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筋肉1キロで本当に110kcal消費?科学が明かす筋トレと基礎代謝の真

 

 

筋トレ初心者であれば、必ずと言っていいほど「筋肉は脂肪よりも多くのカロリーを消費する」って話を耳にしたことがあるはず。実際、「筋肉1キロが1日で110kcalも燃やす」と言われたり、「5キロ筋肉を増やせば500kcalも消費カロリーが増える!」などと言われております。

 

もしこれが本当なら、筋肉を増やすだけで基礎代謝が爆上がりすることになるわけで、ダイエットや健康維持のモチベーションも一気に上がりそうなもんですな。では、このような考え方はどこまで正しいのかってことで、今回は「筋肉のカロリー消費」にまつわる話を深掘りしてみましょう。

 

 

 

「筋肉が1キロで110kcal燃やす」って話は、どこから来たのか?

では、「筋肉が1キロで110kcal消費する!」って話が事実なのかを見てみましょう。確かに筋肉ってのは脂肪に比べてカロリーを多く消費するんですが、これまでの研究を見てみると、実は筋肉のカロリー消費はそれほど劇的ではないことがわかってたりします。詳しく見てみましょう。

 

 

 1. 筋肉で非活動時のエネルギー消費は増えるか?

非活動時のエネルギー消費ってのは、いわゆる「安静時代謝」のことです。これについては2010年の研究(R)が有名で、この調査によると、筋肉が1キロ増えると安静時代謝が約13kcal程度増えるとされております。

 

安静時代謝には、食事の消化に使う「食事誘発性熱産生」(食事で摂取したカロリーの10%ぐらい)や、筋肉や脂肪、内臓などが消費するエネルギーが含まれますが、このうち筋肉の安静時代謝はわずか13kcal/kgぐらいなわけですな。

 

脂肪の安静時代謝はさらに低く、1キロあたりわずか4kcal程度ですから、筋肉は確かに脂肪よりもカロリーを燃やすとは言えますが、それでも1キロ増えるごとに110kcal増えるほどの効果は期待できなさそうっすね。

 

 

 2. 筋肉で活動時のエネルギー消費は増えるか?」

活動時のエネルギー消費は、体が動いている間に消費するエネルギーのこと。筋肉が増えて体重が増すと、歩く、階段を上がる、家事をするなどの動作がちょっと辛くなるため、わずかながら活動時の消費エネルギーが増えるんですな。

 

具体的には、活動時のエネルギー消費は体重に比例すると言われてまして、例えば、体重90kgの人が筋肉を1キロ増やせば、その分だけ体全体の重量が増えるため、歩いたり走ったりする際に少し多くのエネルギーを使うことになります(R)。仮に、活動時のエネルギー消費が体重1キロあたり11kcalとすれば、筋肉1キロが増えることで、活動時のカロリー消費は11kcal増加することになるわけっすね。

 

この2つのエネルギー消費を合わせて計算すると、

 

  • 筋肉1キロで「13kcal(非活動時) + 11kcal(活動時) = 合計24kcal」

 

ぐらいのカロリー消費が増加する感じになりまして、こちらも「うーん、マジでたいしたことがない……」って結論になりそうであります。切ないですねぇ。

 

 

では、実際に筋肉1キロでどのくらいのカロリー消費が増えるのかを、シミュレーションしてみましょう。

 

仮に体重60kgの人がいて、この人の基礎代謝(BMR)が1400kcal、1日の総消費カロリーが2400kcalだとしましょう。この場合、以下のようなステップでカロリー消費が計算されます。

 

  1.  非活動時エネルギー消費:筋肉1キロが増えると13kcalのカロリー消費が増加。
  2.  活動時エネルギー消費:体重60kgに対して1キロ増えると11kcal程度の活動時カロリー消費が増える。

 

以上を合計すると、筋肉1キロで約24kcalのエネルギー消費が増えることになります。これを5キロの筋肉増加に当てはめれば、1日の消費カロリーは120kcal増える計算ですね。確実にエネルギー消費の増加が見込めるものの、500kcalって数値には遠く及ばない感じでしょうか。

 

 

 

まとめ

ってことで、「筋肉が1キロあたり110kcal消費する」というのは、科学的に言えばやや過大な期待だと言えましょう。とはいえ、一方では、筋肉量の増加がダイエットや健康維持について無視できない効果を持っているのも事実。筋肉量が増えると、少しとはいえ安静時や日常動作のエネルギー消費が増加するんで、体脂肪が増えにくい体質にはなりますからね。特に、私のような中高年は加齢とともに基礎代謝が下がるんで、筋肉量の維持や増加はめっちゃ大事であります。

 

筋肉1キロが消費するカロリーはわずかかもしれませんが、体組成や代謝に及ぼす影響は決して無視できないので、消費カロリーに期待せずに筋トレしようぜ!って結論になるでしょうねー。

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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