統計や確率みたいに抽象的なものを勉強するときにはアレを使うといいよ!みたいなカリフォルニア大学の話
「ジェスチャーっておもしろい効果があるよなー」ってのはよく聞く話です。たとえば、
なんて報告があるわけです。その他にも、ジェスチャーを使いながら考えるとパズルを解く確率が上がる(R)みたいなデータもありまして、どうやらジェスチャーには思考を助ける働きがあるみたいなんですよね。
で、カリフォルニア大学の新しい研究(R)では、「ジェスチャーで統計学の勉強がはかどる!」って結論になってて良かったです。
この研究は2つの実験で構成されていて、最初の実験では、
- 60人の学部生をラボに呼んで、統計モデルの考え方を説明する動画を見てもらう
- このとき参加者を3つのグループに分け、(1)単に動画を見る、(2)動画にマッチしたジェスチャーを使いながら動画を見る、(3)動画にマッチしないジェスチャーを使いながら動画を見る
- 最後にクイズに答えてもらって理解度を調べる
みたいになってます。「動画にマッチしたジェスチャー」ってのは、たとえば動画内でヒストグラムの高さが変わったら、その動きに応じて手のひらを上下に動かすような感じ。逆に「動画にマッチしないジェスチャー」の場合は、動画でグラフがタテに動いたら、手のひらをヨコに動かすような感じに設定したそうです。
で、結果がどうだったかというと、
- マッチしたジェスチャーを使ったグループが最高点を出した(マッチしないジェスチャーを使ったグループとの比較では、23点満点中16.3点 vs 12.6点だった)
- ただ動画を見たグループは、ジェスチャーを使った両グループの中間ぐらいに位置していた
だったそうです。学びたい内容と正しく連動したジェスチャーは理解度を高め、内容と離れたジェスチャーは逆に理解度を下げちゃうのではないか、と。ジェスチャーが抽象的な情報の理解にも役立つかもしれないわけっすね。
ふたつ目の実験も内容はほとんど同じですが、こちらは130人の大学生を集めて、ノートパソコンで統計の学習をしたもらったんだそうな。すると、やはり同じ結果が再現されまして、
- 正しくジェスチャーを使った参加者の平均得点は5点満点中4.4点で、何もしない場合は4点、外れたジェスチャーを使った場合は3.8点だった
みたいな感じだったそうな。この結果について研究者は、
この結果は、「身体化された認識」の力を示すものだ。
と言っておられます。「身体化された認識」ってのは、体の感覚から入ってくる情報を取り込みつつ情報が処理されることで、たとえば、
- 首をタテに振りながら話を聞くと、首をヨコに振りながら話を聞くよりも説得されやすくなる
- ニコニコしながら漫画を読むと、無表情で漫画を読む方がおもしろく感じられる
- 手招きしながら見た物体は、手を押し出すような動きをしながら見た物体よりも好ましく感じられる
といったあたりが有名っすね。人間ってのは、目の前の情報を処理しているときに、同時に自分の肉体の動きや感覚も参考にしているので、その時の自分の体の状態が判断に影響するわけです。
言われてみれば、私も大昔に統計を勉強してたときとかは、「こっちに大きな池があって……」みたいに想像の池を両手で描きながら標準偏差の概念を勉強してたのを思い出しました。今回のデータを見ると、あのやり方にも一理あったんかな……。