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今週半ばの小ネタ:「生きがい」で死亡リスクが下がる? 握力で老いがわかる? 改良版の地中海食が最強?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

  

 

「生きがい」で死亡リスクがガッツリ下がる?

YOUR TIME ユア・タイム」では「生きがいの感覚が時間の余裕を与える!」みたいなことを書いております。そのメカニズムは本書を読んでいただければと思いますが、とにかく「生きがい」の感覚が重要なのは間違いないんですよね。

 

 

さらに、新しいデータ(R)では、生きがいの感覚(人生の方向性や目標をどれぐらい認識しているか)が、どれぐらい健康状態に影響するのかを調べてくれていておもしろかったです。

 

 

これはボストン大学などの研究で、まずは筆頭著者である芝孝一郎先生の言葉を引用すると、

 

人生の高い目的意識は、より健康的なライフスタイル行動(例えば、身体活動や予防医療利用の増加、違法薬物の使用や睡眠問題の可能性の減少)と関連することを示す証拠が増えつつあり、より健康的な生体機能(例えば、炎症とアロスタティック負荷の減少)、身体機能、さらに慢性疾患のリスク(例えば、心血管疾患と認知障害のリスクの低下)、死亡率の低下も見られる。

(中略)

しかし、現在までに、人生の目的と死亡率との関連が、性別や人種・民族性によって変わるどうかを評価した研究は2件しかなく、しかもその結果はまちまちであった。

 

とのこと。もともと「人生の目的」の感覚にはいろいろな健康メリットが知られていたものの、その効果は、人によって大きく異なる可能性もあるんじゃないか、と。果たして、「生きがい」は万人にメリットをもたらすのかってことですね。

 

 

そこで博士は、50歳以上のアメリカ人を調査したデータを利用。13,000人以上を対象に目的意識を評価し、この答えとみんなの死亡リスクを比較したんだそうな。

 

 

すると、「生きがい」と死亡リスクには、以下の結果が認められました。

 

  • 「生きがい」意識が最も高い人は死亡リスクが15.2%だったのに対し、「生きがい」意識が最も低い人は36.5%だった。この関連性は、男性よりも女性でやや強かった。

 

  • 目的意識の高い人はあらゆる原因による死亡リスクが低く、この関連性は人種や民族、性別に関係なく認められる。

 

ということで、人種やら民族を問わず、生きがい」によって死亡リスクは下がるかもしれないらしい。ちなみに、女性のほうがこの効果が強いのは、「男性の方が、困ったときに医療サービスを利用しないからでは?」と推測されておりました。これはありそうですなぁ。

 

 

いずれにせよ、人生の目的が健康の維持への効果がかなり高いのは確実っぽいので、意識しておきたいところですねぇ。

 

 

 

 

握力で生物学的に老いてるかどうかがわかるらしいぞ

握力っていろいろと重要だよなー」ってのは、ここ数年よく言われることです。たとえば、このブログで過去に紹介した話では、

 

 

などがありますね。人体の機能は握力に反映されることが多く、そのおかげで、握力からいろんなことがわかるわけです。

 

 

そこで新たにチェックしたデータ(R)も握力の話で、結論から言うと、

 

  • 握力で生物学的な年齢がわかる!

 

みたいになります。生物学的な年齢ってのは人体の若さのことで、同じように年齢を重ねたとしても、生物学的な年齢が若ければ老化のスピードは遅くなるわけですね。

 

 

これはミシガン大学などの研究で、1,274人の中高年を集めて握力を調べ、これを「年齢加速時計」を使ってモデル化したんだそうな。この時計は、糖尿病、心血管疾患、がん、身体障害、アルツハイマー病、炎症、早期死亡率に関するさまざまな研究を基に作成されたもので、人体がどれぐらい老化しているかがわかるんですよ。

 

 

その結果、なにがわかったかと言いますと、

 

  • 男女を問わず、握力が低い人ほど生物学的な年齢が加速していた

 

だったそうです。要するに、握力が弱い人ってのは、体内の老化が進んでいるんだってことですね。

 

 

研究チームいわく、

 

