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今週末の小ネタ:体力がある10代は集中力バキバキ? ステレオタイプ脅威は存在しない? プチ断食で脳の機能が改善?

Summary

ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

    

 

 

体力のレベルが高い10代ほど集中力バキバキ?

運動をすると頭が良くなる!」ってのはほぼ確立された事実ながら、「運動すれば子供の成績は上がるのか?まではわからない!」って傾向も確認されてる昨今でございます。その点でまだ研究が必要な状況ではありますが、新たなデータ(R)では、「体力のレベルが高い10代ほど、注意力と集中力がより発達している!」って結論になってておもしろかったです。

 

 

研究デザインはシンプルで、

 

  1. スペインの10代(11歳から15歳)210人を集めて、シャトルランテストと横跳びテストで体力を測定

  2. ついでに全員に注意力と集中力の評価を行い、体力測定の結果と比べる

 

って感じです。すると、参加者の体力は注意力&集中力と強い相関関係がありまして、やっぱり定期的に運動している人ほど脳機能が発達してる可能性が高い感じがするわけです。要するに、体力がある子供ほど、目の前の作業から気をそらず取り組める可能性が高かったんだ、と。

 

 

さらに、研究チームが男女の違いもチェックしたところ、以下のような知見も得られております。

 

  • 体力レベルと脳力の関係は男女を問わずの両方で認められたが、女性よりも男性のほうが体力と集中力の相関が強い
  • 男女内での分析では、体力のある男性と女性は、体力のない男性と女性に比べて、それぞれ選択的注意力と集中力のテストの得点が高かった

 

これらの結果にもとづいて、研究チームは「10代の若者の認知能力や社会適応能力、知的能力を向上させる方法として体力をつけるのは良いことだろう」と言ってまして、そりゃそうだろうなぁという感じでありました。

 

 

 

ステレオタイプ脅威は存在しない?問題

昔から「ステレオタイプ脅威」って現象が知られてるわけです。ざっくり言えば「社会の刷り込みでパフォーマンスが変わる」ことで、

 

  • 「老人は体力がない」と思わせると、本当は体力があるのに体力が低下する
  • 「女性は数学が苦手」と思わせると、本当は数学が得意なのに数学の成績が低下する

 

みたいな現象が知られております。そこらへんをくわしく知りたい方は、「ステレオタイプの科学――「社会の刷り込み」は成果にどう影響し、わたしたちは何ができるのか」などをご参照いただくのがおすすめです。

 

 

この現象は長らく事実としてあつかわれてきたんですけど、直近のメタ分析(R)では「もしかしたらステレオタイプ脅威ってないんじゃない?」みたいな話になっておりました。

 

 

どんな調査だったかと言いますと、

 

  • 過去のステレオタイプ脅威に関する212の実験研究を選び、合計1万人以上のデータをメタ分析

 

みたいになってます。ステレオタイプ脅威の調査としては過去最大レベルでして、非常によろしいのではないでしょうか。

 

 

でもって、その結論をざっくり言えば、以下のようになります。

 

  • 現実にありそうもないステレオタイプ脅威の実験を使うと、確かに現象は確認される
  • が、現実にありそうなステレオタイプ脅威の実験を使うと、現象の影響はかなり小さい

 

「現実にありそうもないステレオタイプ脅威」ってのは、たとえば認知テストの前に「老人のほうが成績が悪いです!」とハッキリ伝えるようなタイプの実験のこと。一方で、現実にありそうなステレオタイプ脅威ってのは、認知テストの前に「老人がもの忘れをしてるシーンを描いたCMを見る」みたいなやつです。

 

 

もちろん、ステレオタイプ脅威が存在しないってわけではないものの、現実的にどこまで悪影響を与えてるかと言えばちょっと怪しいんじゃないかなーって感じっすね。ただ、これについては「チリも積もれば」的な問題もあるので、たとえ1回当たりの効果が弱いとしても油断はできないわけですが。

 

 

 

プチ断食で脳の機能が改善する?

まだマウス実験の段階ですが、「プチ断食で脳に新しい神経が生まれるかも?」みたいなデータ(R)が出ておりました。どんな実験なのかと申しますと、

 

  1. マウスたちを「12時間プチ断食」「16時間プチ断食」「24時間プチ断食」「普通に食べる」の4グループに話kる(1日の摂取カロリーはどのマウスも同じ)

  2. その後で、脳にどんな変化が起きたかを調べる

 

って感じです。すると、プチ断食をしたマウスには明確な違いがありまして、

 

  • プチ断食をしたすべてのマウスが、海馬の神経新生のレベルが上がった!

 

という結果だったらしい。ご存じのとおり、海馬は記憶や学習をつかさどる脳のエリアで、ここの神経が増えるのは、まことにありがたいことなんですよね。

 

 

もちろん、これだけでプチ断食で脳機能が改善とは言えないんですけど、一時的なエネルギー不足のせいで脳に負荷がかかって、そのおかげで脳神経が育つこともあるのかな?とはちょっとだけ思っております。どうぞよしなに。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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