今週末の小ネタ:もっとも魅力的に見えるマスク、楽観的な人がストレスに強い理由、自分の思考スタイルを瞬時に切り替えて人生を良くする方法
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
もっとも魅力的に見えるマスクはどれだ?問題
「マスクをつけてるとイケメン/美女に見える」みたいな話をよく聞きますけど、カーディフ大学などがそのへんを深堀りしてくれておりました(R)。
これは女性の参加者43人を対象にしたテストで、
- 医療用マスク、布製マスク、顔の半分を覆う本、何も着けてない男性という4枚の写真を用意する
- それぞれの写真を参加者に見せて、どれが魅力的なのかを採点してもらう
みたいになってまして、いろんなパターンでマスクによる魅力の変化を調べたんだそうな。その結果がどうだったかと申しますと、
- 顔の下半分を何らかの方法で覆うと、イケメンであろうとなかろうと、他人に与える魅力が増すっぽい
- 魅力度があがるマスクのトップは医療用マスクで、布製マスクが僅差で2位、何も顔を隠してないバージョンが最下位だった
ということで、世間一般に言われるとおり、やはりマスクは当人の魅力を増す作用があるらしい。
では、なんでマスクで魅力度が上がるかってポイントなんですが、これについてはまだ諸説ありまして、
- 顔の下半分を隠すことで、ある種の神秘的な感覚が生まれるから?
- 人間の顔の特徴のうち最も魅力的なのは目と髪だと言われてるので、マスクによってこの2つに注目を集められるから?
といった可能性が指摘されておりました。マスクによって魅力的でない部分が隠せるからではなく、人間の魅力を伝えやすいエリアに注目を集められるからかもしれないわけっすね。
ちなみに、医療用マスクの評価が高かった理由については「パンデミックが始まっため、青い医療用マスクの着用がポジティブなイメージを持ったからでは?」と推測されておりました。青い医療用マスクは医療従事者を連想させるから、そのおかげで最も魅力的だとみなされたのではないか、と。このあたりは文化の差が大きそうなんで、日本でも同じ結果が出るとは限らないでしょうが、とりあえずサージカルマスクを着用しておくのは魅力度アップにもいいのかもですな。
楽観的な人はなぜストレスに負けづらいのか?
「楽観的な人って長生きだよなー」ってのはよく耳にする話ながら、まだその理由には諸説あるのが現状であります。よく言われるのは「楽観主義者はストレスが少ないのでは?」て説なんですけど、それが事実かどうかってのもまだ議論は残るところでしょう。
といったところで、新たに「楽観主義者は本当にストレスが少ないのか?」ってあたりを調べたデータ(R)が出てたんで要点を見ておきましょう。
これは「退役軍人規範的加齢研究 」っていう有名な健康調査から233人の男性のデータを分析したもので、すべての参加者の楽観主義、日々のストレス要因、感情的幸福の変化を20年にわたって調べた内容になっております。具体的には、みんなに「毎日どんなことにストレスを感じました?」とか「どんなネガティブな気分を感じました?」なんてことを尋ねつつ、その相関を調べたんだそうな。
それで何がわかったかと言いますと、
- より楽観的な男性は、ネガティブな気分が少ないだけでなく、よりポジティブな気分を報告していた
- ただし、楽観的な人だからストレスに強いというわけではなく、ストレス要因に対する感情的な反応や回復に違いはなかった(つまり、嫌なことがあったら楽観的な人でも同じように怒ったり落ち込んだりする)
- それでも楽観的な人ほどネガティブな気分が少ないのは、そもそもネガティブな気分にさせるようなストレス要因が少ない傾向があった
だったそうです。研究チームいわく、
楽観主義者は、反応重視の戦略ではなく、注意の展開や状況の選択など、感情生成プロセスの早い段階で介入する感情調整戦略によって、その後の人生における感情の幸福を守る可能性がある。
とのこと。意味がわかりにくいですが、簡単に言うと、楽観的な人ほどポジティブなのは、ストレスが起きてからの対処がうまいからではなく、ストレスが起きそうになる前の対処がうまいからだってことです。「あれ?これは嫌なことが起きそうだぞ?」と思ったら、実際に嫌なことが起きる前にその状況を避けるか、前もって対策を打っておくわけですね。確かに感情の問題って起きてから対策しても遅いことが多いので、前もって対策しといたほうがよいのは間違いないでしょうな。
まぁそうは言っても「楽観と悲観を比べたときに長期的な幸せにつながるのは中間」って話もありますんで、個人的には中間レベルを目指すようにしてますが。
自分の思考スタイルを瞬時に切り替えて人生を良くする方法
親切は健康に良いしメンタルにも良いよーみたいな話をよく書いてますが、新たに「脳より心で考える!と意識するだけでも親切な行動が増える」って話(R)が出ておりました。
これはスウェーデンに住む1828名の男女を対象にした調査で、みんなに囚人のジレンマゲームや公共財ゲームなどの「他人への親切心がわかるゲーム」を指示し、その際に全体を3つのグループにわけてます。
- なにもしないグループ
- 「このゲームでは、脳ではなく心で判断してください!」と言われるグループ
- 「このゲームでは、心ではなく脳で判断してください!」と言われるグループ
そのうえでゲームの結果をみたところ、
- 「脳ではなく心で判断!」と言われたほうが他人と協力するし、ボランティアへの寄付額も大きかった
- 逆に「心ではなく脳で判断!」と言われると他人との協力は減り、その効果は「脳ではなく心で判断!」と言われたときよりも大きかった
だったそうです、「脳ではなく心で判断!」ってめちゃくちゃ単純な指示ですけど、それだけでも人間は「感情に頼った判断」と「利己性に頼った判断」を切り替えられるものなんですなぁ。
もちろん、この研究はプロソーシャルな行動を増やすために役立つわけですが、個人的には判断スタイルの切り替えが必要なときに使えるなーとか思いました。たとえば、
- コミュニケーションの場面みたいにピープルスキルが重要な場面では、「脳ではなく心で判断!」と自分に言い聞かせる
- 文字校正みたいに熟慮を必要とする場面では「心ではなく脳で判断!」と自分に言い聞かせる
みたいな感じっすね。と、ここまで書いてて、そういえば私も日常的に「今日の会話は傾聴のスイッチを入れるぞ!」とか事前に考えながら人とコミュニケーションを取ってることを思い出しました。事前にこういう対応を考えとかないと、いざ本番で適切な行動が取れないんですよねねぇ……(コミュ力が高い人は自然にできてるんでしょうが)。