筋力と筋肉量を上げるためのトレーニングは交互に行うべきか?問題
よく言われることですが、「筋肉を増やすための筋トレ」と「筋力を増やすための筋トレ」には違いがあるわけです。ざっくり言うと、
- 筋肉を増やす:そこそこ軽めの重さでトレーニングの総量を増やす
- 筋力を増やす:ガッツリと重い負荷を使ってトレーニングをする
みたいな差になります。もちろん「筋肉を増やすための筋トレ」だからといって筋力が増えないわけでもないし、逆もまた然りなんですが、おおまかにはこういう傾向があるということで。
が、ここでよく言われるのは、
- 筋力と筋肉量の増加は交互にやった方がいいのでは?
ってポイントです。筋力の強化と筋肉量の強化をサイクルすることによって、
- 筋力の強化トレーニングで重いものを持ち上げる能力が上がる
- 筋力が上がったおかげで、さらに筋肉量の増加トレーニングがはかどる
- 通常より筋肉が増える!
みたいな考え方があるわけですね。確かにありそうな話ですねぇ。
では、この手法って本当に効くのか?ってことで、ブラジルでいい感じの研究(R)が行われておりました。
これは16名の男性を対象とした実験で、平均年齢は25歳でトレーニングの経験年数が1~10年(平均4.6年)ぐらいの人たちを集めたとのこと。まずはみんなの最大筋力を計測した後、2つのグループにランダムで割り当ててます。
- 筋力アップ → 筋肉量アップ:筋力トレーニングを6週間行った後、筋持久力(肥大)トレーニングを6週間行う
- 筋肉量アップ → 筋力アップ:上のグループと同じ期間のトレーニングをするが、順序は逆にする
筋トレのペースは週4回で、具体的なメニューは以下の感じになってます。
▼筋力アップフェーズ
- 月曜と木曜
- ベンチプレス:2-4RMで3セット(RMの意味がわからない方はこちらをどうぞ〜)
- インクライン・ベンチプレス:2-4RMで3セット
- バーベル・スクワット:2-4RMで6セット
- 火曜と金曜
- バーベルロウ(順手):2-4RMで3セット
- バーベルロウ(逆手):2-4RMで3セット
- デッドリフト:2-4RMで6セット
▼筋肉量アップフェーズ
- 月曜と木曜
- ベンチプレス:10-12RMで4セット(RMの意味がわからない方はこちらをどうぞ〜)
- ダンベルフライ:10-12RMで4セット
- ライング・ダンベル・エクステンション::10-12RMで4セット
- バーベル・スクワット::10-12RMで8セット
- 火曜と金曜
- バーベルロウ(順手):10-12RMで4セット
- バーベルロウ(逆手):10-12RMで4セット
- バイセップカール:10-12RMで4セット
- デッドリフト:10-12RMで8セット
ってことで、筋肉量アップフェーズでは軽めの負荷でボリュームを増やし、筋力アップフェーズではかなりキツ目の負荷を使ったわけですね。かなり基本的なやり方なので、自分の筋トレの参考にもなりそうっすね。
で、これでどんな結果が出たかと言いますと、
- どちらの順序でやった場合も、筋力は同じようにアップした
- どちらの順序でやった場合も、筋肉量は同じようにアップした(いちおう筋力フェーズを後にしたほうが筋力と筋肉量が増えてるんだけど、統計的な誤差な気がする)
- 筋トレのボリュームは、どちらのグループも同じぐらいに落ち着いた
だったそうです。何度も書いているとおり、やはり筋トレで一番重要なのはボリュームであり、ボリュームが同じである限りは筋力アップと筋肥大トレーニングの順番は関係ないのかなーって感じですね。
ちなみに、他にも興味深いポイントを申し上げますと、
- だいたいの参加者は、筋肉量アップフェーズで筋肉が5.5%増加(外側広筋の厚さ)したのに対して、筋力アップフェーズでは0.6%しか増加しなかった
みたいになってまして。やっぱ筋肉を増やしたいなら「軽い負荷で回数を増やす」ってやり方が良さそうであります。
まぁ小規模な実験なので、これだけで筋力と筋肉量トレーニングのサイクルを回すのが無意味とは言い切れません。また、この実験は短期間なんで、長期にわたって行ったらどうなるかも不明であります。実際、過去には「重い負荷で回数が少なくても、長期間やった場合は筋肉量への悪影響はない」って報告もあったりしますんで。
そんなわけで、この実験を見る限り、筋力アップと筋肉量アップのトレーニングは、自分のニーズと好みをふまえた上で好きなようにお使いいただくと良さそうですね。私は近ごろ筋肉量の増加にかまけすぎて、筋力をおざなりにしてきたところがあるんで、ちょっと筋力アップ系も導入しようかと……。