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今週末の小ネタ:体内時計を治す方法、男の下半身に欠かせない栄養、音楽で人が仲良くなる理由

Summary

ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

   

 

明るい光とメラトニンで体内時計をフィックスだ!

明るい光」と「メラトニン」といえば、私たちの体内時計に影響を与える二大要素。明るい光は「起きている時間だよ!」というシグナルを人体に送り、暗闇は「眠りにつく時間だよ!」というシグナルを人体に送る働きがありまして、どちらのメッセージもメラトニンの分泌によって部分的に媒介されてると考えられるんですよね。もちろん、体内時計を左右する要素は他にもいろいろありますけど(食事とか)、このふたつの影響がかなり大きいのは間違いないっすね。

 

 

で、それならば「メラトニン」と「明るい光」の両方を使いこなせば、体内時計がつねに乱れまくった人の治療に使えるんじゃないか?ってことで、そこらへんを調べたメタ分析(R)が行われておりました。早朝に眠って昼すぎごろ目を覚ますような人たちを、メラトニンと光で修正できるのではないか?って発想ですね。

 

 

具体的にどんな研究だったかと言いますと、

 

  • 健康な人、認知機能が低下した高齢者、体内時計が乱れた患者を対象に、明るい光とメラトニンを使った治療の効果を調べた研究をピックアップ


  • 最終的には合計で8つの研究を評価し、そのうち7件は夕方にメラトニンを飲み、午前中に明るい光を浴びるパターンだった。残る1つの研究では、朝にメラトニンを投与し、夕方に明るい光を浴びることで、シフトワークを再現していた

 

  • 実験で使われた明るい光の350〜10,000ルクスで、光を浴びる時間は30分〜8時間メラトニンの使用量は0.5〜5mgだった

 

ってことで、体内時計の治療としては、わりとベーシックな内容になっております。そこで、分析の結果がどうだったかと言いますと、

 

  • 明るい光とメラトニンを一緒に使うと、単一の療法に比べて体内時計を改善する効果が高い

  • と同時に、明るい光とメラトニンの併用は、日中の覚醒度や活動性を高めるなど、高齢者に限り日中の機能も改善した

 

って感じになってます。まだまだデータが少ない印象はありつつも、とりあえずは良い結果が出てますんで、「どうしても遅寝遅起きが直らないんだよなぁ……」という悩みをお持ちの方は、お試しいただくといいんじゃないでしょうか。

 

 

 

 
葉酸は女性だけでなく男性の下半身にも必須

女性の健康には葉酸が必須!とはよく聞く話。特に妊娠中には欠かせない栄養素で、こいつが不足してしまうと、乳児の成長が阻害されちゃうことがわかってるんですよ。

 

 

ただ、当然ながら葉酸は女性だけでなく男性にも重要な栄養素だったりします。新しいメタ分析(R)でも、「適切な葉酸レベルをキープしないと男の下半身がヤバいよー」って結論になってまして、ぜひご注意いただけるといいのではないかと。

 

 

これは動物およびヒトを対象とした過去のデータをまとめた調査で、。動物実験6件、ヒトと動物の複合実験1件、ヒト実験16件、合計23件の論文を分析しております。おもに「男性に葉酸のサプリを飲んでもらったらどうなるか?」を調べてまして、おおよそ結果は以下のような感じになってます。

 

  • 男性164人に1日5mgの葉酸サプリを飲んでもらった4つのRCTを分析したところ、サプリを飲んだ男性は精子の濃度と元気さが改善される可能性が認められた。精子の形態に対しては、意味のある効果は認められなかった


  • このような葉酸の効果は、不妊症の男性、または血中の葉酸濃度が低い男性に現れやすいと思われる


  • 動物実験でも、健康なオスの葉酸レベルと、胎児の発育や妊娠確率の改善とのあいだに小さな相関が示された

 

ってことで、一般には女性用として注目されがちな成分ですけど、どうやら葉酸は男性の下半身の健康にも欠かせないっぽいですよーってことで。全体的にはまだハッキリしたことは言えないレベルなんですけど、男性の皆さまは、不足しないようご注意ください。

 

 

 

なんで音楽は人を仲良くさせるのか?問題

音楽のメリットは疑いようがなく、「メンタルにいい!」って知見も山ほどあるわけです。そこで新しいデータ(R)では、「音楽はなんで人を結びつける効果が高いの?」みたいな疑問を深掘りしてくれてておもしろかったです。音楽の効能のひとつに「社会的なつながりを増やす」って機能があるけど、これはどんな理由で発生してるのか?ってポイントですね。

 

 

これはバル・アイラン大学などによるレビュー論文で、過去の神経科学の文献をだだーっとまとめて、「音楽の社会的な機能と脳」についてチェックしてくれております。そもそもなぜこういう調査をしたかと言いますと、

 

  • 新型コロナ下で、ネットを介した音楽ムーブメントが世界中で流行ったのはなぜだ?

 

みたいな問題意識があったかららしい。日本でいう「うちで踊ろう」みたいな流行が世界中であったみたいでして、こういった非常事態のなかで、とりわけ音楽が力を発揮しやすいのはなんでだろう?ってのが研究の動機になってるわけっすね。

 

 

で、分析の結果、音楽の機能と効能について、チームはこんな感じでまとめてます。

 

  1. 共感回路:音楽を介した交流により脳の共感システムが作動し、他者の感覚に同調しやすくなる。

  2. オキシトシン:音楽に合わせて歌ったり体を動かすことで分泌され、他者との社会的な結びつきを感じさせる。

  3. ドーパミン:快感をもたらす神経伝達物質。音楽への期待によって分泌され、報酬やモチベーションの感覚をもたらす。

  4. 言語構造:そもそも古代では音楽は言語と並ぶコミュニケーションツールであり、言語よりも深いエリアを刺激することがわかっている。

  5. コルチゾール:ご存じストレスホルモン。みんなで歌ったり、グループで一緒に音楽を聴いたりすると、脳内で分泌量が下がる。

 

ってことで、簡単に言ってしまえば、人間が音楽を作ったり聞いたりするときに使う脳や神経伝達物質の働きは、人間の他者理解、共感、協調にも関わってるんだよーってことですね。音楽で人と結びつくような気分になるのは、ちゃんと脳の基盤があるわけっすな。ここらへんを念頭に置きつつ音楽を使うと、さらに

 

 

 

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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