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「最高の体調」ゲットに欠かせないポイント「畏敬の念」をブーストさせるにはどうすればいいのか?問題

 

最高の体調」では、「畏敬の念を大事にしようぜ!」みたいな話を強調しております。

 

 

たとえば、宇宙の広大さにおののいたり、大自然の雄大さに感動したり、トム・クルーズの体当たりアクションにビビったりと、心の底から「うおおー!」と思えるような感情は、脳内のストレスを大きく減らし、ひいては全身の炎症をやわらげる作用があるんですよ。これは、あんま一般の健康本では指摘されないポイントなんですけど、畏敬の念が重要だってのは間違いないもんで、ぜひ頭の片隅に置いておいていただけると幸いです。

 

 

でもって、ヨーク大学などから新たに出た論文(R)では、「そもそも畏敬の念ってどんな感情?」とか「畏敬の念はメンタルヘルスにいいの?」ってポイントを調べてくれてて有用でありました。

 

 

これは、過去の畏敬にかんする研究をまとめたレビュー論文で、あらためて畏敬の念の重要性と、畏敬の念そのもののの構成要素を端的にレビューしてくれてます。そのポイントをざっくりまとめると、こんな感じです。

 

 

ポイント1 畏敬の構成要素

  • 畏敬の念は2つの要素からなり、その1つ目は「知覚における広大さ」がある。これは、自分が慣れているものより大きいものならなんでもいい(巨大な木とか銅像とか)。

 

  • 構成要素の2つ目は、「知覚における広大さの調整」である。これは、はじめて見るような大きなものを、自分の常識のなかに組み込むことを意味する。たとえば、グランドキャニオンを実際に見て、日本の渓谷とはレベチな広大さに混乱したときのような状態が、それに当たる。

 

  • また、「広大さ」とは巨大建築のように物理的に大きなものだけを意味せず、カリスマ的な有名人に会ったときなどに感じる畏敬の念も、「広大さ」の一種と言える。「広大さ」は「力」の概念と共通するところが多く、物理的な力、社会的な力、政治的な力、あるいは名声、威信、富、権威、知性、美、スキルにかんする力など、ほとんどあらゆる形の力は畏怖の念を呼び起こす可能性がある。その意味では、説明力が高い理論(進化論とか一般相対性理論とか)も畏怖の念を呼び起こすことができる。

 

  • 「畏怖の念」は単一の感情ではなく、複数のバリエーションが存在する。具体的には、「恐怖と脅威(巨大な竜巻とか津波とか)」「超自然的なもの(神、幽霊)」「美しさ(大自然、アート)」「能力・才能(ピアノの名人、チェスの天才)」「美徳や道徳的善良さ(過去の偉人)」などがあり、畏敬の念は必ずしもポジティブな感情とは限らないことがわかる。

 

 

ポイント2 畏敬のメリット

  • 上記のとおり、畏敬の念は、時に強い恐怖や脅威と結びつき、このタイプの畏敬の念はメンタルヘルスに良くないので注意が必要である。

 

  • 一方で、ポジティブな畏怖の念、特に自然に対する畏怖の念には多くの健康効果があることが分かっている。畏敬の念は幸福感を高め、ストレスを軽減し、不安を減らし、楽観性、感謝、思いやり、愛、向社会的傾向(謙虚さ、寛大さ、攻撃性の低下など)を促進する。

 

  • さらに、畏敬の念は人とのつながりや精神性と関連しており、お金や物質主義といった世俗的な関心を超越するメンタリティを生む。このような自己超越の感覚は「オーバービュー効果」と呼ばれ、多くの宇宙飛行士が、宇宙から地球を見た際に「人類や宇宙との一体感が強まった」と報告している。

 

 

ポイント3 畏敬の念を感じるのが上手い人と下手な人の特徴

  • 世の中には畏怖の念を感じるのがうまい人がおり、彼らには「没頭」「気質的畏怖」「経験への開放」という3つの特徴がある。

    • 没頭=ある活動や経験(映画とか)に完全に没頭し、自分のことを忘れられる能力。

    • 気質的畏怖科学や芸術など、豊かな内容を持つが不確実が高くて複雑なものに引きつけられる性格。

    • 経験への開放性=新しいアイデアや経験に対してオープンであること。どんな新しいことでも受け入れられる性格。

 

  • 逆に世の中には畏怖の念を感じるのが下手な人がおり、彼らには「自分のことを考えがちな思考」「うつ気質」「自己批判」という3つの特徴がある。これらの要因が畏敬の念の妨げになるのは、畏敬の念を抱くためには世界とつながる能力が必要で、そのためには自己を越えて、情報が豊富な外部刺激に焦点を合わせる必要があるからである。

    したがって、自己へのこだわりは、自我から離れて環境に没入する能力を奪い、そのせいで畏敬の念を感じにくくさせてしまう。同様に、うつ気質も「自己を超えた視点」を持つことを難しくさせ、孤独感、人とのつながりの喪失、欠陥のある自己への執着を生んでしまう。

 

  • 畏敬の念を抱くための障壁を克服するには、マインドフルネス瞑想が有効だと考えられる。マインドフルネス瞑想の実践は、自己へのこだわりを減らすのに役立つ可能性があるため、定期的にトレーニングをすることで、個人を新しい経験にオープンにしてくれる。

 

 

ってことで、いろいろまとめてみましたが、やっぱり畏敬の念は健康に良いけど、そのためには自己へのこだわりを薄くする必要があるよーってのが大意になりそうですね。その点では、「無(最高の状態) 」で取り上げた方法論も役に立ちそうな感じはしますな。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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