今週末の小ネタ:プロバイオティクスで幸福に? 酢でメンタル改善? ネコロボットでメンタル改善? グルテンフリー&カゼインフリーは自閉症スペクトラム改善?
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
プロバイオティクスで幸福度はアップするのか?
プロバイオティクス(腸内細菌サプリ)でメンタルが改善するのでは?みたいな説は昔からありまして、腸と脳がつながっている以上は十分にありえる話だよなーとか思うわけです。
新しいデータ(R)もプロバイオティクスとメンタルの話で、大学院生を対象にプロバイオティクスが心身の健康におよぼす影響を調査してくれてます。
具体的には21日間のランダム化試験になっていて、12名の大学院生(平均年齢26歳)を対象に、プロバイオティクスのサプリがストレスに与える影響を評価したものです。参加者には、5×1010 CFUのラクトバチルス・ラムノサスかプラセボのいずれかを毎日摂取するように割り当てられまして、
- 質問票で精神的・肉体的な幸福度をチェック
- 糞便サンプルからマイクロバイオームとメタボロームの組成を評価
みたいな内容になってます。その結果、プロバイオティクスを摂取した参加者は、プラセボに比べて精神的・身体的状態が改善。糞便中の酪酸とイソ酪酸の濃度も増加したんだそうな(どちらも体に良い短鎖脂肪酸)。
まぁこの試験の参加者は「定期的にストレスを感じている人たち」と書かれてるわりに、この状態がどのように定義して検証されたのかは謎であります。ついでに参加者の数も少ないでなんとも言えないとこですけど、ラクトバチルス・ラムノサスはいろんなプロバイオティクスに入ってる普通の菌なので、気になる方はお試しくださいってことで。
酢でメンタルは改善するのか?
お酢でメンタルが改善するのでは?ってデータ(R)が出ておりました。お酢といえば、最近は料理に使われるだけでなく「血糖値にも有益なのでは?」と言われてまして、サプリのように使われる例も増えてきたんですよ。
そこでこの研究では、4週間のランダム化比較試験を行いまして、お酢が鬱症状に効くのかどうかを評価してくれてます。具体的には、大学生27名(18~23歳)を集めて、毎日大さじ2杯の酢(酢酸1.5gをふくむ)を摂取するグループと、プラセボ(酢酸0.015gをふくむ)を摂取するグループに割り付けたんだそうな。
そのうえで、質問紙を使って鬱病の症状と様々な気分状態(緊張、憂鬱、怒り、疲労、混乱、活力)などをチェックしてみたら、
- プラセボと比べて、お酢を飲んだグループは鬱病の症状が軽くなった
- お酢の摂取は全体的な気分には影響しなかったが、抑うつ気分状態の軽減につながった
ということで、どうやらお酢にはメンタルを改善する働きもあるんじゃないか、と。ただしこの研究は、新型コロナでキャンパスが閉鎖されていた時期に行われてるんで、特殊な状況が学生の気分や抑うつ症状に影響を与えた可能性もありますが。
そこらへん、まだなんとも言えないとこですけど、ここで使われてるのは無濾過のアップルサイダービネガーだそうで、気になる方はお試しいただくのもいいでしょう。
ネコロボットを飼ってもメンタルが改善する説
ペットを使ったセラピーの効果が高いのは昔から有名な話ですが、もしかしたらロボットのペットでも認知機能も向上させる効果があるのでは?みたいなデータ(R)も出ておりました。
こちらは軽度から中等度の認知症の高齢者12名(平均年齢80歳、67%が女性)を対象にしてまして、みんなにロボット猫と12回ぐらい遊んでもらったらしい。どんなロボットかは書いてないんですけど、「Joy For All Cat」みたいなやつでしょうか。
でもって、ネコロボットと遊んだ人たちの気分と行動を評価したら、結果はこんな感じになりました。
- ネコロボットと遊んだ高齢者は、時間の経過とともに、抑うつ症状と気分や行動の一部の指標が改善されたが、認知機能の改善は統計的に有意ではなかった
- 定性的フィードバックによると、参加者はネコロボットとの交流を楽しんでおり、一部の参加者はペットと一緒に寝たり、話しかけたりしたと報告された
ということで、ネコはロボットでも偉大!と思わせる結果になっておりました。もちろんサンプルが少ない試験だし、ランダム化されてるわけでもないのでデータの精度は低いんですけど、ぬいぐるみでもメンタルは落ち着いたりするんで、これもありそうな話だなーと。
グルテンフリー&カゼインフリーは自閉症スペクトラムに有効か?
グルテンやカゼインで問題が出ない人が、いくらグルテンフリーやカゼインフリーをしても意味はないわわけですが、ひょっとしたら「自閉症スペクトラムのケースには有効なのかも?」みたいなデータ(R)が出ておりました。
これはグルテンフリーとカゼインフリーに関する過去の8つの試験をメタ分析したもので、ASDの子供297,144人(4~8歳)データをまとめて大きな結論を出してくれてます。その結果をまずざざーっと並べてみると、
- グルテンフリーとカゼインフリーの食事をしたあと、5つの研究では「自閉症スペクトラムの典型的な症状の減少」が報告され、残り3つの研究では「認知機能の改善」が報告された
- コミュニケーションや社会的な問題については、食事療法の後も変化がなかった
- 食事療法をした後の胃腸症状の改善は1件の研究で報告されたが、別の研究では腹痛や便秘に変化は見られなかった。全体的にグルテンフリーとカゼインフリーの食事は安全だと考えられ、4つの研究では副作用が見られなかったと報告されている
みたいになります。それぞれの研究は、デザイン、試験期間、測定方法がバラバラなんで、いろんな要素が結果に影響してそうではありますが、とりあえず自閉症スペクトラムについては良い効果が見込めるかもしれないわけっすね。
これらの食事に効果がある理由についてはいくつかの説があるんですが、考えられることとしては、
- カゼインやグルテンのタンパク質が炎症で薄くなった腸内膜(つまり、リーキーガット)から神経系に影響を与えて、自閉症スペクトラムを悪化させるのでは?
みたいな説が有望かなーって感じがしております。ただし、いっぽうではグルテンフリーとカゼインフリーをしても自閉症スペクトラムの症状に影響が出なかったって報告もありまして、まだまだ謎が多いところではありますが……。