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目標達成の基本「ナッジ」にもいろんな方法があるけれど、一番効き目があるのはどれなの?という話


 

目標を達成しようと思ったら習慣化が大事!ってのは常識で、近ごろこのブログでも「習慣化の方法」みたいなシリーズを書いております。

 

 

で、そのためによく使われるのが「ナッジ」の手法でして、「本人が自分から望ましい行動を取るように誘導するテクニック」みたいな考え方ですな。「実践 行動経済学」で有名なリチャード・セイラーさんが考案した概念で、

 

 

といった話をこのブログでも紹介しております。いずれの手法においても、「強制されてる感じ」を持たずに自分から望ましい行動を取るように仕向けられるんで、うまく働けば努力せずに習慣化を達成しやすいんですよね。

 

 

でもって、新たなデータ(R)は「ナッジにもいろんな方法があるけれど、一番効き目があるのはどれなの?」ってのを調べたメタ分析になっててタメになりました。具体的には、ナッジの効果について調べた先行研究から174の論文のデータセットを分析してまして、なかなか信頼度が高い結論を出してくれてます。

 

この分析で取り上げられたナッジのテクニックは大量にありますが、ざっと主だったものを並べると、

 

  • 感情をかき立てる系:タバコのパッケージに肺癌の写真をあしらったりとか

  • プロセスの単純化:複雑な書類を「チェックひとつ入れればOK!」にするとか

  • 事前に計画を立てる:大きなプロジェクトを細かくして、取りかかる順番を決めておくとか

  • 説明責任を増やす:「もし運動をしなかったら千円あげるよ!」と友人に言っておくとか

  • エビデンスの強調:「もしこのまま太ったらボロボロになるぞ!」という証拠を意識させたりとか

  • リマインダーの使用:「ド定番の目標達成テク「リマインダー」を正しく使いこなすための5大ポイント」参照

 みたいなものが挙げられておりました。いずれも習慣化系の書籍で取り上げられる定番テクばかりですけど、果たして最強の方法はどれなのか?ってことですね。

 

 

それでは、細かいとこをぶっとばして結論から申し上げますと、こんな感じになります。

 

ナッジの効果は全体的に統計的に頑健な証拠を提供しているが、自動化がより大きな効果を生み出すことを示唆している。

 

ってことで、意思決定のプロセスを自動化するナッジの効果量がもっとも大きく、Cohen's dで測定した場合の数値が他のナッジよりも0.193ポイント大きかったとのこと。より簡単に言えば、他の変数を平均値に保った状態では、自動化系のナッジは他のナッジよりも約50%ほど効果が大きいって感じでして、これはそこそこな違いじゃないでしょうか。

 

 

自動化系のナッジ」ってのは、とにかく自分がやりたいことをすべてオートメーション化しちゃう方法で、

 

  • 毎月の給料から、自動的に2万円がインデックスファンドに振り込まれる
  • 毎月、特定の日に新鮮な野菜が届けられる

 

みたいな考え方のことです。近ごろは、各国の企業で従業員の貯蓄額を増やすために採用されてるテクニックですな。まぁ、いったん自動化させちゃえば、あとはこっちはまったく考えなくていいんで、効果量が高いのも当然と申しますか。

 

 

ただ、ここには注意点もありまして、研究チームいわく、

 

短期的に大きな影響を与えるナッジは、長期的にはごくわずかな影響しか与えず、意味のある累積的な影響を生み出すためには、ナッジに繰り返しさらされる必要がある。 

 

と申しておられました。全体的に見るとナッジの効果はとても小さいし、短期的に効果が大きなものほど長い効果は得られないので、ひたすらくり返すのが必要なんだよーってことですね。

 

 

具体的に自動化ナッジの例を挙げると、ある雇用主が退職金の自動登録を実施したところ、従業員の累積拠出額は初年度の年俸の4.1%しか増加しなかったらしいんですよ。確かに、一番効果的なテクニックを使っても、この程度の効果なのかーって気はしますね。

 

 

あと、個人的な感想も付け加えておくと、「自動化のナッジって適用範囲が狭いよねー」ってのもありますね。例えば「定期的に運動をする」みたいな目標を立てた場合に、ランニングを自動化するのってほぼ無理だったりしますし。自分から積極的なアクションを取らねばならない目標だと、いまいち自動化しづらいんですよねー。

 

 

が、もちろんだからと言ってナッジが無駄って話ではなく、さらに研究チームいわく、

 

ナッジの効果は小さいかもしれないが、実施にかかるコストは小さい。発生したコストの単位あたりのインパクトに基づけば、ナッジは実際に行動を変えるための非常に価値のあるツールだ。

 

とのこと。いかに使いづらいと言っても、そもそもナッジは実施コストがとても低いんで、とりあえず試すだけ試せば良いじゃない!ってことっすな。まぁそうですよね。

 

 

ってことで皆さまも、これからなんらかの目標に取り組む際は、「このなかで自動化できるとこはないかな?」と考える作業をファーストステップにしてみると良いのではないでしょうか。どうぞよしなに。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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