今週半ばの小ネタ:真の不安の対策、寝てない自慢、マルチタスクと記憶
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
不安のコントロールにもリアプレイザルが効くかもよ!みたいな話
「怒りのコントロールにはリアプレイザルが良い」といった話を昔に書きましたが、「この手法は不安にも効くかもよー」といったデータ(R)が出ておりました。リアプレイザルは状況の再評価を表す言葉で、「怒った人を見たら『彼に何か悪いことがあったのだろう』と自分に言い聞かせる」みたいな感じです。
で、これは179人の健康な男女を対象にした調査で、
- みんなに普段の感情コントロール法を尋ねる
- いつもどんな状況でどれぐらい不安を感じてるかを調べる
- すべてのデータを比較する
のようになってます。そこでどんな結果が出たかと言うと、
- リアプレイザルを使っている人は、自分の感情を押し殺す人に比べて、社会的な不安が少なく、一般的な不安も少なかった
だったそうです。不安なことがあったら、「これは逆に挑戦のチャンスでは?」とか考えることで、ネガティブな感情の悪影響を避け易くなるんじゃないか?って話ですね。
チームいわく、
不安に影響する遺伝的または環境的な要因に対して、私たちができることは少ない。しかし、あなたの感情コントロール戦略を変更することなら可能だろう。
ってことで、不安ぎみな方もリアプレイザルをお試しいただくといいかもしれませんね。
寝てない自慢にはメリットがあるのか?問題
ちょっと前は「寝てない自慢」みたいな風習があったもんでございます。「仕事でほとんど寝てないよー」みたいなやつっすね。さすがに近年は「ちゃんと寝ないと脳のパフォーマンスが下がる」って考え方が普通になってきたんで、「寝てない自慢」も減ったような気がしますが。
で、オレゴン大学の新しい研究(R)は、「寝てない自慢のメリット」について調べてておもしろかったです。メリットがないと誰も自慢しないですもんね。
これはいくつかの実験で「寝不足男」のイメージを調べたもので、
- 実験1:144人に「よく寝る男」と「寝ない男」の2種類を想像させて、どんなイメージがあるかを尋ねる
- 実験2:207人に「睡眠時間が少ない男性の特徴」をいくつかの尺度で評価してもらう
みたいになってます。その結果はどっちも同じで、
- 眠らない男は男らしいイメージがある!
- 睡眠時間が多い男は男らしさが低いと判断されやすい!(女性は睡眠時間の長短では印象は変わらなかった)
だったそうです。研究チーム、男性性には「目標志向」とか「自己主張」のイメージが強いので、その分だけ時間をギリギリまで使おうとする可能性が高く、それで短眠と男らしさが結びつくのではないか?と考えておられます。
まー、アメリカのテストなんで日本でも同じイメージかはわからんですが、寝不足時間と男らしいイメージが結びついてるってのはありそうですな。
マルチタスク、やっぱり記憶に良くない問題
マルチタスクの害は昔から言われてますが、スタンフォードから新たな話(R)が出ておりました。どんな実験かと言いますと、
- 18〜26歳の男女80人の瞳孔サイズを測定
- みんなに何かを記憶するタスクを与え、その間の「注意力の持続」や「マルチタスクレベル」を測定
- タスク中の脳活動をEEGで測定(後頭部のアルファ波パワー)
って感じでして、参加者のマルチタスクや注意の持続と記憶力の関係を調べております。
で、なにがわかったかと言うと、
- マルチタスクで作業をしたり、注意を維持するのが苦手な人ほど、記憶力タスクの成績が悪い
- 後部のアルファ波パワーの増加は、注意力の低下、マインドワンダリング(物思い)などと相関している。
- 瞳孔の収縮はマインドワンダリングやタスクのパフォーマンス低下と相関している
ということで、「マルチタスクや注意の分散は記憶力を下げる!」という「でしょうねー」みたいな結論ですね。ただ、この結果をもとに「瞳孔サイズから注意力の低下を検出するウェアラブルガジェット」なんかを想定してるそうで、そこらへんはちょっと期待したいっすね。