【完全版】ザ・慈悲の瞑想
慈悲の瞑想で幸福度が上がって長生きに?
以前に「慈悲の瞑想は良さげ」って話を書いたことがありまして。
これは原始仏教などの世界で昔から行われてきた瞑想法のひとつで、簡単に言えば「自分や他人の幸せを願いながらやる瞑想」です。実際にやるとかなり小っ恥ずかしい手法なんですが(笑)、ここ10数年でボチボチ検証が進められてたりするんですな。
たとえば2008年の実験(1)では、139人に7週間ほど「慈悲の瞑想」をやってもらったら幸福度や自尊心が上がって、ついでに人生の目的まで定まったとか。さらに2013年のデータ(2)だと、37人を対象に効果を比べたところ「慈悲の瞑想」をやったグループはテロメア(長生きの指標のひとつ)が伸びてたなんて話もあったりとか。
まだデザインがゆるい研究が多いのが難点ではあるものの、とりあえずおもしろいテクニックだなーと思ってる次第です。手法のひとつとして押さえておくと良いのではないか、と。
その具体的な方法は前回もちらっと紹介したものの、あれはあくまで簡易バージョン。実際の実験で使われてる手法はもっと長大だったりしますんで、ここに「完全版」としてまとめておこうかと。
ウィスコンシン大学版「慈悲の瞑想」
いちおう研究機関によっていろいろな手法があるんですけど、ここではもっともデータの質が高いウィスコンシン大学バージョン(3)をご紹介します。
1 セッティング
人がいない部屋に静かに座り、リラックスして目を閉jきる。椅子に座っても、あぐらをかいても、横たわりながら行なってもOK。
続いて、2秒ほど深呼吸をくり返したら、しばし呼吸に意識を向け続けます。鼻孔に当たる息の感覚や、お腹のふくらみなどに集中してみるといい感じ。こちらは10秒ほど続けます。
2 感情の変化に気づく
ここからが「慈悲の瞑想」の本番。
まずは、近しい存在の姿を思い浮かべます。「近しい存在」は、友人や家族、ペットなどが一般的ですが、思いつかないようなら、過去の偉人、好きなアイドル、架空のキャラクターでもOK。とにかく自分が好感を持てるような存在を思い浮かべます。
近しい存在を思い浮かべたら、今度は、自分のなかにどんな感情が生まれたかを意識。胸のあたりに温かみがあるか? 穏やかな気分になったか? 開放的な気持ちが生まれたか? 反応は人それぞれですが、とにかく自分の感情の変化に気づくのが、このステップのポイントです。
3 コンパッションフレーズ
近しい人の姿を思い浮かべたまま、「コンパッションフレーズ」と呼ばれる文章を心の中でくり返します。
- 私の好きな人が、幸せになりますように。
- 私の好きな人が、嫌なことから自由になりますように。
- 私の好きな人に、楽しいことがありますように。
- 私の好きな人が、リラックスして暮らせますように。
以上のフレーズを1分ほどくり返したら、自分の感覚にどのような変化が出たかをチェック。ここで、別に優しい気持ちにならなかったとしても、気にしないで構いません。その場合は「とくに何も変わらないなぁ」とだけ認識して次に進みます。
4 セルフコンパッション
次は、「自分自身」に対する思いやりを育てるステップ。
まずは、あなたが人生の中でもっとも辛かった時のことを思い描きます。病気にかかった時、誰かとケンカした時、仕事に失敗した時など、精神的にダメージを受けた体験をクリアに思い出しましょう。この作業には15秒ほど使います。
続いて、さきほどと同じように、10秒をかけて自分の感情がどう変わったかに意識を向けていきます。自分に哀れみがわいたか? 嫌な記憶でムカムカしたか? 後頭部が重くなったか? 心のなかや体に現れた変化に気づいていくといい感じ。
ここから、今度は自分に向かって「コンパッションフレーズ」をくり返してください。
- 私が、幸せになりますように。
- 私が、嫌なことから自由になりますように。
- 私に、楽しいことがありますように。
- 私が、リラックスして暮らせますように。
このステップに使う時間は2分です。自分の幸せを願うのは違和感があるものなんですけど、効果を得るためには欠かせないプロセスなんで、ダマされたと思ってくり返してみてください。
5 ニュートラルコンパッション
3つ目は、好きでも嫌いでもない人を対象に瞑想を行います。とくに話したことがない同僚やクラスメート、いつも使うバスの運転手、コンビニの店員、などを思い浮かべてください。
次に、その人物が「過去に出くわしたかもしれない困難」をリアルに想像してみます。もしかしたら、その人は「好きな人とケンカをしたかも?」とか「なんらかの病気と戦っているかも?」みたいな感じ。
正直、見も知らぬ人の苦難を想像するのは難しいし、「俺なにやってんだろ?」みたいな気分にもなるんですが(笑)、幅広い範囲の「親切心」を鍛えるためには欠かせない段階でもあったりします。30秒ほどでいいので、できるだけ細かく想像してみましょう。
で、もちろん、ここでも自分の感情の変化に意識を向けていくのをお忘れなく。10秒をかけて、じっくり観察してください。
あとは、その人物を思い描きながら、3つ目のコンパッションフレーズをくり返します。
- その人が、幸せになりますように。
- その人が、嫌なことから自由になりますように。
- その人に、楽しいことがありますように。
- その人が、リラックスして暮らせますように。
フレーズをくり返す時間は2分です。終わったら、やはり自分の中にどんな感情の変化が起きたかに意識を向けてください(30秒)。
6 エネミーコンパッション
最後は、あなたが嫌いな人にまで対象を広げていきます。
自分と意見が合わない上司や同僚、手ひどい別れ方をした元カノや元カレ、ネットで批判ばかりしてくる匿名ユーザーなど、想像するだけでイラッとくるような相手の姿をイメージしてください。
続いて、その嫌いな人が、人生でどのような困難にあっているのかを想像します。「もしかしたら金に困っているかも?」とか「仕事がうまくいかなくてイライラしているのかも?」とか、完全に想像で思い描いてもいいし、本当にその人が病気で苦しんでたりすれば、それを考えて見ればOK。ここは2分をかけてじっくり思い描きます。
でもって、ここでも自分の感情をチェック。嫌いな人に優しい気持ちが生まれればナイスですが、ネガティブな感情が変わらないままでも構わないので、自分の心の動きを10秒だけ観察してください。
で、嫌いな人のことを思い浮かべながら、次のフレーズを1分だけ頭の中でくり返します。
- 嫌いな人が、幸せになりますように。
- 嫌いな人が、嫌なことから自由になりますように。
- 嫌いな人に、楽しいことがありますように。
- 嫌いな人が、リラックスして暮らせますように。
もし嫌いな人の幸せを願うのが難しく感じたときは、その人が何らかのトラブルに会っている様子を想像しつつ実践してください。何度かくり返すうちに、妙にスッキリしたような気分が生まれるはずです。
この作業が終わったら、再び自分の感情に起きた変化を30秒ほど観察して終了です。
まとめ
ってことで、ご覧のとおりガチの「慈悲の瞑想」はかなり面倒なテクニックになっております。もちろん、「この通りやってみよう!」って話ではなく、みなさんで良さげなパーツを選んでアレンジしていただければと。どうぞよしなにー。