運動のやる気が出ない…それ、マインドフルネスで解決できるかも
「運動しなきゃと思ってるけど、なかなか続かないんだよなぁ…」みたいなお悩みを定期的にいただくわけです。私の場合は、幸いにも運動の習慣化には困らなかったタイプなんですけど、この問題に悩んでいる方はかなり多いものと推察しております。分かっていても続かないのが人間ですからね。
で、そんな“やる気の壁”に対して、バース大学が面白い研究(R)をしてくれててナイスでした。ここで調べられたのは、「歩数トラッキング」と「マインドフルネス」を組み合わせたらどうなるかってポイントでして、対象になったのは、運動不足ぎみな男女109人(1日30分以上の中強度運動に達していないぐらいの運動量)。みんなに歩数計を装着してもらい「1日8000歩」を目標に歩いてもらいつつ、30日間のチャレンジを実施したんだそうな。
このとき、参加者を2つのグループにわけてます。
- 歩数トラッキングのみグループ: ただひたすらに8000歩を目指す。
- 歩数トラッキング+マインドフルネスグループ:上記に加えて、毎日数分間のマインドフルネスをアプリで練習。その主な内容は、呼吸や身体感覚に注意を向けたり、歩行中の感覚に意識を向けたりと、日常動作とマインドフルネスを結びつけて学習するようなイメージ。
こんな感じで、マインドフルネスを組み合わせたほうが、運動の習慣が身につくんじゃないかと研究チームは考えたわけですね。ちなみに、ここで使われた瞑想アプリは「Medito」ってやつだそうで、私はまったく知りませんでした。評価が高いみたいだから使ってみようかな……。
では、結果を見てみましょう。まず、実験が終わった後はどちらのグループも運動量はどちらも増加したらしいんですが、まあこれは意外じゃないですな。たいていの人は「数値化されるとやる気が出る」性質があるので、歩数トラッキングを導入するだけでもある程度の効果は期待できるんで。ただ、これにマインドフルネスを組み合わせたらどうなったかと言いますと、
- 歩数+マインドフルネス群: 週あたりの運動が平均373分になった(1日約53分)。さらに、「このまま運動を継続したい!」というモチベーションがめっちゃ上がった。
- 歩数のみ群: 週あたりの運動が平均297分になった(1日約42分)。「このまま運動を継続したい!」というモチベーションは、そんなに変わらなかった。
ということで、マインドフルネスを使ったグループは、実際に運動の量が増えただけでなく、その後も運動を続けたいってモチベーションも上がったみたいっすね。これはなかなかよろしい変化ですな。
この効果について、研究チームは「内発的動機づけの向上がポイントだよねー」と述べておられます。ご存じの通り、心理学ではモチベーションのタイプを2つにわけてまして、
- 外発的動機づけ:報酬、罰、周囲の評価などによるもの
- 内発的動機づけ:好奇心、達成感、自分の価値観に沿った行動など
みたいに区別します。当然、後者のほうがモチベーションは持続しやすい傾向がありまして、「長期的な習慣化」を狙いたいなら「内発的動機づけ」を伸ばすのが基本になるわけです。その点で、今回の実験では、マインドフルネスが内発的なモチベーションに気づかせるトリガーとして機能したのでは?と研究チームは考えたんですな。マインドフルネスを使ったことで、「あれ?運動って意外と良いかも?」っていう気持ちの変化に気づきやすくなったわけですな。
ということで、ここまで読んで「よし!マインドフルネスで習慣化だ!」と思った方のために、すぐ始められる実践法も紹介しておきましょう。だいたい以下のガイドラインを守っていただくと、習慣化が良い感じで進むのではないかと。
1. 目標は「1日8000歩」でOK
8000歩って数字は、運動系の研究でよく使われた基準で、そこまで無理がないけど健康の改善には役立つよねーってぐらいの現実的なラインであります。スマホやスマートウォッチでも簡単にカウントできるし、「数字が見える化」されるだけで行動は変わりますんで、まずはこれぐらいのレベルを目指すのがお勧めです。
2. 歩行マインドフルネスをやる
瞑想というと「座って無になるものだ!」みたいに思われがちですが、実際は歩きながらでも十分に効果があったりします。ポイントは、「今この瞬間」に注意を向けることなので、具体的な手順としては、
- 最初の1分間は呼吸に意識を向ける(吸って、吐いてを感じる)
- 次の3分間は足の裏が地面に触れる感覚、重心の移動、腕の振れを観察
- 注意がそれたら、優しく呼吸や足に意識を戻す
ってな感じで続けるだけでも、運動の“質”がまったく違って感じられるんじゃないかと。
3. 評価せず、記録するだけでもOK
もしも運動のやる気が出ない日があったら、そんな時はぜひ「今日はダメだった」などと自分をジャッジしないようにお願いします。マインドフルネスの本質は“評価しないこと”ですんで。
どうしてもモチベーションが出ない時は、歩いた距離や時間だけでも記録しておきましょう。それだけでも「自分は動いている」という実感が得られて、それがまたモチベーションになるはずなんで。
ってことで、今回は「運動にマインドフルネスを組み合わせると、その後のモチベーションが続くかもよー」って話でした。今回の研究はまだ初期段階ではありますが、運動ってのは単に目標を立てただけだと続けるのが難しいので、お困りの方は「歩行マインドフル」からスタートしてみるのも良いんじゃないでしょうか。