今週末の小ネタ:卵めちゃ脳に良い説、集団アートがめちゃメンタルに良い説、読書とネットで記憶力が保たれる説
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
卵を食べると記憶力の低下が防げるんじゃないか説
「卵は体にいい!」ってのは間違いないところですけど、新たな研究(R)では「適度に卵を食べてる人は記憶力の低下を防げるかも知んないよ!」って話になっててよろしゅうございました。そもそも、卵ってのは、脳の働きを正常に保つための栄養素がたくさん入ってるんで、定期的に食べることで認知機能が向上して、記憶力の低下を防げる可能性は昔から指摘されてきたんすよね。
ってことで、この観察研究では、卵で高齢者の認知機能の低下を遅らせることができるかをチェック。具体的には、アメリカとカナダに住む50歳以上の成人計470人を対象に、「みんな普段どれぐらい卵を食べています?」ってのをたずねたうえで、「California Verbal Learning Test」って質問紙で記憶力を調べたんだそうな。検査は研究のスタート時とおよそ4年後に測定し、成績の変化をチェックしたんだそうな。
ちなみに、卵の摂取量は以下のように分類されております。
- 卵をあんま食べないグループ:週に23グラム(卵約半個分ぐらい)
- そこそこ卵を食べてるグループ:週に24〜63グラム(卵0.5〜1.5個分ぐらい)
- たくさん卵を食べてるグループ:週に63グラム以上(卵2個以上ぐらい)
でもって、最後にみんなの年齢や教育レベル、運動量などでデータを調整したところ、結果はこんな感じになりました。
- 「そこそこ卵を食べてるグループ」は、「卵をあんま食べないグループ」に比べて記憶力の低下が遅かった。
- 「たくさん卵を食べてるグループ」も記憶力の低下が遅かったが、この結果は有意ではなかった
というわけで、週に卵を0.5〜1.5個分ぐらい食べてれば、記憶力の低下を防ぐに十分な栄養を取れるのではないか?って結論ですね。私は1日1〜2個を食べてるんで、逆に「こんな少ない量でもいいのか!」って気になりましたけど。
まぁあくまで観察研究なんで因果関係はわからないし、そもそも参加者の卵の消費量が一般の人々よりも少ないんで、サンプリングバイアスもかなり疑われるとこではあります。そこはご注意いただきたいですけど、卵が体に良いのは確実なんで、脳を守るためにもガンガン食べていけばいいんじゃないかと。
集団ペインティングがメンタルに超良いのでは?説
「集団ペインティングが鬱病に効きまくるかもだ!」と結論づけたメタ分析(R)が出ておりました。
集団ペインティングってのはアートセラピーの一種で、グループでセラピストと会話しながらアート(絵画とか彫刻とか)を制作するって形で進む感じです。グループ内でセラピストと話し合えるうえに、言葉だけでは表現しにくいことをアートで表現できるんで、メンタル改善の効果も高いと言われてるんですよね。
では、その実力はどんなもんかってことで、ここでは6つのRCTをまとめて、グループアートセラピーが鬱病の若者に与える効果を検討してくれております。対象となった試験には567人の青年(12歳から19歳)が含まれ、治療期間は1カ月から3カ月だったとのこと。
そのうえで、鬱病の症状レベルのほか、ポジティブな感情、ネガティブな感情、レジリエンスなどをチェックしたところ、
- なんもやらないグループと比較して、集団ペインティングは鬱病の症状スコアがガッツリ改善した
- 集団ペインティングは、その他のすべての指標も改善させた!
だったそうです。この結果を見てると、集団ペインティングは鬱だけでなく感情のコントロールや自尊心にも良い影響をおよぼすみたいでして、あらためて「絵画とかやってみたいぜ……」って気になりました。
ただ、いろいろ見てますと、この文献で扱われている3つの試験がオリジナルの臨床試験ではなく系統的レビューだったりしまして、「ん?」と思うところが多いんすよね。なんか引用のミスだと思うんですけど、信頼性にだいぶ疑問符がついたことではありましたね。
「なんか物覚えが悪くなったなー」はなんで起きるのだろうか?
年を取ると「なんか物覚えが悪くなったなー」みたいなことは誰にでも起きるもんで、これを主観的記憶障害などと呼んだりします。普通に日常生活は送れるんだけど、本人的には昔よりも脳の働きが弱くなったように感じられちゃうわけですね。
で、新しいデータ(R)は、「主観的記憶障害になりやすい人のライフスタイルとは?」を調べてくれてて勉強になりました。一説には、主観的記憶障害な人は、そうでない人に比べて認知症を発症する可能性が2倍高いとも言われてまして、ここらへんを知っておくのは重要だろうと思うわけです。
研究では、主観的記憶障害に悩む50歳以上の男女497名を対象に、記憶力や言語の運用能力をテスト。さらに対面式のインタビューを行い、みんなの年齢、認知症の家族歴、インターネットの使用、睡眠習慣、趣味、テレビを見る時間、運動、読書時間などを調べたんだそうな。
すると、主観的記憶障害がある人の特徴は、こんな感じになりました。
- 既婚者に比べて独身者は障害が起きるオッズが2.38倍になる
- 毎日のテレビ視聴時間が1時間増えるごとに障害が起きるオッズが1.18倍になる
- 毎日インターネットを使っている参加者は、そうでない参加者に比べて障害のリスクが78%低い
- 高学歴の参加者は初等教育しか受けていない参加者に比べて障害のリスクが44~74%低い
- 週の読書時間が1時間増えるごとに、障害のリスクが12%低くなる
ということで、独身でテレビを見る時間が長い人ほど障害のオッズが高かったのに対し、インターネットと読書は脳機能の低下リスクが下がってたわけですね。まぁインターネット利用については「はい」か「いいえ」かの二分法でしか評価しないので、くわしいとこはよくわからんのですが。
あと言わずもがなですが、この研究は特定の集団を対象とした横断研究なんで、「認知がちゃんとしてるからインターネットを使う」って可能性もありますんで、そこもご注意くださいませー(個人的にはインターネットは認知の刺激が大きいから良いのかなーとか思いますが)。