「Z世代は軽薄だ!」とか「ゆとり世代は主体性がない!」みたいな主張って正しいんですか?
世代論ってあるじゃないですか。「Z世代は軽薄だ!」とか「ゆとり世代は主体性がない!」とか「団塊の世代はマウンティングがうざい!」とか、そんなやつです。
要は「生まれた時代によって性格に偏りが出る」って話でして、説得力がある感じがする一方で、それって根拠あるの?って気もしてくるわけです。日本でも普通に世代論は使われますけど、果たしてどんなもんなんですかねぇ。
ということで、新たに「世代に特徴的な性格ってあるの?」を調べたデータ(R)が出ておりました。
これは4,732人の男女を長期にわたって調査した観察研究で、最初のテスト時の年齢は19歳から91歳までの範囲に広がってます。調査は1955年に始まってまして、一番若い世代でも1945年から1976年生まれぐらいなんで、Z世代なんかはふくまれておりません。日本で言うと「団塊の世代」から「ポスト団塊ジュニア」ぐらいってところですね。
また、性格のチェックには、毎度おなじみビッグファイブを使ってまして、経験への開放性、誠実性、外向性、協調性、神経症傾向が、「各年代によってどう異なるか?」と「世代ごとに性格の変化に違いはあるのか?」ってあたりを調べてます(もちろん、研究の初期は現代のビッグファイブのテストが使えなかったんで、昔に使われた性格テストを変換して近似値にしてますが)。
で、分析で出た結果について、研究チームは「まちまち」と表現しておられます。
- 基本的に、世代によって性格特性が違うってことはあんまなかった。
- ただし、戦後に生まれた人たちは、戦前生まれに比べて協調性と神経症傾向のレベルが低く、外向性のレベルが高い傾向があった。ただし、歳を取れば取るほど戦後生まれも協調性などは上がっていき、やがて世代間の差はほぼなくなった。
- また、性格が変化するスピードなどは、時代によって異なるという証拠はほとんど見出せなかった。
ということで、まぁ全体で言えば、世の中で言われるほど世代によって性格が変わるわけでもないんだけど、一部には軽い違いが見られるみたいっすね。
では、なんで上記のような世代差が出たのかと言いますと、研究チームはこんなことを言っておられます。
より昔に生まれた人と比べて、後に生まれた成人の社会的投資と成熟の効果が遅れていることを示している。
簡単に言えば、戦前の人は、戦後生まれより早く社会に出なければならず、そのぶんだけ仕事や家庭での現実にもまれるのも早かったため、「他人とうまくやっていかねばならない!」って性格特性(つまり協調性)が鍛えられやすかったのではないか?ってことです。一方で戦後生まれは、大学に行くぶんだけ協調性が鍛えられるのが遅くなり、そのせいで社会で他人とうまくやる特性が身につくのが遅くなったわけですな。
しかし、いずれにしても世代間の違いは小さそうだし、社会に出ちゃえば結局はみんな似たような性格になっていくしで、やはり世代ごとに性格の偏りを見出すのはあんま意味がないかもしれんですね。あくまでアメリカの調査ではありますが、ここらへんは日本でも同じじゃないかなーと予想。
ちなみに、研究チームも以下のように言っておられます。
この研究は、社会の変化が人々のニーズ、価値、欲求をどのように形成するかを理解するのに役立つ。また、特定の時期に生まれた人々にスティグマを与える、過度に一般化されたステレオタイプに反論している。
確かに、この研究を見る限り「Z世代は軽薄だ!」とか「おっさんはみんなマウンティングばかり!」みたいに世代でレッテルを貼るのは無意味でしょうね。これは過去にも似たような報告がありまして、
ってあたりのデータと整合性があるなーって印象は強いっすな。「Z世代はITに強い」みたいな話だったら「そりゃそうだろうな」とは思いますが、「Z世代は軽薄だ!」みたいになると、だいぶうさん臭い感じですかねー。