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起業家が成功するためにはIQより感情知性が大事なんじゃないの?というメタ分析のお話

 

 

感情知性(EQ)はどこまで重要か?」って問題はまだ諸説あって、まだはっきりしたことは言えない段階ですが、近ごろは「EQ(感情知性)が高い人はやっぱり勉強でも成功するぞ!」みたいな話も出てまして、割と追い風が吹いている印象でしょうか(まぁIQの方がまだ全体的には重要な気もしますが)。

 

 

といったところで、直近のメタ分析(R)では、「起業家にとってEQは重要か?」って問題を深掘りしてくれてて勉強になりました。ざっくりどんな研究かと言いますと、

 

  1. 先行研究から、起業家と感情知性に関する約40のデータを集める
  2. 65,826人の起業家のデータをメタ分析して大きな結論を出す

 

みたいになります、この研究で扱った「感情知性」の定義について、チームはこんな風に言ってます。

 

感情的な知性は、相手のニーズを正確に察知し、良い第一印象を与え、対人関係で相手に影響を与えるといった社会的スキルと関連する。

 

これらのスキルは、ビジネスネットワークを構築する際に重要であり、正当性を示したり、資源を獲得したりするのに役立ち、創造性やチャンスの認識を高め、感情的に混乱した状況での意思決定を助け、予測不可能な出来事への適応を可能にする。

 

感情知性は対人コミュニケーションに役立ちまくる能力なので、特に起業のような不確実性が高くて、なにが起きるかわからない世界では、IQよりも役に立つんじゃないの?ってのが本論の問題意識であります。確かに起業とかだと、論理思考よりも、周囲の人間の力をいかに借りられるか?の方が大事だったりしますもんね。

 

で、メタ分析の結論をひとことでまとめてしまえば、

 

  • 起業の成功をもっともよく予測するのは感情知性だった

 

だそうです。IQのような知性よりも、起業においては感情知性のほうが重要なのではないか?って結論っすね。

 

 

この結論について、チームは以下のように言っておられます。

 

起業家というのは、「伝統的な職場環境」ではない。

 

起業家の体験をしたことがあれば、自分のビジネスを管理するプロセスには、しばしば感情のジェットコースターの上で一人で叫ぶかのような感覚をもたらすことを知っているだろう。

 

このように極端な環境では、感情や社会的なつながりを管理する能力が決定的に重要になり、特に大きな混乱や危機の際にはその傾向が強くなる。

 

起業は感情のアップダウンが激しいし、環境の変化も著しいせいで、普通の仕事よりも対人関係やセルフコントロールの能力が大事になってくるんだって話ですね。こうして考えると、不確実性が高まった現代の職場では、昔よりも感情知性が重要になってきたりするのかもですな。

 

 

まぁ、だからといって、IQの重要性が下がったわけではないもの当然の話。チームは以下のように注意をうながしておられます。

 

 

すべての仕事やキャリアにおいて、仕事の成果やキャリアの成功を予測するには、IQの方が優れていることは間違いないが、起業家の領域では、感情的な知能の方が成功をより強く予測していた。感情的知性が高い人は、ビジネスリーダーとして成功し、より典型的な仕事やキャリアよりも成功を享受する傾向がありった。

 

 

 ってことで、やはり一般的な仕事に関してはいまもIQのほうが成功を予測しやすいので、どの能力が重要になるかはジャンルによるってことなんでしょうな。

 

 

まとめると、起業家のような不確実性や曖昧さがつきまとう世界では、IQといったコンピテンシーよりも、感情的なコンピテンシーのほうが恩恵を受けやすい可能性は大。変動が大きな世界で暮らしている方は、ぜひ感情知性を重んじていただくといいかもしれません。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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