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「ひとりぼっち」はメンタルに良くない!はどこまで本当か問題

Solitude 

 

ひとりぼっちは本当によくないか?

昔から心理学の世界では「ぼっちはよくない!」と言われ続けてきたわけです。たとえば1970年代に行われた古典的な実験(1)なんかでも、「ひとりでいる人は、友人といる時間が長い人にくらべて不幸!」って結果が総じて出てたりします。

 

 

さらに近年のデータでも「友情はモルヒネ並みの効果」みたいな話があったり、「孤独の健康リスクはタ肥満と同じ」ってデータが出てきたりで、“ぼっち”へのプレッシャーはいよいよ高まるばかりなんですな。人間関係が幸福度にあたえる重要性は、もはや動かしようがないレベルであります。

 



これまでの「ぼっち研究」には穴があった

が、近ごろ出た論文(1)は、「ぼっちにも効用はあるでしょ!」って結論になってておもしろいんですな。これはロチェスター大学の実験で、「いままでの“ぼっち”研究には穴があるよ!」って問題意識がベースになっております。

 

 

どういうことかというと、1970〜1990年にかけて行われた「“ぼっち”研究」は、ネガティブな感情とポジティブな感情を単一のスケールで考えてたんですな。つまり、いまの気持ちが100点満点で0だったらネガティブで100点だったらポジティブ、みたいな。

 

 

しかし、実際の感情はそんな風にはできてませんで、ネガティブとポジティブが同居するケースもあるわけです。たとえば、怒りと同時に興奮を覚えたり、平静な気分に孤独感が忍び込んできたりみたいなことっすね。これまでの調査は、このへんの要素を組み込んでないのがよろしくない!って考え方なわけですな。ごもっともっすね。

 

 

15分だけなにもしないで過ごす

ってことで、今回の実験では75人の学生を対象に、なにもない部屋で15分ほどじっと過ごすってタスクを指示しております。もちろんスマホや本も取り上げまして、できるのは空想だけ。いっぽうで別の学生39人には、研究者と15分間だけ楽しく会話するって作業を指示した模様。

 

 

また、実験の前後には、参加者たちにアンケートを行って全員の感情をチェック。タスクによってどんな違いが出たかをくらべております。

 

 

そこでどんな違いが出たかというと、

 

  • ぼっち環境にいたグループは、感情の強度が減った!
  • 会話グループは感情の強度が変わらなかった!

 

って感じです。「感情の強度」は自分の気持ちの強さのことで、15分ほどぼっち状態になった人は、激しい怒りや強烈な喜びといった状態がフラットになったわけっすね。

 

 

さらに、続くフォローアップ実験でも同じ結果が出てまして、やはり15分ほどひとりで過ごした参加者は感情の強度が減ったり、かわりに強度の低い感情が増えたとか(穏やか、リラックス、悲しみ、孤独など)。この現象を、論文では「デアクティベーション効果」と呼んでおります。

 

 

あくまで「ぼっち」自体が悪いわけではない

要するに、この実験でわかったのは、

 

  • ぼっち自体は良くも悪くもない!

 

ってことです。ぼっち状態は単に感情の強度の影響をあたえるだけで、ポジティブにもネガティブにも作用するんだ、と。私がよく「感情が弱い」と言われるのも、ひとりでいる時間が長いせいかもしれんですな。

 

 

研究者いわく、

 

この実験のポイントは、ひとりぼっちにはメリットもデメリットもある、ということだ。ひとりぼっちのメリットを活かすなら、自分の感情をコントロールしたい場面で使うといい。興奮を冷ましたいとき、ムカつくような事件のあとで気持ちをなだめないとき、平静で集中したいときなどだ。

 

とのこと。ぼっちも使いようってことっすね。

 

 

ただ、当然ながら、これは長期化した孤独感とはまた別の話なんで、そのへんはご注意ください。あくまでも孤独ではなく、「良いひとりぼっち」を目指す方向で。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。