハーバードの精神科医がお勧めする「脳機能を改善するための5ポイント」
「Tinker Dabble Doodle Try」って本を読みました。意訳すると「もっと気楽にものごとを改善しようぜ!」みたいなタイトルっすね。「ハーバード×脳科学でわかった究極の思考法」って邦題で訳書が出てるんですが、気づかずに原著で読んでしまいました。無駄に苦労した……。
さて、著者のスリニ・ピレイさんはハーバード・メディカル・スクールの精神科医で、本書の内容をざっくりまとめると、
- わざとボンヤリすることで脳機能を高めよう!
みたいになりまして、「よい考えを浮かびやすくする最大のコツは「考えない」こと」に近い考え方ですね。原著のタイトルが示すように、脳機能を高めるには逆に心の「焦点を外す」のが大事なんだ!って話であります。
では、具体的にどんな作業が必要になるかと言いますと、個人的に実践しようと思ったポイントはこんな感じです。
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脳の焦点を外す
毎日の仕事の中で、ガンガンに集中することを少し忘れて、「デフォルト・モード・ネットワーク」(DMN)と呼ばれる脳の回路を起動させるのが最初のポイント。ピレイさんいわく「DMNは魔法が起こる場所」とのことで、実際に過去の研究でもDMNが活性している時ほど良いアイデアが浮かび、集中状態のときより優れた判断が可能になることも多いとのこと。
脳の焦点を外すには「積極的で建設的な空想」をすればOKで、たとえば「良いプロジェクトを思いついてバリバリ取り組んでる自分」みたいな楽しい妄想を試してみるわけっすね。ただ、本書では強調されてませんが、一方でDMNはメンタルの悪化につながる思考にも関わるエリアなんで、あくまで楽しい妄想ができるような環境づくりは必須。 -
積極的で建設的な空想をする
上に書いた「積極的で建設的な空想」を行うために、博士は次のような手順を推奨しておられました。
1. まず自分の意識を内側に向け、リゾート地で寝転がったり、かわいい猫とたわむれたりと、とにかく自分が楽しめるシーンを想像する。
2. 20分ほどそのまま空想を続け、脳が勝手に場面を展開して行く様子を見守る。
3. 以上の作業を1日に何度か行うことで、新鮮な気持ちで仕事に臨むことができる。 -
45分の集中には15分の非集中を心がける
「集中する」ってのは良いことばかりではなく、「脳の前頭前野(PFC)のエネルギーを枯渇させる」といったデメリットもあるとのこと。例えていえば、「集中状態=目の前の問題につき刺さる強烈なビーム」「非集中=周辺の視界を広く見わたすレーダー」みたいな感じなので、どちらかに特化するんじゃなくて、両方とも意識して使うのが大事って感じです。
そのために博士は、45分の集中作業ごとに15分だけ上記の「積極的で建設的な空想」をする時間をはさもう!と提言しておられます。確かにずーっと集中して仕事ができたと思ったら、仕上がった原稿がまったく面白くないってケースはよくありますからね。これは非集中をはさんでないせいで視野が狭くなったのかもっすな。 - とにかくいろんな趣味を持つ
いろんな趣味に没頭する作業は楽しいだけでなく、仕事や家庭で直面している問題に新たな解決策を見出すのにも役立つと博士は指摘しておられます。
本書ではアインシュタインとピカソが、めちゃくちゃいろんな趣味に手を出してた事例をあげてまして、たとえばアインシュタインは美学理論やフロイトに興味を持ち、 ピカソは写真やX線技術に強い影響を受けたとのこと。とにかく好奇心にまかせていろんなものに手を出し、その結果として新たな思考が生まれたんだよーって話ですな。 -
落書き精神が必須
博士は「落書き」の効能も強調しておられまして、「無意識の脳を活性化し、集中力の呪縛から解放される方法の一つが落書きだ。落書きはDMNを活性化させ、凝り固まった脳を意図的に邪魔することができる」とのこと。
といって、これは別に「落書きが最強!」って話ではなく、あくまで「遊び」の精神を忘れるな!って話なんで誤解なされませぬよう。「遊び」の重要性は「最高の体調」にも書いたとおりで、博士の表現で言えば「危険を冒すことなく世界を理解する」ための最良の手段なんで、ここらへんはぜひ心がけておきたいとこです。
ってことで、気になるとこだけ抜粋してみましたが、他にもDMNに関する話題が盛りだくさんなので気になる方はどうぞ。まぁ、本としてはちょっとまとまりに欠けてるとこがありまして、「もっと言いたいことがあったのを無理やり詰め込んだんだろうなー」って感じなんですが、そこを気にしなければ楽しく読めるかと。