「自分に話しかける」だけで運動のパフォーマンスが簡単にアップする「指示的セルフトーク」
セルフトークでパフォーマンスは上がるか?
スポーツの世界には、昔から「セルフトーク」って技法があるんですよ。その名のとおり自分に語りかけるテクニックのことで、
- オレならできる!
- よっしゃ行くぞ!
などと試合中に頭のなかでくりかえしたりするわけです。「ダイハード」の主人公が自分に向かって「考えろ!考えるんだ!」とかくり返すのもセルフトークの一種ですな。
その効果については1980年代から検証が進められていて、いまのとこ「それなりに良いんじゃないの?」ってのが結論。私もよく筋トレの最中などに「ダマされたと思ってもう1レップ行ってみよう」とか、自分に話しかけております。
でもって、近年ではセルフトークについてのメタ分析(1)も出てて、これがなかなかおもしろいんですな。
セルフトークは場面によって使い分けるべし
これはテッサリア大学の調査で、過去のセルフトーク研究から質が高い32件を抜き出したもの。セルフコントロールを使ったら本当に運動のパフォーマンスは上がるの?って問題について調べてくれております。
では、いきなり結論から言っちゃいますと、
- セルフトークにはちゃんと効果がある!効果量は.43!
だったそうです。そこまで劇的な数値でもないですが、お手軽なテクニックのわりには良い成績じゃないでしょうか。
もっとも、このテクニックを使う際には大事なポイントがありまして、ここで研究チームはセルフトークを2種類に分けております。
- 意欲的セルフトーク:行け行け!俺なら大丈夫!今日は最強だ!やってやるぞ!みたいなやつ
- 指示的セルフトーク:目標をしっかり見ろ!ヒザの角度に気をつけろ!いま左足を出せ!みたいなやつ
景気のいい言葉で気持ちを駆り立てるのが「意欲的セルフトーク」で、パフォーマンス中にやるべきことを言葉にするのが「指示的セルフトーク」ですな。
で、2つのうち効果が高かったのは「指示的セルフトーク」のほうです。こいつを使ったアスリートは集中力があがり、注意力が乱れなにくくなり、プレッシャーにも強くなったんだそうな。いいっすねぇ。
といっても「意欲的セルフトーク」がムダってわけじゃなくて、たとえば持久走やパワーリフティングみたいなグロススキルについては、十分に効果を発揮してくれるとのこと。競技の細かさによってもセルフトークの効果は違ってくるわけっすね。
セルフトークを正しく使う3ステップ
ってことで、セルフトークを正しく使うには、以下のように考えていくと吉であります。
ステップ1・タスクの種類を見極める:自分が行う運動が込み入ったスキルが必要なら「指示的セルフトーク」を使えばOKだし、たんにガッツが必要な運動ならば「意欲的セルフトーク」を使うほうがよし。
ステップ2・タスクのポイントを見極める:「意欲的セルフトーク」を使う場合は、「自分のやる気を掻き立てるものは?」「自分が良いパフォーマンスをしたい理由は?」といった質問をして、自分のモチベーションが上がるポイントを探るといい感じ。
また、「指示的セルフトーク」を使う場合は、「自分が改善したいところはどこだ?」「いつもミスするポイントはどこだ?」「学習のジャマになってるのはなんだ?」みたいに質問をして、自分が達成したいポイントをあぶりだしていくといいでしょう。
ステップ3・セルフトークの内容を決める:ステップ2の質問で出た答えをもとに、自分になにを語りかけるかを決める。たとえば、すぐに気が散っちゃうのが問題なら「ターゲットを見ろ!」が正しいかもしれませんし、試合に勝ってモテたいってモチベーションがあるなら「もうちょっと頑張ればモテモテだ!」が正しいかもしれません。とにかく、自分の目標とモチベーションに沿ったセルフトークを考えるのが大事。
ってことでいろいろ書きましたけど、メタ認知にも近いところがあるんで、スポーツ以外にも学習や仕事の集中力アップにも効きそうでいいんじゃないでしょうか。個人的には本の執筆にも使えるよなーとか思ったりしました。