今週半ばの小ネタ:バコパと脳機能、脱水の脳ダメージ、イヌリンでメンタル改善?
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
バコパで脳の機能は上がるのか?のメタ分析
バコパっては、古代からアーユルヴェーダの世界で使われてきたハーブで、記憶力や不安の改善に効くなどと言われてきたサプリであります。事実、近年のデータでもバコパが認知機能に良いって話はいくつか出てたんですよね。
で、このたび新たにメタ分析(R)が出まして、「バコパは本当に認知を改善してくれるのか?」って問題を掘り下げてくれておりました。
この系統的レビューでは、「健康な人」「アルツハイマー病の人」「うつ病の人」それぞれの認知にバコパが効くかどうかを調べた32の研究をチェック。そのうち11のRCTがメタ分析に含まれており、健康な成人645人の記憶力と注意力の変化を調べております。
その結果がどうだったかと言いますと、
- バコパは視覚と聴覚の学習テストと学習率、暗算テスト、論理的な記憶をちょっとだけ改善する可能性がある
- ただし、全体的に出版バイアスのリスクは高め
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アルツハイマー病の認知のいくつかの測定値をわずかに改善する可能性もある
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うつ病や不安をちょっと改善する可能性もある
みたいになってます。全体としては留保すべきポイントがありつつも、何らかの良い違いは得られるんじゃないかなーってとこですね。まだ確定的なデータではないものの、なかなか見込みがあってよろしいんじゃないでしょうか。
脱水から脳を復帰させるには、どれだけ水を飲めばいいのか?問題
脳を満足に働かせるためには水分が必要!ってのは当たり前の話なんですが、世間を見てますと十分な量の水を飲んでない人は意外と多め。そこで新しい研究(R)では、「どれぐらい水分を補給すればが気分や認知は改善するのか?」ってところを調べてくれておりました。
この研究は64人の若年成人が対象のRCTで、
- 参加者に夜から12時間の断食をしてもらう(水も飲まない)
- 翌日の午前8時にみんなの血液と尿を調べ、さらには脱水状態における気分と認知能力を測定
- その後、参加者を「100mLの水を飲む」「200mLの水を飲む」「500mLの水を飲む」「水なし」のどれかに分けて、水を飲んでから90分後に再び血液、尿、気分、認知機能を評価
って感じのデザインで、「脱水状態でどれだけ認知機能は下がるか?」や「脱水からどれぐらい水を飲めば復活するか?」っていう2つのポイントをチェックしたんですね。
で、結果です。
- 脱水状態と比べると、どんな量の水分でもノドの渇きをやわらげ、ワーキングメモリを改善し、怒り、疲労、および全体的な気分を改善させた
- 500 mLの水分と200 mLの水分を比べた場合は、喉の渇き、疲労、気分のスコアに有意な差はなかったが、500 mLの水分のみワーキングメモリが改善した
ということで、いつもから体内の水分を切らさないようにしておくのが基本ながら、もし脱水を起こしちゃった場合は500ml以上を補給してやると良さげっすね。
イヌリンで肥満の人の気分が改善する?
イヌリンは、このブログでよく取り上げている食物繊維のひとつ。わりと複数のデータで良い成果が出てまして、個人的にも「使えそうだなー」とか思ってるわけです。
で、新たなテスト(R)は、「肥満の人のメンタルがイヌリンで改善するのでは?」みたいな結論になってておもしろかったです。一般に肥満の人は腸内環境が乱れてるケースがあり、そのせいでメンタルをやられてしまう傾向が多め。こも問題を食物繊維が改善してくれるんじゃないか?と考えたわけっすね。
これは3ヶ月間のテストで、肥満やメタボに悩む106名の男女を集めて、
- 1日16gのイヌリンを飲む
- プラセボのパウダーを飲む
ってどちらかに割り付けたうえで、すべての参加者には低カロリー食(普段の食事の-30%)を指示したとのこと。それでどんな結果が出たのかと言いますと、
- イヌリンを飲んだグループは、全体的に気分、認知の柔軟性、脂肪量が改善した
- 他人や自分自身の感情を識別する能力については、両グループで違いが見られなかった
- 実験前にコプロコッカス(酪酸を生み出す善玉菌)が多い人ほど、イヌリンのメリットは大きかった
みたいになってます。どうやら、もともとの腸内細菌の構成によってかなり効果が違ってきそうですが、基本的にはイヌリンは体内の炎症を改善して、ひいては気分を改善してくれる可能性は高そうっすね。個人的にもイヌリンは積極的に摂取していきたいところです。