時間のプレッシャーが本性をあぶり出す?──「利他」と「自己中心」を分ける隠れたバイアスとは
「人間は追い詰められた時に本性が出る!」などと良く申します。誰でもふとした瞬間に自分の本性が出てくることはあるものですが、浙江大学などの研究(R)では、「人間は時間のプレッシャーに襲われた時に本性が出る!」って結論になってて面白かったです。
より正確に言うと、「時間のプレッシャーがかかると、私たちは自分の心の奥底にある“隠れたバイアス”に従った行動を取りやすくなる」みたいな話でして、「この人の素はどんな感じなんだろ?」と悩んだ時などに参考になるんじゃないでしょうか。
みんな「他人のため」と「自分のため」がせめぎ合っている
で、まず前提として、どんな人でも「自分の利益」と「他者の利益」の間で葛藤することがあるはず。例えば、「誰かを助けたい」と思う反面、「自分に何の利益があるのか?」と疑問を抱くような瞬間は誰にでもあるでしょう。
過去の研究によれば、このような葛藤の根底には、無意識に働く「利他的なバイアス」もしくは「自己中心的なバイアス」が存在し、場面によってその傾向が浮き彫りになることがわかっております。要するに、私たちの内面には「他人のために動きたい!」という性質と、「自分だけが良ければOK!」という性質のどちらかが強い傾向があり、社会的な判断をする際には、このような“隠れたバイアス”が影響を与えていると考えられているんですな。
でもって、このような性質ってのは「時間のプレッシャーがかかった時に表に出やすいのでは?」ってところを、今回の研究では調べてみたわけです。
この「本性」の表れ方を検証するために、研究チームは「ミニ独裁者ゲーム」という実験を実施。独裁者ゲームってのは、経済学や心理学の研究によく使われる手法で、今回はこれをアレンジして時間プレッシャーの影響を詳しく調べたんですよ。ざっくりどんな実験なのかと申しますと、
- 参加者に見知らぬ相手とペアを組んでもらい、それぞれゲームで対戦してもらう。
- ゲームの各ラウンドでは、参加者は「自分」と「相手」に配分する金額が異なる2つの選択肢から1つを選んでもらう。例えば、参加者が「95円を自分に、85円を相手に配分する」選択肢と、「21円を自分に、18円を相手に配分する」選択肢から選ぶ場合、自分の利益を優先するか、他者の利益を考慮するかという判断を迫られることになる。
- こうした選択を何度も行うことで、各参加者が「利他的」または「自己中心的」な性向を持つかを測定する。
みたいになります。さらに、この時に、参加者には以下の3つの異なる条件で選択をしてもらったんだそうな。
- タイムプレッシャー条件:各ラウンドごとに2秒以内に決断を下す必要があり、直感で判断するように催促される。時間がないため、参加者は深く考える余裕がなく、反射的な反応に頼ることになる。
- 自由条件:時間制限がなく、じっくりと考えることができる状態で決断する。ここでは、慎重に考えた末に判断を下すことが可能であり、「熟考」が行動に表れやすい。
- 遅延条件:選択肢が見えてから10秒の遅延が設定されており、即時に判断ができないように調整される。この状況では、第一印象の直感を抑え、より冷静に考えるための時間が確保される。
この実験デザインによって、被験者が「自分の利益」と「他者の利益」のどちらで動くかを決める際に、時間のプレッシャーがどう影響を与えるかを観察できるわけですな。それぞれの参加者は200回のラウンドをこなし、プレッシャー条件、自由条件、遅延条件をランダムな順序で交互に行ったそうな。
時間のプレッシャーで本性があらわになる
では、この実験でどんな結果が得られたのかと言いますと、以下のようになります。
- 「他人のために!」という本性を持つ人は、時間のプレッシャーが増えると、利他的な選択がさらに強まった。例えば、利他的な性向を持つ人は、時間の制限がない場面では「自分と他者の利益をバランスよく配分する」したとしても、時間が限られると「他者の利益を優先する」ような判断をした。つまり、他人のために動く人は、プレッシャーのかかる状況下でこそ、利他的な本性がより明確に表れると言える。
- 「自分のために!」という本性を持つ人は、時間のプレッシャーが増えると、より自己中心的な行動をとるようになった。つまり、自分のために動く人は、時間のプレッシャーがあると、冷静に自分を制御できなくなり、隠れた「自己中心的な本性」が前面に出てしまう。
というわけで、時間の制約に迫られた時ほど、私たちは普段は抑えられている「利他的か自己中心的か」という本性が一層強調されちゃうみたいですね。
簡単に言えば、この実験は、「時間のプレッシャーは人の本性をあぶり出す!」って傾向を示しております。日常生活の中でも、緊急の判断やストレスの多い場面で「隠れたバイアス」に従って反応してしまうことが多いってことですな。
つまり、この文献から教訓を得るならば、
- 時間制限がある時の自分を観察すると自己分析がはかどる!:緊急の状況や時間制限があるときの自分の行動を観察することで、自分が「利他的」または「自己中心的」な傾向を持つかを把握できる。でもって、自己中心的な判断に傾きやすいと気づいた場合、意識的に「他者の視点」を考慮するよう努めたり、逆に利他性が強い場合は「自分に何の利益があるか」を冷静に検討するようにするなど、行動の調整が可能になる。
- 時間制限がある時の相手を観察すると他人の性質がわかる!:緊急の状況や時間制限があるときの他人の行動を観察することで、自分が「利他的」または「自己中心的」な傾向を持つかを把握できる。それによって、じぶんの好みで付き合うかどうかを決めてみるのもよし。
って感じになるでしょう。時間に追われた場面やプレッシャーがかかる状況ほど本性が出やすいって知見は、普段の生活の中でも「どのように決断するか」を判断するヒントになり得るでしょうな。どうぞよしなにー。