スポーツは健康にいいが、肉体労働は体に悪いんじゃないか?問題
「肉体労働は死期を早める!」っていう論文(1)が出ておりました。
これはアムステルダム自由大学の研究で、1960〜2010年の間に行われた「運動量と死亡率」に関するデータをまとめたもの。193,696人のデータを使ってまして、いわゆる観察研究の系統的レビューになっております。
研究者の問題意識はこんな感じ。
近年まで、「運動」の効果はどんなシチュエーションでも変わらないと思われてきた。スポーツでも肉体労働でも、同じように健康には良いと考えられてきたのだ。
「仕事で体を動かすのもスポーツで体を動かすのも同じだよねー」って考え方が、本当に正しいのかをチェックしたわけっすね。
それで何がわかったかと言いますと、
- キツい肉体労働についている男性は、そうでない人にくらべて早期死亡率が18%も高い!
- しかし、なぜか肉体労働についてる女性には同じ相関が見られなかった(つまり、女性は肉体労働でもスポーツでも健康メリットが得られる)
って感じ。ブルーカラーの職業は、なぜか早期死亡率が高くなっちゃうらしい。男女差が出てるのがおもしろいっすねぇ。
もちろん、この研究では結果に影響を与えそうな要素はコントロールされていて、年齢や労働環境、レジャータイムの活動量なども考慮に入っております。原因はよくわからないものの、とにかく肉体労働と楽しんでやる運動は健康への効果が違うんだ、と。
研究者いわく、
今回の研究は、レジャーの運動と肉体労働によって、健康への影響が違うことが示された。これは一種のパラドックスだ。
負荷が高いスポーツは健康に良い影響を与えるのに対して、負荷が高い肉体労働は心疾患のリスクを高め、病気の発症率を増やし、早期死亡率を高める。
とのことで、こういう結果が出た理由はサッパリわからないらしい。もちろん、これは観察研究なんで「肉体労働が死期を高める!」ってわけじゃないものの、なかなか不思議なもんですなぁ。
ひとつ考えられるのは、やっぱ「心がまえ」の影響でしょうか。ホテルの従業員を対象にした有名な実験では、
- 従業員に「ホテルの仕事は最高の運動になる!」と伝える
- 従業員に何も伝えずいつもどおりの仕事をする
ってグループに分けた場合、「ホテルの仕事は最高の運動だ」と思いながら働いたグループのほうが健康の指標がガッツリ改善してたって話があるんですよね。そこらへんの違いが今回の結果に影響してる……のかも。まぁ労働環境をしっかり調整できてない可能性も高いんで、これはあくまで仮説ですが。