「ダイエットが続かない!」を打ち破るポイント、それは「自分の意志力をディスる」こと
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言うまでもなく、ダイエットの失敗ってのは「わかってるけど食べちゃう!」が問題なわけです。カロリーを減らせば誰でも痩せるけど、ついジャンクフードを食べちゃって失敗するパターンですな。
この問題を解決する方法はいろいろあるんですけど、近ごろ出たデータ(1)も新たな手法を提示しててナイスでした。
3パターンの心理的なダイエット法を試した
これはドレクセル大学の実験で、肥満に悩む262人の男女が対象。実験期間は3年で、全員に3パターンのダイエットプログラムに参加してもらっております。
- 行動療法:定期的に体重を測ったり、ダイエッターのグループを作って励ましあったり、明確なゴールを設定したりと、とにかく日々の行動を細かく変えていく
- 行動療法+置き換え食:行動療法にくわえて、朝食や昼食などをプロテインバーやダイエットシェイクに置き換える
- HFE(食環境改善プログラム):自宅に常備する食品を、より健康的なものに変えていく(お菓子をフルーツに変えたりとか)
ざっくり説明すると、行動療法は「心理的なダイエット法のゴールドスタンダード」とも言われてて、昔から定評があるテクニックであります。ただし、かねてから問題も指摘されてまして、
- プログラムの効果が持続しづらい
って難点があったりはするんですな。最初のうちはみんなモチベーションが上がってグングン体重が減るものの、少しずつセルフコントロール能力が弱くなっていって、お菓子やファストフードの誘惑に負けやすくなる傾向があるんですな。
まぁ人間のセルフコントロール能力が激烈に弱いのは有名なんで、どうしても問題は出てくるんでしょうね。かくもダイエットは難しいものでございます。
定期的に参加者の意志力をディスるという手法
そこで研究チームは、「食事の環境を変えるプログラムのほうがいいのでは?」と考えて、今回の実験を思いついたとのこと。意志力が当てにならないなら、冷蔵庫の中身を変えるようにしたほうが成果が大きいのではないか、という行動経済学ライクな発想になっております。
ただし、この「食環境改善プログラム」では、参加者のセルフコントロールをアップさせるためのテクニックも使われているのがおもしろいポイント。具体的にどのようなものだったかと言いますと、
- 定期的に参加者の意志力をディスる!
といった内容だったらしい。研究者いわく、
私たちは、被験者へ次のように告げた。「あなたたちがダイエットを決意したのは、健康への素晴らしい第一歩です。しかし、ここでみなさんには、ダイエットの途中で必ずつきあたる壁について理解してもらわねばなりません」
のように言いふくめたそうで、ダイエットの出鼻をくじく発言になっております。
ダイエットの成功に現実的な感覚を持つのが大事
もちろん、これは参加者のモチベーションを下げるのが目的じゃなくて、
被験者に嫌なことを言ったのは、決してダイエットの決意をくじくためではない。本当の目的は、普段の食事や環境を長期的に変えていく作業がどれだけ大事かについて、もっと現実的な感覚を持ってもらうためだ。
太りぎみの被験者に現実的なジレンマの感覚を思いおこさせると、短期的に食事の量を制限する効果が得られる。このジレンマとは、いかに自分が太りやすい遺伝子を受け継いでいるかや、環境の変化に弱いかを思い出させるといったことだ。
とのこと。理想的なゴールばかり追うのではなく、厳しい現実を強調したほうがいいんじゃないの?という。
思いついた方も多いでしょうが、ここで研究チームは一種の「心理対比」を使ってるんですな。心理対比は有名なメンタルテクニックで、理想のゴールと目標達成の障害を続けてイメージするというもので、モチベーションアップの効果には定評があるんですよ。くわしくは「「やる気が出ない!」を激しく改善する「心理対比」入門」などをどーぞ。
身が引き締まるような現実を叩きつけたほうが良い
さて、その結果がどうだったかと言うと、
- 環境改善グループがもっとも体重が落ちていた!
だったそうな。実際の数字を見るとそこまでの大差ではないものの、やはり「環境の改善+心理対比」にはちょっとしたアドバンテージがあるのかもですな。
自分のセルフコントロール能力に疑問を持つことで、逆に食事に対するセルフコントロール能力が上がった。
「がんばれば成功できる!」のように安易にはげますよりも、身が引き締まるような現実を叩きつけたほうが良いのだろう。
ってことですので、いまダイエットの停滞にお悩みの方は、
- 心理対比=目標の達成率が2倍に高まる『WOOP』法
などを参考にしてみちゃいかがかと思うわけです。個人的にも、環境の改善はかなり効くよなーと感じてる次第。