好きになれない仕事を好きになる方法「ジョブ・クラフティング」
仕事を楽しむための技法「ジョブ・クラフティング」
「日本人は仕事が好き」なんてイメージもありますが、世界を対象にしたアンケート(1)だと、「仕事がおもしろい!」と思ってる日本人は世界でも超少ないんだそうな。
もちろん、仕事がつねに楽しいなんてことはあり得ないでしょうが、さすがに「仕事が嫌だ!地獄だ!」なんて状況は避けたいもんです。ムダなストレスですからね。
ってことで、近ごろチェックしたイェール大学の論文(2)では、「仕事が楽しくないならジョブ・クラフティングだ!」って話が出ていて、なかなか参考になりました。
「ジョブ・クラフティング」は2000年代から研究が進んだ分野で、要は「楽しく働くには仕事の見方を変えよう!」って話であります。
たとえば有名なのは、病院の清掃スタッフを対象にした1997年の実験(3)。病院の清掃は、毎日のように「死」と向き合わなきゃならないハードな作業の連続で、みんな最初はイヤイヤ仕事をしてたんだそうな。
が、ここにジョブ・クラフティングの技法を使って、「清掃の仕事は『治療』のプロセスのひとつ!」「清掃は病院における『大使』のようなもの!」って意識を植え込んだところ、全員のモチベーションが一変。病院の清掃スピードが一気にあがったらしい。
ジョブ・クラフティングの3ポイント
いまでは「ジョブ・クラフティング」のテクニックは、かなり具体的にメソッド化(4)されてまして、かなーりいろんな方法があったりします。が、そのポイントを超ざっくり抜き出すと、以下のような感じ。
1.セルフモニタリング
まずは自分の感情をモニタリングして、「いま自分は仕事に対してどう感じているのか?」を把握していきます。具体的には、
- 作業と感情の対応を記録する:「同僚と話したときに楽しくなった」とか「経費精算でネガティブになった」とか、日々のタスクでどんな感情を持ったかを、簡単にメモしていけばOK。2週間もすれば、自分のパターンが見えてくるはずですんで。
- 仕事の嫌なとこリストを作る:感情の記録がめんどうなら、とりあえず「いまの仕事の嫌なとこ3つ」と「仕事でやってみたいこと3つ」を書き出したリストを作ってみるのもあり。とにかくいろいろ書き出して、現状をつかんでいくとよさげです。
みたいな感じ。自分がネガティブになりがちな物事がわかったら、あとは解決案を探していくだけであります。
2.改善のためのアプローチの方向を決める
自分の感情パターンがわかったら、具体的に改善に入ります。といっても、いろいろ手を付けるとリソースが分散しちゃうんで、まずはアプローチの方向を絞り込むと吉。
具体的には、ジョブ・クラフティングでは以下の3つのなかから取り組むアプローチを決めていきます。
- タスク:仕事に必要なスキルや知識のなかから、よりよいアウトプットに結びつきそうなものを考える。このへんは、日常的にやってる人も多いんじゃないでしょうか。
- 人間関係:同僚でも顧客でも上司でもいいので、もっとよりよい関係性を結ぶために必要なことを考える。
- 目的:「仕事が持つ意義」を掘り下げてみる。上で紹介した病院の清掃と同じで、「誰のために役立ってるか?」や「これで喜ぶ人は誰だ?」について深掘りしてみるといい感じ。
たいていの場合、どんな問題もこの3つのどれかに当てはまるはず。このなかだと、とくに3番めの「目的」に取り組んでみると、改善の効果が長続きして楽しいかもしれません。
3.仕事に新たな「肩書」をつける
こちらも上の事例と同じで、「病院の清掃員」を「病院のアンバサダー」と言い換え、仕事の捉え方を変えてみる手法。
というと、単なるおためごかしのようですが、これがなかなかバカにできないんですな。研究者いわく、
新たな「肩書」は、たんにマインドセットを変える以上の効果をもっている。新たな肩書によって仕事へのアプローチが変わり、結果として行動にも変化が出てくるからだ。
たとえば尿瓶を洗っているときに、自分を介護者の一員なのだと考えていれば、尿瓶を「洗うべきもの」ではなく「患者の健康レベルを示す指標」として捉えるだろう。そこに、行動と責任が生まれるのだ。
とのこと。仕事の大きな意義に意識を向け直せば、自然と行動が変わっていくんだ、と。これはわかるなぁ。
まとめ
そんなわけで、組織心理学で人気が高い「ジョブ・クラフティング」のお話でした。最終的には仕事の意義を見つけるのが大事ですが、とりあえずセルフモニタリングだけでも発見がありますんで、お試しになっていただければと思います。
とはいえ、上司が激しく嫌なヤツだったり、会社そのものが超ブラックの場合は、いくらジョブ・クラフティングをしたところで焼け石に水。とっとと逃げ出すことをオススメしますが(笑)