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外国語を学ぶ最大のメリットは、脳の仕組みが良いほうに変わるところにある

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言うまでもなく英語の学習は時間がかかる作業でして、ときに「続けても意味あんのかな…」といった考えに襲われることもしばしば。かく言うわたしも、いまだ口語表現が多い洋書にはとまどうことが多く、「道のりは長いなぁ…」などと思っております。

 

 

というわけで、これから英語の勉強中に自分の気持ちが萎えちゃったときのために(笑)、外国語を学んで得られる「科学的なメリット」をまとめておくことに。「人生の幅が広がる」とか「国際感覚が身につく」みたいなボンヤリしたやつじゃなくて、あくまで実験で得られたデータがベース。




1 ワーキングメモリの性能があがる

2013年の論文(1)を見てると、2か国語を話す環境で育った子どもは、1カ国語で育った場合よりもワーキングメモリの能力が高い傾向があったとか。ワーキングメモリは短期的に記憶を保存する能力で、これが優秀だと集中力があがって勉強の効率もアップするなどと言われております。


まぁ、これはあくまで子どもの話なので、成人になってからもワーキングメモリが発達するかは不明。ただし、違う言語でものを考えると、あきらかにワーキングメモリは酷使されるんで、脳トレにはなってそうな気がします。


ちなみに、ほかにワーキングメモリの性能を上げる方法としては、


などが知られております。

2 注意力がアップする

こちらは2010年の論文(2)ですが、バイリンガルな人ほど注意力のコントロールが上手く、目の前の作業から気がそれにくい傾向があった模様。これは、おそらくワーキングメモリの性能があがったおかげかと思われます。上で挙げた緑茶や瞑想なんかも、集中力を増す効果があるって話ですしね。

3 マルチタスクに強くなる

こちらは2013年の論文(3)。バイリンガルな人は、1つの作業から別の作業に意識を切り替えるのが上手く、マルチタスクにつきものの「作業効率の低下」が起きにくいんだそうな。どうも、外国語を学ぶと認知機能が柔軟になって、不慣れな状況にも適応しやすくなるみたい。これまたワーキングメモリが発達した成果でしょうね。

4 脳が発達する

外国語の学習と脳の発達を調べた研究(4)によれば、バイリンガルな人ほど海馬(記憶に関わるエリア)がよく発達していたそうな。「脳を鍛えるには運動しかない!」によれば、海馬は軽い運動などで発達するエリアで、ここを鍛えるとストレスに強くなり、認知症にもなりにくいことがわかっております。同じ効果が外国語でも得られるわけですねー。

5 世界の見方が変わる

日本語と英語の認知について調べた2010年の論文(5)によれば、英語には「水色」に相当する単語がなく(ライトブルーと言うしかない)、そのせいで青色の知覚に違いが出ていることが示唆されております。ボキャブラリーや概念の違いが、世界の見方にも大きな影響をあたえるわけですね。アマゾンの奥地には数字の概念がない部族がいたり、右や左に相当する単語を持たない言語もあったりしますけど、かなり世界観は違うんでしょうなぁ。

まとめ

といったわけで、外国語の学習で得られるメリットは、基本的にワーキングメモリの発達によるところが大。以前にもちらっと書いたとおり、ワーキングメモリは天才を生むための重要な要素でもありまして、ガッツリ鍛えていきたいところであります。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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