「セルフコントロールしたい!」と思うほど実際の能力は下がるという世の無常
セルフコントロールにこだわると逆にセルフコントロール能力が下がる?
当ブログでは「セルフコントロール能力を上げるにはどうすればいいの?」みたいな話をよく書いております。なんせ、セルフコントロールの有無は人生の成功に関わる最重要ポイントのひとつなもんですから。
が、ここで大きな問題なのが「セルフコントロール能力がほしい!」と思うほどセルフコントロール能力が下がるかもってとこ。セルフコントロールってのは、追うと逃げていく性質があるんじゃないか?と昔から言われてきたんですね。
で、近ごろそのへんを調べてくれた論文(1)が出まして、ためになりました。実験を行ったのは、「WILLPOWER 意志力の科学」で有名なバウマイスター先生。意志力リサーチの大御所っすね。
セルフコントロール欲求と実際の能力の差を調べた
これは635人の学生を対象に4つの実験を行ったもの。ざっくりとデザインを説明すると、
1.「私は目の前の誘惑に抵抗できるようになりたい」や「悪い考え方にとらわれないようになりたい」といったアンケートに答えてもらい、学生の「セルフコントロールが欲しい度」をチェック
2.「私は友人からよくストイックだと言われる」といった質問に答えてもらい、学生の「実際のセルフコントロールレベル」をチェック
3.全員に難しいアナグラムを解いてもらい、どれだけ根気よく作業に取り組めるかを調べる
って感じです。セルフコントロールへの欲求が高い人は、本当にセルフコントロール能力があるのかを確かめたわけですね。
セルフコントロール欲求が高いと実際の能力は低い
それで何がわかったかというと、
- 「セルフコントロール能力が欲しい!」と答えた学生ほど実際のセルフコントロール能力は低い
- 自分のセルフコントロール能力に不満を答えなかった学生ほど、実際のセルフコントロール能力は高かった
ってことです。前から言われてたとおりの結果が出ましたねー。
セルフコントロール欲求をコントロールしても結果は同じ
もっとも、これだけだと「セルフコントロール能力が高い人は自分のセルフコントロールに不満がないだけじゃね?」って疑問がわくわけですが、別の実験では、そのへんも考慮されております。
具体的には、学生たちに「セルフコントロールの素晴らしさ」または「セルフコントロールの問題点」などを伝えて、参加者の「セルフコントロール欲求」を人為的にコントロールしたんですね。
そのうえでアナグラムを解いてもらったところ、やはり結果は似たようなもの。
- セルフコントロールが欲しくなるように誘導された学生ほど、実際のセルフコントロール能力は低下した!
って結果だったんですね。
セルフコントロールにこだわるとモチベーションが下がる
この問題について研究者いわく、
セルフコントロールへの欲求は、明らかにメンタルの状態を悪化させ、実際のパフォーマンスを下げる方向に働く。
とのこと。おもしろいですなぁ。
こういった現象が起きる理由については、
セルフコントロールが必要な状況に置かれると、いまの自分の「いたらなさ」が強調されてしまう。そのせいでモチベーションが消えるのだ。
だそうな。セルフコントロールが欲しい!と思うことで、逆にいまの自分の弱さに目がいっちゃうんだ、と。「幸福にこだわる人ほど幸福度が下がる」ってメカニズムとほぼ同じっすね。
セルフコントロール欲求の解決策
なかなか難しい問題ではありますが、セルフコントロール能力が重要なのは間違いないので、
- アクセプタンスを向上させて「セルフコントロールがない自分」を受け入れる
- 「if-thenプランニング」などでセルフコントロール能力が発揮しやすい環境だけを整えたら、いったんセルフコントロールのことは忘れて目の前のタスクだけを淡々とこなし続ける
ってあたりが対策になるかと思われます。いったん細かなタスクに落とし込んだら、長期目標は忘れたほうがいいよって感じですかねー。