筋力が長寿の予測因子であること、そして筋力の低下が、病気や死亡率の強力な指標であることはよく知られていました。しかし、今回初めて、筋力の低下と生物学的な年齢の加速との間に強い関連性があることを示す強い証拠が見つかった。

 

このことは、生涯にわたって筋力を維持すれば、加齢に関連する多くの一般的な疾患から身を守ることができることを示唆している。筋力の低下は、喫煙と同じぐらい体に悪いのだ。

 

とのこと。過去の研究では、握力が低い人ほど病気になりやすい傾向も見られてたんですが、これは筋力の低下と生物学的な年齢と関係しているからじゃないかってことですね。筋力の低下が喫煙と同じレベルかもってのは、すごい話ですねぇ。

 

 

ちなみに、この研究は、あくまで筋力と老化が相関するって話でして、握力だけを鍛えたからといって生物学的に若くなれるわけじゃないのでご注意ください。生物学的な若さを保ちたければ、当然ながら全身の筋肉を鍛える必要がありますのでー。

 

 

 

 

修正地中海食は脳の萎縮を防ぐことができるか?

このブログで何度も取り上げている食事法といえば「地中海食」。ギリシャ沿岸などで使われてきた伝統食をまねした食事法ですね。

 

 

でもって、近ごろよく言われるのが、「地中海食をイジったらさらに効果が上がるのでは?」みたいな話です。過去にも「地中海食の『グリーンバージョン』なら、さらに健康効果がはね上がるんじゃないの?」みたいなエントリを紹介しましたが、通常の地中海食を一部変更したら、さらに健康になれる可能性があるわけですね。

 

 

そこで新しい研究(R)では、「改良版の地中海食で脳がデカくなるのでは?」って結論になってて良い感じでした。

 

 

これは肥満や脂質異常に悩む男女284名を対象にしたテストで、18ヶ月間にもおよぶ長期のRCTになっております。実験では、参加者を3つのグループのいずれかに割り付けたんだそうな。

 

  1. 普通の地中海食:一般的な地中海食のガイドラインを守って健康的な食生活を送る。野菜、果物、全粒粉を多く摂取し、鶏肉と魚を適度に摂取し、オリーブオイルなどの不飽和脂肪を使用し、飽和脂肪、砂糖、加工肉/赤身肉を制限する。

  2. 制限型地中海食:一般的な地中海食のガイドラインに加えて、カロリー制限、炭水化物制限、カロリーの約40%を脂肪(大部分は不飽和脂肪)から摂取。さらに、1日に30gぐらいのクルミを食べる。

  3. 緑の地中海食:制限型地中海食のガイドラインに加えて、緑茶を飲む(1日3~4杯)、ミジンコウキクサ(ポリフェノールを多く含む水生植物を1日100gを使ったシェイクを飲む。赤身の肉はさらに制限する。

 

これにプラスして、3つのグループすべてに無料のジム会員権を与え、週に3〜4回、45〜60分の有酸素運動と筋トレをするように指導したとのこと。そのうえで、みんなの脳を調べて、海馬や側脳室のサイズを測定したらしい。

 

 

一般的には、海馬のサイズが減ったり、脳室容積のサイズが増えたりすると「脳が萎縮している!」と考えられまして、認知機能が下がっちゃう可能性が高い    すね。この問題を、果たして地中海食がどこまで改善してくれるかを調べたわけですな。

 

 

その結果、どのような違いが出たかと言うと、こんな感じです。

 

  • 制限型地中海食のグループ、緑の地中海食ともに、普通の地中海食グループに比べて、海馬の減少レベルが少なく、脳室容積のサイズの悪化も低かったLVV容積の増加(悪化)が少なかった。しかし、MED食群ではこの差は統計的に有意ではなかった(P=0.06)

 

ということで、カロリー制限タイプの地中海食にせよ、緑茶を加えるタイプの地中海食にせよ、いずれにしても脳が小さくなる減少を食い止められる可能性が高いのではないか、と。こうして見ると、緑茶やポリフェノールの凄さがわかる感じがしますな。

 

 

個人的にも、緑型の地中海食を心がけたいなーと思う研究でありました。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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