【質問】人の目を気にしなくなる方法ってないもんですか?
こんなご質問をいただきました。
他人からどう思われるかがずっと気になって、やりたい行動が取れなくなることが多いです。You Tubeとか見ると「他人は誰もこっちのことを気にしてないから気にするな」みたいなアドバイスばかりで、それができたら苦労せんわとかも思ってしまいます。なにかアドバイスをいただけないでしょうか。
とのことで、「他人の目が気になる!」とか「他人の評価が気になる!」って悩みはよく聞きますけども、この問題をどうにかすることはできないのか、と。
かくいう私も他人の目が気になるたちでして、それが高じて引きこもりがちになってる人間なので、ここらへんの気持ちは非常によくわかります。事実、2013年の研究(R)を見ていると、他人の意見を気にする人は、BISっていう脳の行動抑制系が活性化し、通常の仕事に必要な基本的な認知の能力が下がっちゃうんだそうで、その結果として、
- 他人に決断をまかせがちになる
- 自分のOKラインとNGラインがわからなくなる
- 自分の意見が違っていても主張できない
- 他人から承認されないと落ち着けない
- 何も悪いことをしていないのに、いつも謝っちゃう。
- 人の頼みを断ることができない。
みたいな現象が起きがちになるんすよ。「なんでこんな不自由な思いを!」みたいな気分になりますな。
ただ、これは仕方ないところもありまして、そもそも人間ってのは他人の評価を気にするようにできてるんですよね。なんせ人類ってのは、進化してきた歴史のほぼすべての時代において、コミュニティのなかで助け合いながら暮らしてきたもんで、「仲間はずれ」は死に直結したんですよ。その結果、人間の脳には「他人の目を気にしなければ!」って回路が備わりまして、実際の実験でも「仲間はずれに」された人は、肉体の痛みと同じ脳の神経基盤を活性化すると報告されてるぐらいですからね(R)。
要するに、他人の目が気になるのには進化上の理由があるわけで、他人の評価を気にすることでコミュニティに受け入れてもらい、そこに所属する人たちとの関係を発展させるには欠かせない心理機能だったりするんすよ。他人の評価を気にするからこそ、私たちは自分のスキルも磨こうとするし、それによって親密な関係を築くことができるんで。
なので、「他人の目を気にしても仕方ない!」と頭でわかっただけでは、対策が難しいのは間違いない話。たいていの人は、他人の目を気にするように進化してきたんで、「俺は他人のことなど気にならない!」と言ってはばからない人は、おそらくただの強がりかサイコパス傾向なんでしょう。その意味では、「他人のことなど気にならない」という人は、「うらやましくもあり、うらやましくもなし」という気もするわけです。
では、どうすればいいかってことで、個人的に考える方法はだいたい以下の3つのようになります。
1. 「恥」の感情対策が基本中の基本
「他人の目が気になる!」って理由のひとつに、周囲の否定的な評価によって「恥」の感情がブーストするところがあります。ネガティブな感情にはいろいろありますが、近ごろは「恥こそが鬱病や不安症のかなりの原因だ!」ってのが明らかにされてきてるんですよね。悲しみや怒りも問題の引き金になりますけど、恥はかなりタチが悪いみたいなんすよね。
なので、他人の目を過剰に気にしちゃう背景には、恥への恐れが潜んでいることが多めでして、これを解決するには自分の恥に直接向き合う必要があったりします。その方法については、以下の本が端的にまとまっていてすばらしいんで、こちらをご参照ください。まぁ恥の感情は非常に根深いので、一朝一夕に修正できるもんでもないですけど、過度の恥にお悩みの方は取り組む価値があろうと思います。
2. こちらを傷つけてくる人は、自分も傷ついている人か、ただのサディストである可能性を認識する
他人の目が気になる問題についてよく言われるのが、「他人は誰もこっちのことを気にしてない」ってフレーズでしょう。これはまことに真実でして、ぜひ心に留めておきたいところですが、もうひとつ覚えておきたいのは、こちらに恥の感情を覚えさせてくるような人ってのは、
- ただのサディスト:もともと性格的に人を傷つけるのが好きなタイプなので、気に病むだけ無駄。くわしい性格特性については、「人間のヤバい性格は大きく4つある説」をどうぞ。
- 自分の傷を相手にぶつけてる:自分が抱える傷を見せたくないために、先手を打って他人を小馬鹿にしたり、嫌なことをあえて言ってくるパターン。「ナルシストは馬鹿にされたくないが馬鹿にするのは好き」問題に近い。
って傾向があるんすよ。こういう現象がある以上は、たとえあなたがどれだけ他人に親切にしたところで、他人から否定的に評価されるのは逃れられないとこがあるんですよね。つまり、サディストと傷転嫁マンにからまれたら事故としてあきらめるのが大事でして、「これは自分の欠点を反映しているのではなく、相手の問題である!」ってのを認識するのがいいっすね。
3. 注意のコントロールを身につける
もちろん、他人から否定的な評価をされた場合に、それがすべてサディストや傷のなすりつけだとは限らないこともあります。たんに向こうが正しくこちらの欠点を指摘してるだけのケースですね。
しかし、だからといって、いつまでも恥の感情にさいなまれてても仕方ないので、ここでは心理学者が「注意訓練」と呼ぶトレーニングを実践するのも吉です。その名の通り、自分が何に注意を向けるかをコントロールするトレーニングのことでして、自分の注意を、集中したいものに向け、集中したくないものから遠ざける能力を鍛えていくんですな。こちらは、詳しくは「たった2回のトレーニングで不安が激減する「注意訓練」実践ガイド」などをご参照ください。