現代人がますます忙しくなってるのはなんでだべ?問題を考えよう!「原因編」ーーオリバー・バークマン「4,000週間」
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「4,000週間」って本を読みました。著者のオリバー・バークマンさんはイギリスのジャーナリストで、日本だと「解毒剤 ポジティブ思考を妄信するあなたの「脳」へ 」みたいに、科学的な成果をもとに自己啓発書をディスる著書で有名な人ですね。
で、今回の本のテーマは時間管理でして、タイトルの「4000週間」ってのは人間の平均寿命のことです。私たちはみんな人生の4000週間を存分に使い切りたいと思ってるんだけど、現代人がますます忙しくなってるのはなんでだべ? ってあたりを深堀りしてくれてるんですよ。その問題意識は、わりと「無(最高の状態)」にも近いところがありまして、いろいろ共感しながら読み進められました。
ってことで、個人的に勉強になったポイントの覚書き以下にメモっときます。
テクノロジーが進んでもみんな忙しい問題
- 歴史学者のルース・シュワルツ・カウアンがおもしろい研究をしている。20世紀初頭に欧米で洗濯機が発明され、多くの人は「家事の時間が圧倒的に減るはずだ」と考えたが、実際はそうではなかった。家事の時間は全く短縮されなかったどころか、家事の効率化が進むにつれて清潔さに対する意識が高まり、その効果が相殺されてしまったからである。
- これは、家事に限らず、時間に関するあらゆる問題に通じる問題で、バークマンはこれを「効率の罠」と呼んでいる。何かのプロセスやシステムをより効率的にしようとすると、より少ない時間でより多くのものを処理することが最大の目標になるため、結局は有効に使える時間がなくなってしまう。電子メールの処理を非常に効率的に行えるようになると、電子メールの数が増えていくのが良い例である。
- 同じように、職場で「この人はすごいスピードで仕事をこなす」と評判になれば、それだけ仕事を任されるようになってしまうことが多い。また、子供と過ごす時間を増やそうとを考えれば、運動する時間を増やしたりか、保護者会に参加しようとか、新たな社会的プレッシャーを感じるようになることも多い。
- これらの問題は、仕事や家事だけではなく、現代社会の問題すべてに当てはまる。多くの人は、自分ができることよりも多くの経験をしなければならないと感じ、本来よりも多くの義務を感じ、限られた時間のなかでより多くのものを詰め込み、それでも「まだやるべきことが残っている」というフラストレーションを悪化させていく。
- 現代社会では、人間の「めんどう」を減らすためにサービスが設計されることが多い(配車アプリとか出前アプリとか)。これらは確かに生活を楽にしてくれるが、大きな問題として「簡単なことに苦痛を感じやすくなってしまう」という副作用がある。スマホでチケットを買えることで売り場の行列を避けられるのはすばらしいことがだ、そのおかげで選挙の投票に並ぶのもイライラしてしまうようなケースである。
現代の問題は「重要なことに優先順位をつける」では解決されない
- 時間管理の本でありがちなのが、「最も重要なことに最初に時間を割けば、それらをすべて終わらせることができ、他のことにも余裕を持つことができる!」というアドバイスである。しかし、現代における時間管理の問題は、誰もがタスクに優先順位をつけられないからではない。そもそも、重要に見えるタスクが多すぎるのが問題である。
現代では重要だと感じられるものの数には限りがなく、だからといって、より多くのことをやり遂げたところで、さらに多くのものが重要だと感じられるようになってしまうだけだ。人は正しい時間管理術を身につければ、重要だと思うことすべてに手をつけられると思いがちだが、実際には「重要に見えること」は無限に供給されるため、最後まであなたは満足することができない。
- 結局、現代人は重要でないものだけでなく、重要なものも含めて「ノー」と言うことを学ばなければならない。本当に生産的で充実した人生を送りたいのであれば、本当に重要なことであっても、できないことはできないものとして人生から取り除く必要があるからである。つまり、現代における正しい時間術とは、「重要なことでもやらずに済む方法」を指南するものでなくてはならない。
「時間を有効に使うぞ!」と思うと失敗する問題
- 現代では「時間をうまく使う」ことがもてはやされるが、ここには大きなパラドックスがある。「時間をうまく使う」という考えに集中しすぎると、一瞬一瞬の時間を「何かの目標達成や将来のためにだけ役立つもの」として扱ってしまうため、本来生きたかった人生を送れなくなってしまうからである。人生の意味はつねに現在にしかないので、目的意識がジャマをしてしまう状態だと言える。
- が、だからといって、「それじゃあ今を楽しむぞ!」と考えすぎてもやはり失敗する。「私はいまを十分に生きているだろうか?」と自意識過剰におちいってしまい、やはり現在の意味から遠ざかってしまうからである。つまり、その瞬間に価値を見出そうと必死になるのではなく、ただただリラックスしてその場に存在するしかない(リラックスしようと意気込むと、またリラックスから遠ざかるわけですが)。
ということで、長くなったので今回はこのへんで。現代においては「重要なことから片付ける」よりも、「重要なことですら切り捨てる態度が必要だ!」ってあたりは非常に納得させられましたねー。で、このエントリはまだ続きまして、次回はバークマンさんが提唱する「解決策」編を見てみます。