グリットってほとんど意味ないんじゃないの?説
グリット意味ないんじゃないの?説
というわけで、またも「グリット」の話です。グリットってのはここ数年で「人生の成功に必要な最強の要素!」と言われてるポイントで、くわしくは「成功するためにもっとも大事な要素?かもしれない「グリット」のお話」などをどーぞ。
とにかくここ数年のビジネス書界隈では「グリット最高!」「これぞ成功の鍵!」みたいな風潮もありまして、ちょっと検索しただけも山のようなエントリがヒットするわけです。
もっとも、近年では「本当にそこまで大事なの?」って話も出てきてまして、グリットの生みの親が「まだまだ現実に活かせる段階ではない」なんて発言もしてたりとか。やや一時期よりはムードが下がり気味な感じかと思います。
そんな状況下、今度は「グリットって意味なくない?」と断じるデータ(1)が出まして、なかなか熱いことになっておりました。
なぜグリットには意味がないのか
これはアイオワ州立大学の論文で、過去に出たグリット論文から質が高い88件を選んでまとめたもの。みんな大好きメタ分析でして、信頼性はかなーり高い内容になっております。
でもっても、まずは著者の結論から言っちゃうと、
全体的に見れば、グリットは一般的に言われるよりも重要ではない。そして、私たちがすでに知っている以上のことを理解する役にも立たない。
ってことで、かなりバッサリと切ってますね。うーん、これはすごい。
では、なぜアイオワ州立大学がここまで断定しているかというと、以下のようなポイントが出てきたからです。
ポイント1 まとめて計算したらグリットの影響力はすごく小さかった
あらためていろんなグリット研究のデータを計算し直したところ、結果はこんな感じだったらしい。
- グリットの高さと学問の成績は相関が0.18しかない!(結局は認知機能の高さと、学習習慣の方が大事)
- ただし、大学の成績については0.5になる
うーん、これは確かに微妙。もちろん統計的には意味があるんだけど、確かにTEDで言ってるほどのご利益ではない感じですかね。
さらに、グリットの世界では「軍人の見習いにグリットのトレーニングをしたら、基礎訓練をクリアする確率がはね上がったよ!」っていう有名な実験があるんですけど、これもあらためて見たら3%ぐらいの改善値だったらしい。これまた辛い……。
ポイント2 まとめて計算したらグリットってほぼ「誠実性」と同じものじゃない?
当ブログではおなじみですが、「誠実性」ってのは人間の性格特性のひとつ。セルフコントロール能力とか、思慮深さとか、目標に向かって行動する能力とか、そういった特性を意味しております。
でもって、こちらもいろいろと計算してみたら、
- 誠実性とグリットのスコアは80〜98%の相関があった!
だったんですな。以前の双子研究でも似たような結果が出てましたけど、あらためて「グリットと誠実性はほぼ同じ考え方じゃないの?」って話になってきたみたい。
グリットのテストを見てみると、その質問の大半が「誠実性」を判断する質問を重なっていることに気づく。ほとんどは一言一句まで同じだ。
ってことで、つまりグリットってのは目新しいアイデアではなくて、数十年にわたって言われてきたことをかっこよく表現しただけじゃないのか、と。これまた手厳しいっすね。
そんなわけで、またもグリットには辛い結論になっおります。まぁ成功するためには幸運も大事ですし、性格や認知機能も必要だしで、「これさえあればバッチリだ!」って答えがあるはずもないですもんねぇ。結局は、いろんな要素がからまってるんだよーという非常に常識的な結論に落ち着きそうな予感が。