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メンタルの安定に役立ちそうなデータいろいろ#2:マインドフルネス療法、腹式呼吸の効果、クリティカル・シンキングでストレス解消

 

「過去に類似の話を紹介したけど、さらに追試で効果が確認されたので無視するのももったいないケース」をまとめて取り上げてみるシリーズです。今回は「メンタルの改善に役立ちそうなデータ」を、すごーくざっくりとまとめて3つほどお送りしまーす。 

 

 

マインドフルネス系療法はどこまで鬱に効くか?メタ分析

まずは、みんな大好きマインドフルネス系のメタ分析(R)が出てたんで、チェックしときましょう。

 

 

これは「マインドフルネスストレス低減法」(MBCT)の効果を確かめたもので、長期有効性を評価する23の試験のネットワークメタアナリシスになってます(そのうち17が無作為化対照試験で6が非無作為化対照試験)。MBCTは近ごろ再発性うつ病の臨床ガイドラインに盛り込まれたこともあって、現場での使用が激増してるんだそうな。それだけ評価が定まってきた手法と言えますね。

 

 

で、この分析では、おもに再発性のうつ病に悩んでいる人を対象にしていて、治療期間は12~49ヵ月のあいだ。うつ病の再発(14試験、2,077人)、うつ病の再発までの期間(13試験、2,017人)という2つのポイントをチェックしてくれております。

 

 

分析の結果がどうだっかと言いますと、

 

  • 通常の治療と比較して、MBCTはうつ病の再発率と再発までの時間を改善する

  • MBCTと抗うつ薬治療、認知療法、認知心理教育などのあいだに大きな差はなかった

  • 抗うつ薬をMBCTと併用した場合、うつ病の再発防止効果はMBCT単独の場合よりもさらに大きいっぽい

  • 2次的な評価項目については、MBCTは通常治療と抗うつ薬治療よりも抑うつ症状とQOLを改善し、反芻的思考の減少が認められた(それぞれ1件ずつの知見)。

 

みたいになってます。こうして見るとMBCTはやっぱ悪くないようでして、通常の治療との併用もありかもしないですね。ただ、まぁ近ごろは「メンタルの治療は個別化が大事!」ってのがよく強調されますんで、MBCTに限らずいろんな療法を学んでいくのが大事だとは思いますが。

 

 

 

腹式呼吸、どこまでストレスに効くか?

腹式呼吸のすばらしさは以前にも書いたことがありましたけど、新たにストレスへの効果を確かめたデータ(R)が出ておりました。

 

 

こちらは腹式呼吸とストレスの関係を調べた3件をまとめた系統的レビューでして、そのうち1つがランダム化比較試験で2件が準実験的試験、総参加者数は1,046人となっております。その結果がどうだったかと申しますと、

 

  • ランダム化対照試験では、8週間の腹式呼吸トレーニング(セッション数は20)により、安静時の呼吸数とコルチゾールレベル(ストレスホルモン)がだんだんと低下した(対照グループはは低下しなかった)

 

  • 準実験的試験の1つでは、腹式呼吸をしたグループは1回のセッション後に最高血圧と最低血圧の低下が認められた

 

  • もうひとつの準実験的試験では、追跡調査の8ヶ月後の時点で、腹式呼吸をしたグループは主観的なストレスが大きく低下していた

 

ということで全体的に非常に良い成果が認められてますね。ただし、全体的には腹式呼吸だけの効果をチェックしたデータは少なく、そもそも腹式呼吸の定義にも一貫性がないっていう問題もありまして、「もうちょい様子を見ないとなー」って印象も強かったりしますね。

 

 

ただ、別に深呼吸なら害もないでしょうから、とりあえず困ったら練習しとくよいいんじゃないでしょうか。

 

 

 

クリティカル・シンキングでストレス解消?

クリティカル・シンキングは色々と大事なスキルだよー」ってな話はよく書いてまして、

 

  • 意思決定力が上がる
  • 発想力が高まる
  • 正しい選択をしやすくなる

 

などのメリットがよく言われるんですけども、新たな調査(R)では「ストレス対策にもなるよ!」って結論になっておりました。

 

 

これがどんなテストだったかと言いますと、

 

  1. ナイジェリアの大学で、ストレスレベルが高いと44人の大学生を集める
  2. 週2回2時間ずつクリティカル・シンキングについて学ぶ
  3. 6週間のトレーニングを終えた後と介入から3ヵ月後にストレス度をチェックする

 

みたいになってます。すると、6週間のクリティカル・シンキング介入のあとは、

 

  • 参加者のストレスレベルは34.67から14.21に低下した(対照群のストレスレベルは34.65から32.40でほぼ安定していた)

 

  • 3ヵ月後の追跡調査では、トレーニングをした参加者は対照群よりもストレスが少ないままだった(12.96 vs. 32.10)

 

という違いが確認されたそうで、いったんトレーニングを受けたら結構なレベルでストレスが減り、その効果は長く持続するみたいっすね。

 

 

まー小規模な実験なんで追試は必要ですけど、昔からメンタル改善に定評がある認知行動療法がそもそもクリティカル・シンキングに近い側面を持ってるんで(自分の思考を論理的に詰めていくとことか)、ストレス解消の効果が出ても不思議じゃないかなーとか思ってはいますが。

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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