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最新の心理療法で使われるマインドフル系テクニック「寿司列車」

 

ACT系のテクニック(R)を漁ってたら、マーストリヒト大学などの先生が「寿司列車」ってエクササイズを開発してたんでメモ。これはマインドフルネスを鍛えるためのエクササイズで、イメージを使うタイプの介入法になります。

 

 

マインドフルの話は「パレオな男」でもさんざんやってるわけですが、それでもいまいちわかりにくいのがマインドフルネスでございます。非常に言語化が難しいジャンルなので(というか言語化するほど本質から離れていく特性がある)、とにかく実践して感覚的に腹落ちするしかないんですよね。禅の世界で「しのごの言わずに座禅しろ!」と言われるのも、そこらへんの問題が大きいからでありますね。

 

 

が、そうはいっても、なんらかのとっかかりが欲しくなるのが人間というもの。そこで多くの心理療法で使われるのが「メタファー」で、そもそも言語化に向いてないなら、イメージでぼんやりと把握して行こうぜ!って話になります。過去にもいくつか「マインドフルネスの理解に役立つメタファー」を紹介しているとおり、感覚的なものはメタファーで近づいていくのが一番なんで。

 

 

ってことで、今回取り上げる「寿司列車」も、メタファーを駆使してマインドフルネスの理解を進めていく感じになります。具体的なスクリプトはこんな感じなんで、軽くイメージしつつ読み進めていただければ。

 

 

ステップ1:回転寿司をイメージ

まずは、自分がお気に入りの回転寿司屋にいるところを想像してください。店内ではお寿司の皿がぐるぐる回っており、中央には寿司職人が立っています。寿司職人はあなたの心を、寿司皿はあなたの思考を表しており、絶えず行ったり来たりをくり返しています。

 

 

寿司にはさまざまな種類があり、思わず手に取って食べたくなるものがあれば、どちらでもいいものもあり、なかにはまったく食欲をそそられないどころか、吐き気さえ覚えるようなものもあります。あなたはそれらを取るかもしれないし、残すかもしれません。

 

 

これは、あなたの頭の中に1日中浮かんでくる思考と同じです。楽しい思考が浮かべばしがみつきたくなり、不快でネガティブな思考は取り除きなくなり、どうでもいい思考にはほとんど注意を払いません。その間も、寿司職人(=心)は様々な料理を作り続け、あなたの目の前を運ばれていきます。

 

 

まとめると、このメタファーは4つの要素で構成されています。

 

  1. 好きな寿司=ポジティブ思考
  2. 嫌いな寿司=ネガティブ思考
  3. 好きでも嫌いでもない寿司=中立的思考
  4. 料理人=心



 

ステップ2:思考の同一化の理解

ときおり、私たちは思考に乗っ取られることがあります。未来を延々と心配したり、過去に起こった出来事を考え続けたり……。

 

 

これは専門的に「思考の同一化」と呼ばれ、「いま自分は考えている」という事実に気づかずに考えている状態を意味します。寿司のメタファーで言えば、「思考の同一化」とは、ある特定の料理だけに注目してしまい、ひたすら寿司皿が運ばれていくのを見つめているようなものです。

 

 

運ばれた回転寿司はレールの上を回り続け、何度も何度もあなたの目の前に現れます。これは、思考にとらわれた状態によく似ています。

 

 

この状態から抜け出そうと思った時に使えるのが、マインドフルネスです。マインドフルネスは、寿司の皿が通り過ぎていくを見守るのと同じ方法で、自分の思考を見守る行為です。

 

 

回転寿司から一歩下がってみれば、料理人がどんどん寿司を握っていることに気づくでしょう。そして、私たちはその料理を追い続けるかどうかを選ぶことができます。特定の寿司皿を追うのをやめて、一つ一つの皿を見ているとき、私たちはただ寿司の流れを観察しているだけです。マインドフルネスも同じことで、寿司が流れていく様子をただ見るように、自分の思考を観察していきます。

 

 

 

ステップ3:マインドフルからポジティブ思考を生み出す

寿司の観察に慣れてきたら、寿司職人になって新しい皿を握ってみるのもいいかもしれません。出てきた寿司がマズそうなものばかりだったら、自分の好きな食材を使ってもっと美味い料理を作ってみればいいのです。

 

 

これは、自分の役に立たない否定的な思考(「私はダメな人間だ」など)の代わりに、新しい役に立つ思考(「私はベストを尽くしている」など)を作り出すのと同じこと。つまり、マインドフルネスとは「あなたが寿司職人になるだけの余裕を作る」行為だとも言えます。

 

 

しかし、ここで注意しなければならないのは、寿司職人として美味しい寿司を握るという作業は、決してマズい料理を取り除く作業とイコールではないところです。

 

 

あなたがいくら美味い寿司を握っても、別の料理人は以前と同じようにマズい料理を提供しつづけます。それを取り除くために時間とエネルギーを使うのではなく、マズいものはマズいものとして無視しつつ、あなたはより美味い寿司作りにリソースを割くほうが有意義です。

 

 

遅かれ早かれ、マズい料理は消えてゴミ箱へ葬り去られます。それまであなたは、ただ美味い寿司を握ることに専念すればいいのです。

 

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ってことで、「寿司列車」のスクリプトは以上です。個人的には、自分が美味い寿司を握ったそばからマズい寿司を出す職人がいるとはどんな店だ!とか思いましたが(笑、「回転寿司をベースにマインドフルネスを理解する」って考え方は、ちょっとふざけた感じがあるおかげで深刻になりすぎないのがいいですね。ぜひマインドフルネスの理解を深める一助にお使いください。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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