「パレオダイエットってどれぐらい研究が進んでるの?」って疑問に答えるために先行研究をだらだら並べるエントリ#1
「パレオダイエットの教科書」にも書いたとおり、「旧石器時代のライフスタイルを取り入れて元気になろうぜ!」って考え方は、歴史的には新しい発想だったりします。生まれてからまだ約30年ぐらいしか経ってないぐらいのレベルなんですな。
なので当ブログでは、「データ数が多いほうが安心する」って方には地中海式ダイエットなどを推奨してるわけです。こちらはもう70年ぐらいの蓄積がありますんで、良質なデータも多くそろっております。
が、それでも近年ではパレオ式の効能を確かめた論文が激しく増えてきましたんで、ちょっと大事なものをまとめてみようかと。パレオダイエットというと「理屈はそれっぽいけど裏づけがないんじゃないの?」みたいに思う方も多いんですが、「いやー、まぁそこそこは出てきてますよ」ってことで。
パレオダイエットのデータいろいろ
パレオダイエットは空腹に悩みにくいよ!#1
こちらはロンドン大学の実験(1)で、「WHOが勧める健康的な食事とパレオダイエットをくらべたよ!」というもの。どちらの食事法も総カロリーと三大栄養素のバランスは等しくしたうえで、「どっちの方が好ましいホルモンが出るか?」ってのをチェックしたところ、
- パレオダイエットのほうが満腹ホルモン(GLP-1とPYY)が増えた!
- 実際の主観的な空腹度もパレオダイエットのほうが高かった!
だったんですな。これは食後3時間の変化なんで長期的にどうなるかは不明ですけど、とりあえず空腹がツラい方にもパレオダイエットはいいんじゃないかと。
パレオダイエットは空腹に悩みにくいよ!#2
こちらはランド大学の実験(2)で、虚血性心疾患に悩む29人の男性が対象。全員ウエストサイズが94センチ以上というから結構な巨漢ですな。
で、ここでは「パレオダイエット」と「地中海式ダイエット」のどちらかを食べるグループに分けて、「好きなだけ食べて空腹を感じたら止めてくださいねー」って指示を出しております。これを12週間ほど続けたところ、
- パレオダイエットのほうが最終的な摂取カロリーが少なかった!
って結果でして、実際に体内のレプチンレベル(満腹ホルモン)も高かったらしい。具体的には、パレオグループが31%増えたのに対して地中海式は18%ぐらい。
言わずもがな、レプチンはダイエットに欠かせないホルモンですから、
パレオダイエットは普通の健康食よりアンチエイジングにいいかもよ!
これはウメオ大学の研究(3)で、肥満の女性を対象に2年もの長期テストを試しております。どんな食事法とくらべたかと言いますと、
- パレオダイエット=脂肪が少ない肉、魚、卵、野菜とベリー類をたくさん。総カロリーの30%がタンパク質で、脂肪が40%、糖質は30%の割合
- 普通の健康食=野菜、フルーツ、豆類をたくさん。主食は全粒粉で鶏肉なども食べつつ、総カロリーの15%がタンパク質で、脂肪が30%、糖質は55%の割合
みたいな感じで、どちらもカロリー制限はしてません。「普通の健康食」グループも、なかなかしっかりした食事法ですね。
で、2年後の結果はと言いますと、
- パレオダイエットのほうが下っ腹の脂肪が多く減り、体内の炎症マーカー(CRP)も改善してた!
だったそうな。一般的な健康食とくらべても、パレオ式のほうが良い可能性があるわけっすね。
パレオダイエットはメタボに効くかもよ!
こちらはLBIっていう民間団体のデータ(4)で、メタボリック症候群に悩む32人の男女を2つに分けております。
- パレオダイエット
- オランダ政府が勧める健康食のガイドライン
って感じで、そのまま2週間を過ごしてもらったそうな。両グループの摂取カロリーは等しくなるように調整されております。
すると、もちろんどちらの食事法でも改善は見られたものの、
- パレオダイエットのほうが心疾患のリスク要因が改善してた!(血圧とかコレステロールとか中性脂肪とか)
って違いだったんですよ。ちゃんと食事を改善すれば、ほんの2週間でもメタボはだいぶ良くなるみたいっすね。
パレオダイエットで健康な人がさらに健康に!
こちらはカリフォルニア大学の研究(5)で、健康的で標準体型な9人の男女に「パレオダイエット」と「いつもの食事」をそれぞれ10日ずつ実践してもらったもの。いわゆるクロスオーバー試験ですな。
そのうえで血液を調べたら、パレオダイエットを行った期間は、
- 血管の弾力性がアップ(=心疾患になりにくい)
- インスリン感受性、コレステロール、中性脂肪なども軒並み改善
って結果だったそうな。小規模な実験ではありますが、たった10日間でも食事改善の効果は得られるのかもしれませんなぁ。
パレオダイエットでスリムな女性がさらに引き締まった体に!
こちらはエディスコーワン大学の研究(6)で、39人の健康でスリムな女性を以下の2パターンに分けております。
- パレオダイエット
- オーストラリア政府が勧める食事法(全粒穀物と野菜、フルーツをいっぱい食べて、飽和脂肪酸は少なめにね!って感じ)
どちらも「好きなだけ食べてねー」って条件で指導していて、とくにカロリー制限はしておりません。
でもって4週間後の違いをチェックしたところ、
- パレオグループのほうが多く体重が落ちて(-4.3% vs. -1.6%)、ついでにウエストサイズも減ったよ!(-3.8% vs. -1.9%)
だったんだそうな。とくにカロリー制限をせずに4週間で-4.3%ほど体重が減ったってのはナイスですね。ほかの研究を見ても、だいたい4〜5週間で4〜5%ずつ体重が減っていくケースが多いみたいなんで、自然に痩せたい場合はこれぐらいが目安になりそうっすね。
多発性硬化症とパレオダイエット
こちらはアイオワ大学の論文(7)。「多発性硬化症にいろんな方法を試してみたよ!」ってタイトルからは想像がつかないですが、実はパレオダイエット食の効果を試した実験だったりします。
ご存じのとおり、多発性硬化症は神経系にダメージが起きる難病で、おもに自己免疫疾患(自分の免疫システムが自分を攻撃してしまう状態)が原因の可能性が大。いまんとこ治療法は確立されておりません。
で、この実験では6人の患者さんを対象に、基本的なパレオダイエット(野菜とフルーツいっぱいで魚と肉も食べる。加工食品はゼロ)にくわえて、
- 筋トレ
- ストレッチ
- 瞑想
- マッサージ
なども組み合わせて、メンタル面からもアプローチした模様。これを12ヶ月ほど続けたところ、
- 多発性硬化症の疲労感が5.7から3.32に改善!
って成果が出たんだそうな。サンプル数が少ないのが何点ながら、名うての難病がここまで改善したのはすばらしいっすね。
そしてまだデータは続く……
ってことで、ざっくりまとめようと思ってたら結構な分量になったので、このエントリは2〜3回に分けます。まぁこれだけいろんな論文があっても「まだデータとしては弱い」のも確かなんですけど、とりあえず現時点での研究レベルをざっくりつかんでいただければ幸いです。