今週の小ネタ:幸福な人の「記憶」、脳の劣化リスクを上げる要素、ネットと孤独感
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
幸せな人ほど鮮明な「過去の記憶」とは?
まずはミシガン州立大学の論文(1)で、約22,000人を対象にしたもの。全員を18年にわたって追いかけた観察研究になっていて、それぞれの思い出と現在のメンタルの状態をチェックしたんだそうな。
その結果がどうだったかと言いますと、
「記憶」は、私たちが世界を解釈する手段として大きな役割を果たしている。いかに過去の体験を体系化し、いかに未来に活かすかを左右しているのだ。
今回の研究でわかったのは、過去の良い記憶が現在の健康と幸福にポジティブな影響を与えるということだ。おそらく、良い記憶がストレスを減らし、良い決断をうながしてくれるのだろう。
ってことで、過去の良い記憶が多い人ほど健康で幸福なんだ、と。これはわかりやすい話っすね。
でもって、そのなかでもメンタルに効く記憶ってのが、
- 両親の愛情に関する記憶の量が多い人ほど、成人後に鬱の発症率が少なくて健康
だったそうな。これは両親の寿命などは関係がなくて、たとえ父母と過ごした時間が長かったとしても、現時点でメンタルが低下してる人ほど何も思い出せない傾向があったんだそうな。
脳が衰えるリスクが40%減る行動とは?
次はフロリダ州立大学の研究(2)で、平均50歳以上の男女約12,000人を10年にわたって調べた観察研究になっております。
調査のあいだに1,104人が痴呆症にかかったんですけども、ここでハッキリした傾向が出てまして、
- 孤独感が強い人は頭がボケる確率が40%も高い!
だったんですな。孤独感のヤバさについては「最高の体調」で強調してますが、またもヤバいデータが出てきましたねー。
ちなみに、この論文における「孤独」の定義はこんな感じ。
「孤独」とは、あなたが周囲の人間に受け入れられていない、または感覚的にフィットしていないという感情のことである。
つまり、もしあなたが一人で暮らしており、あまり他人との接触がなかったとしても、「自分は他人に受け入れられている」とさえ思えれば孤独ではない。
逆に言えば、あなたがたくさんの人と付き合っていたとしても、「なじんでいない」と感じられれば、それは孤独だと考えられる。
ってことで、大事なのは人付き合いの量ではなくて質なんだ、と。まぁそりゃそうですよね。
ネットで孤独を癒す方法とは?
そんなわけで孤独感は非常によろしくないわけですが、ペンシルバニア大学から出た論文(3)は、ちょっとした対策を提示してくれてました。
こちらは143人の学生を対象にした実験で、みんなの行動を3週間にわたって記録。その際に全体を2グループにわけまして、
- いつもどおりSNSを使う
- SNSの使用を1日30分に限る
って介入をしたんだそうな。前から「Facebookを止めたら幸福度が上がった!」って研究もあるとおり、「SNSは孤独感の原因になってるんじゃないの?」と推測したわけですな。
果たして、結果は研究チームの読みどおりでして、
- Facebook、Snapchat、Instagramなどの使用時間が多い人ほど孤独感が高まり、不安に悩みやすかった!
って結果だったんだそうな。研究者いわく、
SNSの使用量が減れば減るほど、うつ症状と孤独感も減少した。この効果は、実験が始まった時点でメンタルが悪化していた人ほど大きかった。
ってことで、どうやら現代では、SNSが孤独感を悪化させているみたいなんですな。
多くの科学的データによれば、現代ではSNSが「他人との比較」を大量に生み出している。Instagramで他人の暮らしを見れば、誰もが「自分以外の人はみんな幸福に暮らしている」と思うのも自然だろう。
そんなわけで、心あたりがある方は、1日のSNS使用時間を30分まで減らしてみるのもアリじゃないかと。