今週の小ネタ:車でモテるか?、もの忘れ、無知の知など
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
豪華な車を買うと本当にモテるのか?問題
これはミシガン大学の研究(1)で、実験デザインはこんな感じ。
- 男女の参加者に「豪華な車を買った男」と「質素な車を買った男」に関する短いストーリーを読んでもらう
- そのあとで、ストーリーの男にどんな印象を持ったかを調べる
で、どんな結果だったかと言いますと、まずは「豪華な車」を買うデメリットから。
- 豪華な車を買った男は……
- 「女にモテるために頑張ってそう」と思われた
- 「子育てとかする気もなさそう」とも思われた
- 「とりあえずヤリたいんだろうな」とまで思われた
- 長期的なパートナーを求める相手からは嫌われた
って感じで、とにかくチャラいイメージで見られたらしい。しかし、一方ではメリットもありまして、
- 豪華な車を買った男は、「一夜の相手ならアリ」と思われた
って傾向も出てたりします。長期の関係と短期の関係で心理が変わるという、おなじみの現象がここでも確認されてますねー。
「最近もの忘れが激しくて…」はそこまで悪いことじゃない問題
誰でも歳をとれば記憶力が低下するもんですが、「最近もの忘れが激しくて…」と思えてるうちは大丈夫だよ!って論文(2)が出ておりました。
これはマクギル大学の実験で、記憶力の低下に悩む450人を調べたもの。それぞれが自分の記憶力についてどう思うかを尋ねた上で、その結果を「家族や友人の証言」と比較し、さらに脳のアミロイド(アルツハイマーの原因になるやつね)を調べたんだそうな。
それで何がわかったかと言いますと、
- 「最近もの忘れが激しくて…」と思ってる人ほど、実は脳機能は高い!
ってことです。というのも、脳の劣化が進むと「自分はもの忘れが激しくなった」って事実にすら気づけなくなっちゃうんですな。
実際、2年後に行われた再検査でも、自分の記憶力の低下に気づかなかった参加者は、そうでない参加者にくらべて3倍も痴呆症にかかってたとか。自己認識があるうちはまだまだ安心ってことでしょうな。
無知の知の話
最後はメリーランド大学の実験(3)で、まずは結論から言っちゃうと、
- 「自分は政治の知識がある」と思ってる人ほど、実は政治の知識が少ない!
って感じ。研究者いわく、
これはダニングクルーガー効果によるものだ。その人が特定の知識を持っていなかった場合、不思議なことに、その人は逆に自分は知識があると思い込んでしまう。
逆に、知識がある人ほど、自分を知識不足だと思う傾向がある。
というわけで、心理学の世界ではおなじみのダニングクルーガー効果について調べてくれております。
具体的には2606人のアメリカ人にオンライン調査を行いまして、まずは簡単なクイズで全員の政治的な知識をチェック。その結果を参加者の自己評価と比べたところ、「俺は成績がいいはずだ!」と思ってた人ほど、実際はクイズの結果がボロボロだったらしい。
多くのアメリカ人は、自分の政治的な知識を過大評価しがちだ。自信が高ければそれ以上はくわしく調べようとしないため、いよいよ「自分にどれだけ知識がないか」がわからなくなっていく。いわゆる「無知のダブルバインド」と呼ばれる現象だ。
ってことで、自信がある人ほど問題を深掘りしようとはしなくなるんで、どんどん知識が劣化していくんだ、と。これはよくある話ですなぁ。