ヨガの片鼻呼吸で「英語の成績」があがるかもしんないぞ!みたいな実験の話
その昔、「ヨガの「片鼻呼吸法」で意志力がアップするらしい」なんて話を書いたことがありました。ヨガでよく使われる「片方の鼻で交互に息を吸う」って呼吸法を使うと、なぜかセルフコントロール能力がアップするというんですな。おもしろいもんです。
で、新しい研究(R)もまた片鼻呼吸の話で、結論から申し上げますと、
- 片鼻呼吸で外国語の勉強がはかどるのでは?
みたいになります。なんかうさん臭い感じもしますが、片鼻呼吸を使った学生は外国語テストの成績が上がったというんですな。
では、これがどんな研究だったかと言いますと、
- トルコの140人の学部生(17歳から27歳)に協力してもらう
- 参加者を半分にわけて、週1回の授業中に片鼻呼吸のトレーニングをするグループと、対照群(授業中に呼吸トレーニングを行わない)のいずれかに割り当てる
- 片鼻呼吸のトレーニングは最初の4週間は1回5分ほどで、その後は1回10分まで少しずつ時間を伸ばしていく
- 実験の期間は7週間で、英語の聴解・読解達成テストを行って、外国語のスキルが上達したかを調べる
みたいになります。1回5〜10分のトレーニングなんで、そこまで負担にならないのがいいですね。
ここで使われた片鼻呼吸のトレーニングは、以下のようなものです。
- 右手の親指で右の鼻の穴を軽く閉じる
- 左の鼻の穴から息を吸い、自分の呼吸を観察する
- 左の鼻孔から吸った息を止め、左の小指または薬指で左の鼻孔をふさいでから右の鼻孔を開く。右の鼻の穴からゆっくりと息を吐き出す
- 左指を同じ場所に置いたまま、右の鼻の穴から深く息を吸う
- 再び息を止めて、右手の親指で右の鼻の穴を閉じる
- 左の鼻孔からゆっくりと息を吸い、同じサイクルを続ける
ということで、片鼻呼吸としてはかなり定番のやり方が採用されてますね。ヨガの呼吸法を外国語の学習に使ったケースって他にないので、めずらしい研究になってるんじゃないでしょうか。
でもって、7週間後に英語の成績やみんなのメンタルなどを測定したところ、結果はこんな感じになりました。
- なにもしなかったグループと比べて、片鼻呼吸をしたグループはテストの不安が軽くなり、リスニングとリーディングテストのスコアが上がった。
- 参加者へのインタビューでは、片鼻呼吸によって不安な気持ちが軽くなり、テスト環境での集中力が向上したことが報告された。と同時に、学習する環境も穏やかで魅力的なものになったと述べた人も多かった
ってことで、片鼻呼吸によりほとんどの人は英語の成績が上がったんだそうな。こりゃいいですな。
この研究では、参加者へのインタビューも行われてますんで、そこらへんも軽く紹介しとくと、以下のようなものです。
片鼻呼吸は楽しいから好きだし、英語を話すのにも役立つと思う。よりリラックスできるので。
私は英語のテストが嫌いでしたが、いまは好きになりました。習ったテクニックを実行すると、より集中できるようになったので。
私は大きな睡眠問題を抱えていて、簡単には眠れませんでした。呼吸法は役に立っていると思う。睡眠の質が向上し、目覚めも良くなりました。
以前は間違った呼吸をしていたと思う。いつも口を使っていたんです。今は鼻を使っているので、もっと元気になった気がします。
ってことで、外国語のスキルが高まっただけでなく、全体的によく眠れるようになったり活力が上がったってコメントが多いっすね。やっぱ呼吸は偉大。
もっとも、研究チームは、「片鼻呼吸に期待しすぎるなよ!」とも言ってまして、
片鼻呼吸のエクササイズは、外国語学習者の聴解力や読解力を向上させたりするための近道と考えるべきではない。これは気をつけておくべきポイントだ。ヨガの呼吸法は、まさに自分の心と体をコントロールすることに特質がある。
ってことなんでご注意ください。別に片鼻呼吸が直に英語の成績アップにつながっているわけじゃなくて、あくまでも呼吸が整ったおかげで学習への不安が減り、そのおかげで勉強がはかどるんだよーって話なんで。
その点で過剰な期待は禁物ですが、以前に「英語の勉強がうまく進まないめちゃくちゃ重要な原因とは?」にも書いたとおり、不安感は外国語の学習をさまたげる大きな原因のひとつなんで、そこらへんにお悩みの方なら大きな意味があるんじゃんないでしょうか。
まぁ、この研究に関しては、多数の結果を調べてるにもかかわらず多重比較の調整を行っていないんで、どうしてもそこが弱くなっちゃうんですけど(つまり偽陽性の結果が出るリスクが高い)、呼吸の重要性は確実なんで、1日5分ぐらいのトレーニングはしてもいいんじゃないかと。