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論破しても陰謀論にはムダムダムダ!では、どうすればいいのかというお話


 

Qアノンに関する本(R)を読んでおりました。ご存じのとおり、Qアノンはアメリカの陰謀論グループで、「世界は悪魔崇拝や人肉食の組織に牛耳られており、トランプはそれと戦う英雄なのだ!」みたいな考え方っすね。普通に考えれば「なんじゃそれ」な話ですけど、実は日本にも信望者はいたりするからすごいもんです。

 

 

本書を書いたソフィア・モスカレンコ博士はペンシルバニア大学で「過激派」の調査をしてる先生で、「なんで人間は陰謀論にハマるの?」や「極端な考え方を持つ人たちはどうすべき?」といったポイントを調べておられます。日本でもワクチン陰謀論などはありますし、人ごとじゃない問題っすな。

 

 

で、まだざっと読んだだけなんであれですが、個人的に勉強になったポイントを覚え書きしときます。

 

 

陰謀論にハマる人の理由

  • 陰謀論は孤立や孤独によって激増することが、社会科学における複数の研究からわかっている。社会からの孤立、それにともなうSNSなどの使用の増加、他者への恐怖感があいまって、陰謀論はどんどん過激化していく。

 

  • 陰謀論によって過激化する可能性に男女の差はないが、その信念をもとに「攻撃の計画と実行に踏み出す」可能性は男性の方が高い

 

  • 過激化は段階的に起こると思われているが、実際には突発的に起こることが多い。それまで無関心だった人が、SNSで何らかの投稿を見て、その直後から過激化することも珍しくない

 

  • 特に男性にとっては、過激な思考は「ステータスを得るための手段」として使われるケースが多い。過激な思考は、「俺は一段上の視点からものごとを見てるぜ!」という気持ちを与えてくれるので、それだけでも参加する大きな理由になる。若い男性の場合は、仲間との交流やスリルを求めて参加するケースも多い

 

  • 陰謀論を広めたい人々にとって、SNSはめちゃくちゃ有効な手段になっている。フェイスブックはQアノンのプラットフォームになってるし、メンズ・ライツ・アクティビスト(男性の権利擁護活動団体)はYouTubeで人気だし、白人至上主義グループはインスタでリクルート活動を行ってるし

 

 

 

陰謀論者と対話する際の注意点

  • 相手の信念を論破しようとしない:研究によると、相手の信念について議論したところで、向こうが陰謀論から改宗する可能性はかなり低い。論破を試みたところで、相手は「自分は攻撃されている!」と感じて、逆に自分の信念に凝り固まってしまい、二の足を踏んでしまう可能性のほうが高い。そのため、  相手の信念を否定しようとする誘惑にはできるだけ抵抗しなければならない。

 

  • 理解を深めるほうを重視する:その場で議論しても仕方ないので、陰謀論者には、後になってから別の視点で考えてもらうほうが有効。具体的には、「あなたの気持ちは理解できます」と言った言葉を使い、向こうの信念や主張に同意しているわけではないものの、相手が恐怖や怒りには理解を示すのが大事。そもそも、陰謀論者とて「何かを良い方向に変えたい!」と思っている点は変わらないので、まずはそこによりそってやらないと心のガードは下がらない。

    モスカレンコ博士いわく、「感情的なレベルで相手に橋をかけてやれば、後々で橋を渡ってくれる可能性は高くなる」とのこと。理論よりも感情的なつながりを持て!ってことですな。




  • 社会的なつながりと自然環境を提供する:上述のとおり、人間は社会から孤立すればするほど陰謀論にハマい、過激な思想に飲み込まれやすくなる。そのため、社会的なつながりをとりもどすだけでも、陰謀論から抜け出せる人は少なくない。

    また、モスカレンコ博士いわく、「人と一緒に自然の中を散歩すると、意見の偏りが少なくなるという研究結果がある」とのこと。なんでも自然の中を散歩することで不安や憂鬱の症状が減り、おかげで陰謀論から抜け出しやすくなるらしい。自然すごいぜ。

 

 

  • 自分を大切にする:身近な人が陰謀論にハマった姿を見るのは辛いもの。この状態は多くの人にとって激しいストレスになるため、陰謀論者の知人がメンタルを病んでしまうケースも少なくない。これではミイラ取りがミイラになるだけなので、まずは陰謀論者がもたらすストレスに巻き込まれずに、自分をケアしてやるのが超大事。

 

 

ってことで、いろいろ書いてきましたけど、せんじつめれば「陰謀論者は社会への生きづらさから過激な思考にハマる」といった側面が少なからずあるようでして、薬物依存の問題などと似た印象がありますね。結局はみんな不安と恐怖からハマるケースが多いので、その点に理解を示すしかないんでしょうなぁ……。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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