数学ができる脳とできない脳は何が違うのか?みたいな話
「生まれつき数学が苦手で……」みたいな話はよく耳にするわけです。かくいう私も学生時代から苦手意識が強く、いまだにヒーヒー言っております(統計と確率だけは好きなのでなんとかなってますが)。
では、「数学ができる脳とできない脳は何が違うのか?」ってことで、そこらへんを調べた研究(R)が出ておりました。
これはオックスフォード大学などの調査で、まずはチームの問題意識を紹介すると、
数学は多くの人が苦手とする重要な能力であり、ある程度習得するには何年もかかり、人生全体に影響を与える。
数学力は、教育の進み方、雇用、給与、心身の健康、経済的な困難など、社会全体の幸福の中心となる要素と関連している。
以前にも「数字に強いほうが人生も勝ち組になりやすいらしい」って話がありましたが、数学の能力が年収やメンタルヘルスと結びついてるのは間違いなく、数学力を左右する要素を調べるのは非常に大事なのでは?と、チームは考えたわけですね。
ということで、ここで彼らが何に注目したのかと言いますと、
- GABA
- グルタミン酸
の2つです。どっちも脳の働きに欠かせない神経伝達物質で、GABAが神経細胞を抑制し、グルタミン酸が神経細胞を活発にするという補完的な役割をしてるんですよ。昔から「学習スキルと関係してるんじゃない?」と言われてまして、これらの濃度が勉強の出来不出来を左右してる可能性がそこそこあるんすよね。
簡単に実験デザインを見てみると、こんな感じです。
- 6歳から大学生までの参加者255人のGABAとグルタミン酸のレベルを測定
- みんなに数学の学力テストを受けてもらいつつ、その時の脳活動を測定
- 1.5年後に同じ参加者に同じ作業をくり返す
というわけで、このプロセスをふめば、GABAとグルタミン酸のレベルが数学の能力に関係してるかを判断できるわけっすね。すると、おおよその結果はチームの予想どおりでして、
- 若い参加者の場合は、脳の左頭頂内溝(IPS)と呼ばれる部分のGABAレベルが高い人ほど、数学テストの成績も高い傾向があった
- 同様に若い参加者の場合は、IPSのグルタミン酸レベルが低いと、数学テストの成績も低い傾向があった
- ただし、大学生の場合は、IPSのグルタミン酸レベルが高いほど数学の能力が高く、IPS内のGABAレベルが低いと数学の能力が低い
って感じだったそうな。年長者と年少者で真逆の結果が出てるのが謎ですけど、とにかく神経伝達物質と数学の能力には関係性がありそうなんだ、と。年長者と年少者の違いについては、年齢を重ねるにつれて脳の使い方が変わるからなかーとか思いますが、そこらへんは謎っすね。
あくまで縦断研究につき、そこまではっきりした結論は出せないのですが、いずれにせよ脳内のGABAとグルタミン酸レベルが重要なのは間違いないでしょうから、結局のところ、
- 十分なアミノ酸を補給しておかないと数学の能力が衰えちゃうかもしれないぞ!(グルタミン酸はアミノ酸の一種で、GABAはグルタミン酸から作られるんで)
ぐらいのことは言えそうであります。具体的には魚介・海藻・緑茶・トマトあたりが有効ですかねー。
まぁ神経伝達物質の働きについては生まれつきの要素も大きいのが辛いところですけど、「ヤバい経済学」で有名な天才経済学者のレヴィット先生も数学では落ちこぼれだったと言いますから、そこらへんを心の支えに生きていこうと思います。