「親切」は確実に人間の幸福度をあげる。それでは、具体的に誰に親切にするのがベストなのか?
「親切は人のためならず!」みたいな話をよく書いてるわけです。たとえば、
といった良いデータが出てまして、とにかくメリットが大きいんですよ。
こうなると、いやがおうにも「ガンガン親切をするぞ!」って気分になるもんですが、いっぽうで「親切の対象は誰でもいいの?」って気にもなるわけです。なんとなく、友人を助けるのと見知らぬ人を助けるのでは、幸福度の効果量に差が出そうなイメージがありますからね。
そんな状況下、「誰に親切をするのがベストなの?」ってところを調べてくれた論文(1)が出ておりました。
これはオックスフォード大学の研究で、24カ国から集めた683人の男女が対象。実験では、全員に「最低でも週に1回は他人に親切にしてみてね」と指示したんだそうな。
親切のパターンはなんでもよくて、
- 隣に住んでいる人を手伝う
- 世話になってる人に感謝の手紙を書く
- 誰かに食事や映画をおごってあげる
みたいな感じです。とくに大げさなものじゃなくて、ごく日常的な行動ばかりですね。
ただ、ここまでは従来の親切研究でもよくあるデザインなんですが、ここで研究チームは、親切の対象を4つのグループに分けたんですよ。具体的には、
- 身近な友人や家族だけに親切にする
- 知り合いとか初対面の人とか、そんなに親しくない人に親切にする
- 他人ではなく、自分に親切にする(慈悲の瞑想とかカラオケで好きな曲を歌うとか)
- 他人が親切にしているところを観察する
のようになっております。誰に親切にするかどうかで違いが出るかをチェックしたわけですねー。
で、この実験を行う前に、研究者も「まぁ普通に考えれば、友人や家族に親切にするほうがいいんじゃない?」と考えてたんですよ。直感的には、身近な相手に親切にしたほうが良さそうですもんね。
ところが実際の結果はさにあらずでして、
- どのグループも同じように幸福度がアップした!
だったんですな。「他人の親切を見るだけでもいい」ってのはちょっと驚きましたね。
研究者いわく、
「他人への親切」とは、その相手が身近だろうがそうでなかろうが、ヒトにとって内在的に報酬をもたらす行為なのだろう。親切は私たちの神経システムに刺激を与えてくれるのだ。
また、他人の親切を観察する行為は、あらためて「世の中には善きことがある」という事実に気づかせてくれる。そのため、世界がストレスフルで悪いニュースにあふれた場所だという印象が薄れ、気分を向上させていく。
とのこと。ってことで、どんなに親しくない相手だろうが、親切の対象が自分だろうが、さらには他人の善行を見ただけでも、幸福度には一定の効果があるのではないか、と。この実験のおかげで、親切の敷居が一気に低くなりましたねぇ。いやー、すばらしい。