糖質で口をゆすぐだけで筋トレのパフォーマンスが上がる?という仮説の話
「筋トレには糖質の補給が必須!」みたいな話はよく聞くところ。筋肉のエネルギーは糖質なんで、それがなけりゃ筋トレのパフォーマンスが下がっちゃうのが非常に当たり前の考え方ですよね。
が、新しい研究(R)では「糖質で口をゆすぐだけでいいのだ!」って結果が出てて、ちょっとおもしろいです。糖質を体内に取り込まなくても、ちょっとゆすいで吐き出せばそれでパフォーマンスは上がるのではないか、と。
これは12人の健康な筋トレ好き男性を対象にしたテストで、参加者の年齢は22±4歳。筋トレ経験が最低でも2年ある人を選んだそうな。
実験デザインは単盲検(参加者のみを盲検化)のクロスオーバー試験で、だいたい以下のような手順になってます。
- 最初にスクワットとベンチプレスの4RMテストでみんなの基礎パフォーマンスを測定
- 本テストでは、まずエクササイズバイクでHIIT系の運動を指示して、体内の糖質を消耗させる
- サイクリングの後、「〜42gの糖質をふくむチョコレートミルク(268kcal)」または「〜12gの糖質をふくむ鶏肉と野菜(408kcal)」のどちらかを食べてもらう
- その後、さらに筋トレを行い、セット間の2分休憩で「スクラロースで甘くした6.4%のマルトデキストリン溶液」または「糖質を含まないスクラロース溶液」のどちらかで口をすすぐ
ここで行われた筋トレはベンチプレスとスクワットで、どちらも1RMの40%で6セットを行ったとのこと。でもって、その休憩のあいだに「実際に糖質を飲む(マルトデキストリン)」か「ただの人工甘味料入りの水」のどちらかを使ってパフォーマンスの違いを見たわけっすね。
で、結果をざっと見ていくと、こんな感じです。
- 筋トレ中の気分については、どちらのグループにも有意差は認められなかった
- スクワットとベンチプレスのトレーニングボリュームは、糖質で口をゆすいだときの方が有意に大きかった(9354±2051kg vs. 8525±1911kg)
- 糖質で口をゆすいだ条件では、ベンチプレスの総回数はプラセボよりもわずかに高かったが、有意ではないし、効果サイズはかなり小さかった(120±24 vs.115±22回、効果サイズ = 0.198)
- スクワットでは、プラセボよりも糖質で口をゆすいだ条件のほうが有意に回数が多くなった(107±26 vs. 92±16回、 効果サイズ = 0.685)
というわけで、どうやら糖質で口をゆすぐとパフォーマンスが改善する可能性があるみたいっすね。
ベンチプレスで有意差が出てないとこが気になる方も多いでしょうが、これは事前にバイクで下半身の糖質をすっからかんにしたせいでしょうな。つまり、グリコーゲンが枯渇した状態で高ボリュームな筋トレをやる場合に限り、糖質マウスウォッシュの効果が得られるのではないか、と。
ただ、困ったことに糖質マウスウォッシュの効果は文献によってバラバラでして、「6gのマルトデキストリンで筋力が上がった」って報告(R)があったかと思えば、「筋力や持久力に影響はなかった」なんて報告(R)もあったりするんだですよね。ここらへんの食い違いは謎なんですけど、いまんとこのデータを見てると、
- 体内に十分な糖質がないと疲労感が強くなる可能性はある
- 糖質マウスウォッシュを行うと口の中の糖質センサーを経由して、脳の報酬および運動制御センターが活性化される可能性もある(R)
- 結果として、糖質マウスウォッシュが効く可能性もなくはない
って印象はありますね(あいまいな表現が多くて恐縮ですが)。その点では、糖質制限をしてる減量期のトレーニーさんなどは、糖質マウスウォッシュが効くかも?ってとこですかねぇ。