「よく働きよく遊べ」などと言いますが、このアドバイスって世間で思われてるより深い話だよ!みたいな観察研究のお話
「よく働き、よく遊べ」みたいな格言が昔からあるわけです。働いてばっかだと精神が死ぬから、時間のメリハリをつけてしっかり遊ぶことも忘れるな!みたいなアドバイスですね。
で、新しい研究(R)はこの格言について調べていて、調査テーマをひとことで言えば、
- よく働く人は、本当によく遊ぶ傾向があるのか?
ってのを問題にしてます。「この格言を実践すると本当にメリットがあるのか?」ではなく、「このようなアドバイスにはもっと深い意味があるのでは?」ってのを問題にしてるんですね。
具体的にどんな研究だったかといますと、これはクイーンズ大学の約1,400人の学生を対象にした調査で、
- 宗教にどれぐらいコミットしてるか?
- 子育てにどれぐらいの意欲があるか?
- 業績や名声を得ることへの興味はどれぐらいか?
- 余暇の遊びににどれぐらい魅力を感じるか?
みたいなポイントを調べたうえで、それぞれの関係性をチェックしております。
そこでまず確認されたのが、
- 業績や名声への達成感の意欲と、余暇の遊びへの興味は強い相関を示した
って話だったそうな。言い換えれば、「よく働いている人ほど、実際にがんばって遊んでいる」って傾向が確認されたわけですね。データを見てると、データの40%近くが達成感の意欲と遊びへの興味の相関で説明されてまして、なかなかの数値っすね。
といっても、これだけだと「働き者は遊び好き」ってのがわかっただけで、そこまで興味をひくような話でもないんですけど、もうひとつ大きな相関を示したものがありまして、
- よく働きよく遊ぶ人たちは、「死」への意識が強い
って傾向も出てたりします。この傾向をすごーくざっくり言い換えると「よく働きよく遊ぶ人たちは、自分の死が怖いからがんばってるのでは?」って話でして、死の恐怖から逃れるために働いたり遊んだりしてるんじゃないのか、と。
この考え方に至った理由として、研究チームは「人間は4つの基本的な欲求につき動かされている」と言ってまして、
- 生殖欲求(子孫を残したい!という欲求)
- 生存欲求(生き残りたい!という欲求)
- レガシー欲求(後世に何かを残したい!という欲求)
- レジャー欲求(とにかく楽しみたい!という欲求)
というリストにまとめております。もちろん異論はありましょうが、大筋では納得できるラインナップじゃないでしょうか。
でもって、これらの欲求の根っこに横たわるのが「死の不安だ!」ってのがチームの考え方でして、確かに「レジャー欲求」は人間を死の不安から意識をそらしてくれますし、レガシー欲求は後世に何かを残すことで自己の終わりを少しはやわらげてくれますもんね。
研究チームいわく、
人類は、他の動物とは異なり、自己の無常性を認識し、その事実に不安を抱いている。レガシー欲求とレジャー欲求の2つは、この不安をやわらげてくれるのかもしれない。これら2つの欲求のおかげで、私たちの祖先は自己の無常から気をそらし、生殖の成功への悪影響を最小限に抑えることができたのだろう。
とのこと。つまり「よく働きよく遊べ」ってのは、たんに日々の暮らしを良くするためのアドバイスではなく、そもそも人間の根本的な不安に立ち向かうための心理的なバッファとして根本的な機能を持つんじゃないのかって話ですね。「最高の体調」の第7章でも似たような話を書いたんですけど、仕事と遊びが人類を生き延びさせる根っこの機能を持ってる可能性はありそうっすね。
こうなると、「じゃあなぜ現代人は『働きたくない!』みたいな願望も多いのか?」みたいな疑問も浮かぶわけですが、それはまた別の話としていずれ取り上げるかもしれません。とりあえず現時点では、「仕事と遊び」は人間の根本的な不安対策だから、真剣に取り組んだ方がいいよ!ってあたりを押さえておくといいんじゃないでしょうか。