25万人のデータが示した「脳に効く運動」の新常識とは
「運動で脳が改善する」系の研究に、また最新の知見(R)が加わっておりました。似たような研究は過去にも大量に出てるんですが、今回は決定版ともいえるメタメタ分析(つまり、複数のメタ分析をまとめたもの)が出まして、なかなか参考になる感じでした。
その結果を一言でまとめると、
- どんな運動でも、脳は良くなる。ただし、激しすぎない運動のほうが効くかもよ?
みたいになってまして、現時点の結論としてはこれを参考にしとくのがよいのではないかと。
今回の研究はオーストラリアの研究チームが行った超大規模なレビューでして、対象になった論文はRCTが2,700本超。全部で25万人以上のデータを分析してまして、以下のポイントを評価したんだそうな。
- 記憶力
- 実行機能(注意力や自己コントロール、判断力などの変化)
- 全体的な認知能力
これだけの規模で運動の効果を調べたものは前例がないので、いまんとこ最も確度が高そうな感じじゃないでしょうか。
そして、研究チームがどんな結論を出したのかと言いますと、
- 年齢、性別、健康状態に関係なく、運動は脳に良い影響をもたらす
- 激しい運動よりも、「ウォーキングやヨガ、太極拳などの軽〜中程度の運動」または「呼吸や動作に意識を向けるようなマインドフルネス系の運動」のほうが、認知機能の改善効果は大きい
って感じだったそうで、つまり「走り込み」とか「筋トレガチ勢」にならなくても、“ゆるめの運動”さえしていれば十分に脳は鍛えられるというか、そっちのほうが脳には良いわけですね。研究チームいわく、
ヨガのような軽い運動でも認知機能は改善できる。それが誰にでもできる、という点で重要だ。
とのことで、これはだいぶ敷居が下がってよいっすね。
また、この研究では、年齢層や状態によって得られる効果にも違いが確認されていて、ざっくりまとめるとこんな感じになります。
- 子ども・ティーンエイジャー は、運動による記憶力の改善が大きい。この年齢の脳は発達段階にあるので、いろいろと変化しやすく、そのため軽い運動をするだけでも記憶力がグンと伸びるらしい。
- ADHDのある人は、運動によって実行機能が改善しやすい。ADHDの人は注意の切り替えや自己制御が難しくなりがちなんだけど、適度な身体活動がこの部分をサポートしてくれるらしい。
ここらへんも、いま若い人、子育て中の人、ADHDの人などには非常にありがたいポイントではないでしょうか。
さて、さらに個人的に最も面白かったのが、「どのタイプの運動が、どの認知能力に効いたか」ってのを分析したパートです。特に興味深かったのは、
- エクサゲーム(アクティブなビデオゲーム)が、全般的な認知機能に最も効果的だった!
という点でして、要するに「リングフィット アドベンチャー」や「FitXR」「ダンレボ」みたいなゲームが、最も脳機能の改善への効果があったってことですね。これには研究チームも驚いたそうな。
エクサゲームが特に良い理由はまだよくわからんのですが、
- 身体を動かす負荷 + 注意・記憶・判断といった認知負荷が組み合わさっているから
- 動作の記憶、視覚的なキューの認識、タイミングの調整などを同時に行わなきゃいけないから
って感じで、「体と脳を同時に使う」状況が自然に作られるのが大きいんでしょうね。この手の運動は、単なるウォーキングよりも複雑な処理が求められるので、それが脳の活性を後押しするんでしょう。
さらに、ここでは「記憶力」に特化して効くタイプの運動も特定されてまして、
- 記憶力の改善にはヨガと太極拳がベスト!
みたいな結論も出てて面白かったですね。というのも、このふたつの運動は、見た目はスローで地味なんだけど、実はどちらも認知的な要求レベルが高い側面があるんですよ。たとえば、
- 複雑なポーズを記憶する
- 呼吸と動作のタイミングを一致させる
- 内面の感覚や体の状態に集中する
これらの要素が組み合わさることで、記憶や集中力、身体感覚の統合力が同時に鍛えられるってことなんでしょうな。なので、「記憶力に自信がない」って方は、朝ヨガなんかから始めると良いかもしれません。
ということで話をまとめると、
- 毎日30分ぐらいウォーキングをする
- 週に2〜3回のヨガをやる
- 時々アクティブなゲームで遊ぶ
といった、「ちょっとした習慣」が脳の将来を左右するんじゃないかって話であります。こりゃあだいぶ楽な基準でよいですね。