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今週半ばの小ネタ:幸福度がっつり向上プログラム、マインドフルネスと痛み、睡眠不足とネガティブ思考

Summary

ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

  

 

 

学生の幸福度が8週間でがっつり上がったプログラムとは?

イェール児童研究センターなどから、「学生の幸福度ががっつり上がるプログラムはこれだ!」みたいな話(R)が出ておりました。

 

 

これは131人の学生に 3 つの「幸福度アップトレーニング」を指示したもので、

 

  1. EIの基礎コース
  2. マインドフルネス・ストレス低減法
  3. SKYキャンパスハピネス

 

ってラインナップになってます。ひとつめの「EI基礎コース」は感情的知性を鍛えるためのプログラムで、感情コントロールの基礎を学ぶプログラムになっております(リアプレイザルとか)。

 

 

もうひとつの「マインドフルネス・ストレス低減法」もこのブログではおなじみで、マインドフル瞑想などをベースにストレス解消の方法を学んでいくタイプのプログラムです。これまたストレス対策にはかなり定評がありますね。

 

 

最後の「SKYキャンパスハピネス」はアート・オブ・リビング財団が開発したトレーニングで、研究チームによりますと、

 

SKYは大学でのリーダーシップとウェルビーイングを鍛えるためのプログラムで(campushappiness.org)、ストレス管理と心理的なレジリエンスを養うためのトレーニング法がふくまれる。具体的には、ヨガのポーズ法、呼吸法、呼吸をベースにした瞑想のテクニック(スダルシャンクリヤ)などだ。

 

SKYには、その他のポジティブ心理学のスキル(例:感謝の記録、社会的つながりの促進、親切な行動、人生の意味と目的の明確化)もふくまれ、さらにはリーダーシップスキルついての議論や応用も行う。

 

とのこと。すごーく雑に言えば、「ポジティブ心理学+呼吸法を重視したヨガ」みたいな感じですかね。

 

 

実験期間は 8 週間 (合計 30 時間) で、なんにもしなかったグループとの違いをチェックしたところ、

 

  • もっとも変化が大きかったのは「SKYキャンパスハピネス」で、うつ病、ストレス、メンタルヘルス、マインドフルネス、ポジティブな感情、社会とのつながりの感覚など6つの分野で改善が見られた
  • EIの基礎コース」はマインドフルネスの向上が見られたがそれ以外はパッとしなかった

 

だったそうです。SKYはいろんな方向からメンタルを改善するようにデザインされてるんで効果が高いのは納得ですけど、「マインドフルネス・ストレス低減法」がいまいちなのは謎ですねぇ。この手の調査は結果がバラつくことが多いんで、今後の実験ではまた違った話になるのかもしれませんが。

 

 

ちなみに、全体的に見てますと、どうも呼吸法で効果を感じた参加者が多かったようなんで、気になるかたは「スダルシャンクリヤ」などを実践してみるのもいいかもしれません。

 

 

 

マインドフルネス・ストレス低減法は痛みと鬱に効く?

さて、上のデータでは「マインドフルネス・ストレス低減法」に目立った効果が出てませんでしたが、一方で同時期に「マインドフルネス・ストレス低減法は痛みと鬱に効く!」って報告(R)も出てましたんで、あわせてメモしておきましょう。

 

 

こちらは慢性的な痛みに悩む28人の男女を対象にしたテストで、マインドフルネス・ストレス低減法を1日2.5時間ずつ8週間やってもらい、その後は1日30分ずつ週6日で自主練を指示したとのこと。さらに、加えてハタヨガのトレーニングも指示してもらったところ、

 

  • 全体の89%が「痛みの対処に役立った!」と回答した

 

って感じだったそうです。非常に初歩的な調査なのでなんとも言い難いとこもありますけど、過去の調査(R)だと「マインドフルネスと認知行動療法は鎮痛剤よりもさらに強力だ!」なんて報告も出てますんで、十分に可能性はあるのではないかと思うわけです。

 

 

研究チームいわく、

 

慢性的な痛みはしばしば鬱病を併発する。マインドフルネスをベースにした瞑想やヨガは、患者の心身の健康回復に役立ち、単独でもいいし、セラピーや薬物療法などの他の治療と組み合わせても効果的だ。

 

ってことなんで、首や腰の謎の痛みにお悩みの方は試す価値があるかなーと。

 

 

 

睡眠不足が「ネガティブ思考が止まらない!」を加速させる

ネガティブ思考が止まらない!」がどれだけ体に悪いかって話は、このブログでよく書いているところ。ネガティブ思考が脳内をグルグルし続けてると、とにかくいろんな悪影響があるんですよ(頭が悪くなる、とか)。

 

 

でもって、新しいデータ(R)は「睡眠不足でネガティブ思考がさらに止まらなくなる!」みたいな話になっておりました。60人の男女を対象にした調査で、みんなを「質の良い睡眠」または「質の悪い睡眠」のどちらかの状態にした後で、感情の抑制テストを行ったんだそうな。

 

 

すると、案の定よく眠れた人はネガティブな思考や感情をブロックするのがうまく、逆に睡眠不足の人は、どれだけ練習しても「ネガティブな思考のグルグル」を止められなかったらしい。昔からネガティブ思考の抑制スキルは個人差が大きいと言われてきたんですけど、おそらく寝不足が大きな要因のひとつなんだろうなーって感じっすね。

 

 

チームいわく、

 

日常生活では、ありふれた出来事が不快な記憶の呼び水になることが多い。例えば、高速道路でスピードを出しすぎた車は、何年も前の交通事故の嫌な記憶を呼び覚ますかもしれない。

 

ほとんどの人は、そんな思考をすぐに無視できるが、PTSDのような疾患に苦しんでいる人には、ネガティブ思考の侵入は反復的で、制御できず、苦痛をともなうことがある。

 

今回の研究では、睡眠不足が不要な思考を抑える能力にかなりの影響を与えている可能性が示唆される。

 

とのこと。睡眠不足がメンタルに良くないのは誰もが実感するとこでしょうが、その根っこには、ネガティブ思考を抑えられなくなっちゃう可能性が横たわってるかもしんないわけですね。怖いですなぁ。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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