「糖質制限で癌が良くなる!」はどこまで本当なんでしょうか?
糖質制限と癌に関するご質問をいただきました。
母がFacebookで「癌の餌はブドウ糖だから糖質制限すれば 症状が良くなる」ってゆうのを見たらしく、かなり信じ込んでいる見ないなのですが、本当に 良くなるんでしょうか? これまでそう言った論文はあったのでしょうか?
とのこと。確かに「糖質制限で癌が良くなる!」「糖質を減らせば癌を兵糧攻めにできる!」みたいな主張はよく聞きますねー。
アメリカ国立がん研究所のご意見は?
では、そのへんがどうなのかを、まずは信頼のブランドである「アメリカ国立がん研究所」の意見(1)をチェックして見ましょう。
砂糖を食べると癌は悪化しますか?
いいえ。癌細胞は普通の細胞よりもグルコースを消費しますが、だからといって砂糖で癌が悪化することを示した研究はありません。砂糖の摂取をやめたとしても、癌が縮んだり消えてしまうようなこともありません。
もっとも、砂糖が多い食事は体重の増加につながり、肥満はさまざまなタイプの癌を引き起こすリスク要因になります。
ってことで、「糖を断とうが癌の対策にはならないのだ!」と断言しておられます。
これが現時点でのコンセンサスでして、科学的な証拠を重視する機関だと、まず「糖質制限で癌が良くなる!」って説を支持してるとこはないでしょう。
というのも、確かに癌細胞はエネルギーを多く使うんですが、同時に普通の細胞だって生きるために糖質を使わなきゃいけないわけです。なので、いくら糖質を減らそうが体はガンガン糖質を作り出しまして、これを全身に送り届けて行くんですな。
でもって、人体は癌細胞と正常な細胞を区別する仕組みがないので、結局は癌にも糖質は送り届けられることに。その結果、生きて食事をしている限りは癌は成長を続けちゃうんですよねぇ。
しかし動物実験だと意外に良い成績が出ている
が、そうは言っても希望はありまして、いっぽうでは動物実験じゃ良い成績が出てるのも事実ではあります。たとえば、
- 2011年の動物実験では、腫瘍を埋め込まれたマウスに糖質制限をしたら症状がやわらいだ(2)
- 2015年の動物実験(3)でも、ケトジェニックダイエットをしたマウスは生存率が上がった
みたいな感じ。どうも、マウスについてはなんらかの良い結果が出るケースが多いんですよね。
では、いっぽうでヒトを対象にした実験ではどうかというと、過去のケトジェニックダイエットについてまとめた2017年のレビュー論文(4)が参考になります。研究者いわく、
多くの動物実験(72%)は、ケトジェニックダイエットの抗腫瘍効果を示している。ただし、ヒトに対する科学的な証拠は弱く、個々人のケースレポートに限られている。
しかし確率論的に言えば現在のデータは、少なくとも特定の個人にとってはケトジェニックダイエットで抗腫瘍効果が得られるかもしれない。
ってことで、かなり穏当な表現ながらも「可能性はまだある!」って雰囲気になっております。
結局、大事なのは糖質より「あれ」じゃない?
また、個人的に気になるのは2010年の報告(5)でして、こちらは130,000人の男女を対象に「糖質と発がん率」を確かめた観察研究になってます。その結果を簡単に言いますと、
- 野菜ベースの糖質制限は発がん率の低下と結びついている
- 肉の量が多い糖質制限は発がん率の増加と結びついている
って感じだったんですな。このブログを長らくお読みの方はもうおわかりだと思いますが、これを見ると「結局、糖質の量にこだわるより食べるものの質をあげるほうが先なんじゃない?」って気になっちゃうわけですな。
つまり、炭水化物の量がどうこうじゃなくて、お菓子やジャンクフード中心の生活をしてりゃ発がん率は上がるし、野菜とフルーツを中心に糖質を取ってれば発がん率は下がるんじゃないの?という。このへんも今後の研究に期待したいところですが、個人的には「食事の質」に気を配ったほうがいいのではないかなーと思っております。
まとめ
いずれにせよ、もっとデータが必要なのは間違いないところですが、現時点でのデータをまとめれば、
- 可能性がゼロではないが、いまんとこ糖質制限が癌に効くって証拠はない
- 発がん率を下げたいなら、糖質よりもまずは原料が第一!
- 個人的には、糖質量よりも食事の質を重視した方がいいんじゃね?と思う
ってところです。参考になれば幸いですー。