「大事なことなので2回言いました」の正しさがあらためて実証された話
「大事なことなので2回言いました」という定番のネットミームが正しいのかどうかを調べた研究(R)がおもしろかったんでメモ。
これはヴァンダービルトピーボディ大学などの調査で、「真実性の錯誤効果」について調べたものです。「真実性の錯誤効果」は有名なバイアスのひとつで、「何度も聞くと嘘でも真実に聞こえる!」って現象のことです。ゲッペルスがよく言ってたやつですね。
チームはまず5歳児24人、10歳児24人、大人32人を集めて、「ブレインクエスト」っていう定番の知育ゲームから集めた16の問題を使って、「真偽の判断テスト」をしてもらったらしい。例えば、
- トマトは地上で育つ
- ジャガイモは地上で育つ
みたいに本当と嘘が入り混じった文章を提示して、その真偽を確かめさせたわけです。
この作業を数セットやってもらったところ、
- 間違った文章を2回くり返し聞くと、1回しか聞いていない場合よりも、それが真実だと思う可能性が高くなる
- 大人と子供をくらべた場合でも、くり返し聞いた情報を真実だと思う可能性は高くなる
- 参加者に事前知識があっても(「じゃがいもを掘り起こした体験がある!」みたいな)、くり返し聞いた情報はやっぱり真実だと思いやすくなる
ということで、年齢や性別を問わず、どんな人でもくり返し聞いたことは本当だと思うようになるらしい。事前知識ではバイアスを打ち破れないってのもすごい話ですね。
チームいわく、
誰でも真実を判断する最初の段階では直感に頼るが、その際に私たちは、しばしば「反復」のような信頼できない手がかりを使ってしまうことが多い。
その代わりに、その情報が本当か嘘なのかを決め込む前に、ゆっくりと考えてみなければならない。現代ではSNS上のニュースが速読とを脊髄反射をうながすように設計されているため、熟考の重要性は特に高まっている。
とのこと。こないだ読んだ「デジタルで読む脳 X 紙の本で読む脳」でも遅読の重要性が強調されてておもしろかったんですけど、確かに現代では失われつつあるスキルかもしんないっすね。
で、このようなバイアスが生まれる原因については、
子供たちは、幼い頃からすでに「くり返し」を真実と判断することを学んでいるようだ。一般的には、初めて聞くものよりも何度も聞くものの方が真実である可能性が高いため、子供たちはその知識を使って、くり返しを真実の手がかり使っている。
と言っておられました。
普通に考えれば、めったに耳にしないレア情報よりも、すでに世間に広まった周知の情報の方が正しい可能性は高いので、「くり返し」を真実っぽさの指標に使った方がラクですもんね。と同時に、何度も耳にした情報は脳内で処理しやすいので(「あー、いつものアレね」みたいな感じで)、そのぶんだけ錯覚が生まれやすいってのもありますね。
ちなみに、このチームは過去にも「真理の錯誤効果」を検証(R)してて、こちらの実験でも、
- 知識がある人でもくり返しによる影響は避けられない
- 「あまり知られていない情報(=間違いの可能性が高い情報)」ほど、くり返しの効果は大きくなる
といった傾向が確認されてたりします。正直、この錯覚は私もハマることはありまして、気をつけてるつもりなんだけどなーなどとよく思っております。
ここらへんは人間が生まれ持った特性なので、「自分だけは例外」と思わずに、自問し続けるしかないでしょうねぇ。