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今週末の小ネタ:ジェスチャーで情報整理、海外生活で性格が良くなる、良い孤独


Summary


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

 

ジェスチャーを使うと抽象的な情報の整理がはかどる!

ジェスチャーは侮れん!ってのが近年の傾向でして、

 

 

みたいな報告を聞くことが増えてきたわけです。言わずもがな、肉体と脳はつながってるんで、手足の動きは思考に影響を与えるんですよ。

 

 

でもって、新しい研究(R)では、「ジェスチャーを使うと難しい情報の整理がはかどるぞ!」って話になってておもしろいです。ざっくりどんな実験かと言いますと、

 

  1. 170人の学生を集めて「免疫」の仕組みについて講義をした動画を見る

  2. その際に、講師が「構造のジェスチャー」か「表面のジェスチャー」で説明を行う

  3. その後、学生たちにテストを行う

 

みたいになってます。「構造のジェスチャー」ってのは手を左右に動かして「(左側を手で示しつつ)こっちに自然免疫があって、(右側を手で示しつつ)こっちには獲得免疫があって……」みたいに、抽象的なものを空間に置きながら説明していうタイプのジェスチャーで、「表面のジェスチャー」は「(両手を離したり合わせたりしつつ)免疫反応ってのはこういうふうに起きて……」みたいに抽象物の働きを示すタイプのジェスチャーです。

 

 

で、それから学生たちにレッスン内容の定着度を調べたら、結果は以下のような感じだったそうな。

 

  • 推論のテスト(「病原体が入ってきた後で腫れているリンパ節の中で何が起きてる?」みたいなやつ)については、構造のジェスチャーで学んだグループが良い点をとった

 

  • 表面的なジェスチャーで学んだ場合は、推論のスコアが改善しなかった

 

  • どちらのジェスチャーも、学んだ内容を記憶しておく役には立たなかった

 

だったそうです。こういった違いが出た理由には謎が多いんですけど、構造のジェスチャーを使った場合は「音声情報をジェスチャーによって物理的な空間に配置することで、脳内で情報の整理がつきやすくなるのでは?」みたいに考えられております。抽象的な内容を架空の物体としてあつかうことで、脳の情報処理が簡単になるんじゃないかなー、って話っすね。

 

 

そんなわけで、なんか抽象的なことを学ぶときは、「こっちに『需要』があって、こっちは『供給』で……」みたいに、目の前の空間に物体として配置してみるといいかもしれません。

 

 

 

海外で勉強すると性格が変わるんじゃないの?説

その昔、「海外に出ると本当に自分が見つかりやすくなるんじゃない?」って話を紹介しましたが、新たなデータ(R)も海外暮らしのメリットを示してくれておりました。

 

 

こちらの研究は、ドイツの約200の大学に通う1,000人以上の学生に1年間のオンライン調査を行ったもので、

 

  1. 在学中に海外に留学したかどうか

  2. ビッグファイブがどう変化したか

 

みたいになってます。期間中のアンケート回数は3回でして、その間に海外に留学したことで性格に変化が起きたかどうかをチェックしたわけっすね。

 

 

その結果について、研究チームは以下のように申しておられます。

 

留学する学生は、留学前から国内にいる学生よりも、オープンマインドで、誠実性が高く、外向的な傾向があった。そして、海外でしばらく過ごした学生は、開放性や情緒の安定性など、人格が良い方向に変化していた。初期の性格の違いを考慮しても、これらの特性に関する成長は対照群と明らかに異なっていた。

 

ってことで、「海外留学するぞ!」と決めるような人はもともと好奇心が旺盛で誠実性も高いんだけど、海外に行くことでさらにメンタルが安定していく傾向があるらしい。うーん、おもしろいですね。

 

 

では、なんで海外体験がこういった変化を起こすのかと言いますと、

 

異文化にうまく溶け込んだ人は、新しい状況に対処したり、課題を克服したりするのが容易であると考えられる。

 

といった推測がなされておりました。いまの文化とまったく違う環境に身を置くことで、多様性やトラブルを処理するスキルが高まり、それが引いてはキャラの改善につながるんじゃないの?みたいな話っすね。いかにもありそうですなぁ。

 

このような経験を得るために海外に出なければならないわけではないが、旅に出た人は明らかに滞在の経験から恩恵を受けている。

 

というわけで、できるだけ異文化に身を置いてみるのはやはり良さそうですね。確かに北朝鮮旅行とかめちゃくちゃ現在の思考に影響を与えてる気はするもんなぁ……。

 

 

 

「良い孤独」とはどんなものか?みたいな研究

孤独は体に悪い!って話は死ぬほど書いてて、過去には「自分の「孤独感」がどこまでヤバいのかを診断する4つの質問」なんてデータを紹介したことがありました。なんせ人間は社会的な動物なので、ひとりでい続けるのがメンタルに良くないのは当然なんですよね。

 

 

が、なにごとにも例外はあるもんでして、全ての孤独が悪いわけじゃないのも事実。かつては「ひとりぼっちにはメリットもある」みたいな話もありましたしね。

 

 

新たなデータ(R)も「ひとりぼっちの効用」を示したもので、まずはざっくりと概要を紹介すると、

 

  1. 295人の男女を集め、みんなの非社交性を評価する

  2. みんなの創造性、不安感受性、抑うつ症状、攻撃性などを評価する

  3. ふたつのデータを比べる

 

みたいになってます。非社交性ってのは、あんま人とつるまずに一人で過ごす時間を持とうとする性質で、基本的に私もそんな感じです。こういったタイプの人は従来は「メンタルが弱い」とか「神経症的」とか言われてきたんですけど、本当にそうなのか?ってところを調べたんだそうな。

 

 

でもって分析の結果について研究チームいわく、

 

これまでは、仲間を避けたり、引きこもったりすることの悪影響が強調されてきた。しかし、人間が仲間を避ける理由はさまざまで、引きこもりに関連するリスクは、根本的な理由や動機によって異なる。恐怖や不安から引きこもる人は内気な性格と関連しているし、また社会的な交流が嫌いだとの理由から引きこもる人もいる。



しかし、なかにはただ孤独を好むために引きこもる人もいる。このような人は、一人で本を読んだり、コンピュータで作業したりして過ごすことを楽しむが、内気さや交流嫌いとは異なり、メンタルに否定的な結果をもたらさず、創造性が高い傾向がある。

 

だそうです。不安や恐怖や嫌悪から非社交的になる人はメンタルが悪化するけど、シンプルに「ひとりが好き!」って理由から孤独にいたる人は、逆に創造性が高まる可能性があるわけっすね。まー当然っちゃ当然ですが。

 

 

無愛想な若者は、他人と一緒にいる時間よりも一人でいる時間のほうが長いが、仲間と一緒にいる時間もある。彼らは人との交流をしないが、仲間からの誘いを断ることもなく、反社会的でもない。

 

 

 

そのため、彼らは一人でも孤独を楽しむことができるのだろう。芸術家がスタジオにいるように、学者がオフィスにいるように、彼らは創造的に考え、新しいアイデアを生み出すことができる。

 

ってことで、このタイプの孤独好きは安心していただければと思うわけです。私の場合は、ひとりが好きであると同時に社交不安も混ざってるんで、なんとも微妙なんですが……。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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