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今週半ばの小ネタ:窓のない環境で働くのはヤバすぎる、ドア・イン・ザ・フェイスは今でも有効? 良いアイデアを思いつける人の特徴

Summary

ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

    

 

 

窓のない環境で働くのはやめときなはれ!という実験

薄暗いオフィスを好む人はいないでしょうが、ノースウェスタン大学などの新しい実験(R)では「窓のない環境で働くのはやめときなはれ!」みたいな結論になってて「そりゃそうですよねー」とか思いました。

 

 

研究チームは日勤のオフィスワーカー49名に協力を頼み、健康レベルのや睡眠の質などを測定。参加者のうち27名が窓のない職場に勤め、22名は窓のある職場だったそうな。

 

 

さらに、窓のない職場で働く10名と窓のある職場で働く11名については、光の照射レベル、日中の活動量、睡眠量などを専門のガジェットで測定しまして、みんなにどんな違いがあるのかを確認したとのこと。その結果は大方の予想どおりでして、

 

  • 窓のないオフィスの参加者と比べて、職場に窓がある参加者は、働いている時間に白色光を浴びる量が173%も多く、一晩の睡眠時間が平均46分長い傾向があった

  • 窓のないオフィスでは、身体のトラブルや活力のスコアが窓のある職場よりも低かった。全体的な睡眠の質、睡眠効率、睡眠障害、日中の機能障害なども、悪い結果が確認された

 

だったらしい。研究チームは「オフィス環境の設計は、自然な日光の照射が従業員の健康に関わる事実を考慮すべきだ」と結論づけております。窓がないオフィスは息が詰まるだけでなく、睡眠の質にも影響を与える一大事なんだ、と。

 

 

と言われても、現時点で日射量が少ないオフィスで働いてる方は対策が難しいとこですけど、とりあえずの対策としては、

 

  • 定期的に外に出て太陽光を浴びる

 

 

といったあたりになりますかねぇ。どうぞご自愛ください。

 

 

 

ドア・イン・ザ・フェイスは今でも効果があるの?の再現実験

ドア・イン・ザ・フェイス(DITF)っていう、有名な交渉テクニックがありますわな。最初に「10万円貸してくれ!」と大きめなお願いをして断られたら、続けて「じゃあ1000円でいいや!」と小さな要求をすると、いきなり1000円をねだるよりも相手が同意する確率が高まるっていう心理テクニックであります。

 

 

で、近ごろ「ドア・イン・ザ・フェイスって本当に効くの?」って疑問に取り組んだデータ(R)が発表されておりました。なにせオリジナルの研究が公開されたのはもう45年ぐらい前になりますし、当時の参加者もアメリカの大学生だけだったんで、いまでもDITFが妥当な手法なのかを問うのは自然なことなんですよね。

 

 

これはケルン大学の研究で、1975年に行われたオリジナルの実験を再現。研究の信頼性を高めるために、オリジナルテストの5倍にあたる391人の参加者を対象にしております。どんな実験だったかと言いますと、

 

  1. アシスタントが被験者に話しかけ、少年院で無給のカウンセラーとして週に2時間働いてほしいと頼む

  2. 最初の依頼を断れたら、今度は非行少年たちが動物園に行くのに付き添ってくれないかと頼む

 

みたいな感じでドア・イン・ザ・フェイスの効果をチェックしたそうな。すると、その結果がどうだったかと言いますと、

 

  • いきなり小さい頼みごとをした場合の承諾率は34%だった
  • 大→小の手順で頼みごとをした場合の承諾率は51%だった

 

のようになってます。この数字はオリジナル実験の数値とかなり似てまして、「45年の月日を経てもドア・イン・ザ・フェイスの効果は高かった!」という結論っすね。

 

 

そんなわけで、やはりドア・イン・ザ・フェイスは強かったってことで、ビジネスの世界で交渉が多い方は今後も安心してお使いいただければと思った次第です。さすがチャルディーニ先生の実験は強い……。

 

 

 

良いアイデアを思いつける人はアレがうまい

気が散りやすい人ほど創造性が高い」とか「変わった人ほど創造性が高い」とか、アイデアマンの指標はいくつかあるんですけども、新しいデータ(R)では、

 

  • 無関係な単語をガンガン列挙できる人ほど創造性が高いのだ!

 

みたいな結論になってて面白かったです。たとえば、「犬」と「猫」は同じ動物なんで割と関係性が近いですが、「犬」と「オレイン酸」は意味がかけ離れてますわな。このように、なんの関係もない単語を次々に列挙できる人は、良いアイデアを生み出す能力も高いんじゃないかと思われるわけです。確かに無意味な単語をずらずらと並べていくのは難しいっすね。

 

 

これがどんなテストだったかと言うと、

 

  1. 8,914人の被験者を集めて、「できるだけ意味が異なる単語を10個挙げてくださいねー」とお願いする

  2. コンピュータのアルゴリズムによって、被験者が挙げた単語の意味的な距離を計測
  3. と同時に、みんなに従来の創造性テストをやってもらい、単語テストの成績と比較

 

みたいになってます。その結果、一般的な創造性テストのスコアが高い人は、無関係な言葉をより多く思いつくことができることがわかったと言うんですな。

 

 

ちなみに、この「無意味な単語テスト」で計測したのは、創造性における「拡散的思考」です。ひとつの問題に対してど複数の解決策を思いつける能力のことで、このスキルが高い人ほど常識にとらわれない発想ができるケースが多め。まぁ確かに、まったく関係ない言葉を次々に思いつける能力は、常識から外れたアイデアを生む能力と被ってそうな気はしますな。

 

 

もちろん、これはあくまで創造性の一側面でしかないので、「無意味な単語を思いつける人はアイデアマンだ!」と決まったわけじゃないものの、友人などに「無見解な単語10個リストアップしてみて」と頼んでみるのもおもしろいかもしれないですね。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。