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【質問】実は枕を使わないほうが睡眠の質があがったりしないですか?



こんなご質問をいただきました。

 

鈴木さんはいま枕を開発しているそうですが、ふと「狩猟採集民は枕を使っていないのでは?」と思いました。

 

パレオダイエットでは狩猟採集の良いところを取り上げますが、それでは枕も使わないほうがいいのではないかと思いましたがいかがでしょうか?

 

とのことで、確かにおもしろいポイントですね。

 

 

ご指摘のとおり、狩猟採集民の睡眠を見てると、枕を持たない生活をしてるケースが多くて、だいたい横向きかうつぶせの状態になりつつ、↓みたいに腕で頭をサポートしながら寝るんだそうな。

 


 

そう考えると、我々も実は手枕で寝たほうが良いのでは?みたいな気もするわけです。果たして、枕なしで寝るのは健康に良いのか悪いのか? ちょっと考えてみましょう。

 

 

 

枕なし睡眠のメリットは寝方によって変わるかも?

で、なぜ私たちが枕を使うかと言えば、「背骨をニュートラルな位置に保つため」ってケースが多いでしょう。首と体の他の部分の位置を合わせて、良い姿勢をサポートするわけですね。

 

 

なので、過去の寝具研究では、ベストな姿勢を保つために最適な枕とは?ってポイントに焦点を当てたものがほとんどで、「枕なしで寝たら背骨にどのような影響を与えるか?」って調査はまだないんですよね。そのため、この点についてはなんとも言いづらいのが正直なところです。

 

 

ただ、このポイントには注意点がありまして、

 

  • お腹を下にしてうつぶせで眠る人は、体重の大部分が体の真ん中にかかるため、背骨が不自然な位置になりがち。ここで枕を使うと、背中と首に負担がかかる可能性はわりとある。一方で、枕を使わずに寝ると頭が平らに保てるので、背骨は適切に保ちやすい。

 

  • うつぶせ寝で姿勢をよくするには、お腹と骨盤の下にクッションを置くほうがよいはず。これなら、枕を使わなくても体の中心が持ち上がり、背骨にかかる圧力が減るんで。

 

ってあたりは気にしておくべきでしょう。逆に、仰向けや横向きで寝る場合には、枕を使わずに寝ると害になるかもなので、背骨をニュートラルに保つためには、枕を使ったほうがいいでしょうね。

 

 

 

枕なし睡眠は首の痛みが悪化するかも?

うつぶせ寝の人は、枕を使わずに寝たほうが首の痛みが減る可能性もあります。まぁ、これも研究例があるわけでもないので、あくまで理論上の話になりますけど、

 

  • うつぶせになると頭が横を向き、首が後方に伸びた状態になる。この状態で枕を使用すると首の角度が大きくなり、首の痛みにつながると思われる。

    しかし、ここで枕を使わずに寝ると、不自然な姿勢が最小限に抑えられ、背骨への負担も軽減されるはず。

 

  • その他の姿勢の場合、枕を使わないことで首の痛みが悪化したり、痛みが生じたりするケースはよく確認されている。これは、仰向けや横向きで寝ると首が伸びやすく、もし枕がないと、その状態のままに一晩を過ごすことになるからだと思われる。さらに、枕を使用しないと、首の筋肉にかかる圧力が不均等になるため、首の痛みやコリ、頭痛にもつながるかも。

 

ってのは言えそうな気がします。ただし、いまのところ、枕と首の痛みに関する研究は、ほとんどが「痛みに効く最適な枕とは?」ってとこに焦点を当ててるんで、これもはっきりしたことは言えないですね。寝ている間に首が痛くなる場合はぜひ医師に相談してください。

 

 

 

枕なしで寝ると髪に良いの悪いの?

現時点で、枕の使用と髪の健康について調べた研究はなかったりします。なので、こちらもどうにも言えないところですね。

 

ただし、枕カバーの素材が髪に影響を与える可能性は十分にありまして、個人的には(あくまでも個人的には)、おそらくシルクなら髪にめだったダメージもないと思われます。逆に、綿の枕カバーなどは天然のオイルを吸収してしまうので、どうかなーといいったところです(あくまで推測ですが)。

 

 

 

枕なし睡眠への雑感

ということで、個人的な推測ばかりで申し訳ないのですが、そもそも「寝具を使わないとどうなるか?」って研究がほぼないので、この問題にはっきりしたことを言うのは超難しいんですよ。

 

 

また、狩猟採集民の調査を見てると、確かに枕を使わないケースも多いんですが、一部では、丸めた服や敷物、かき集めた植物などを頭の下に置く部族もいたりするんで、こちらも判断しづらいんですよね。

 

 

それと同時に、考古学の調査(R)なんかを見てると「枕(っぽいもの)の使用は有史以前からあったのでは?」とも言われますし、私たちの祖先である類人猿なども500万年から2300万年前のあいだに木の枕を使ってた可能性もあったりするんですよ。つまり、枕ってのは人類の遺伝子にフィットしたガジェットであり、それゆえにパレオダイエットとしてもアリかもしれないんですよねー。

 

 

まぁ人によっては枕なし睡眠のほうが適してる可能性もありますんで、その場合は、以下のポイントを意識してみてください。

 

  • すぐに枕をやめるのではなく、まずは丸めた毛布やタオルなどを使い、枕なしで眠れるようになるまで慣れさせる。

 

  • うつぶせで寝るときは、お腹と骨盤の下にクッションを置き、背骨がニュートラルになるようにする。仰向けで寝るときは膝の下に、横向きで寝るときは膝の間にクッションを入れましょう。

 

  • 少しでも肩や腰に痛みが出たら、すぐにやめて枕生活にもどる。また、もともと首や背中に痛みがある場合、または背骨の病気がある場合、枕なしで寝るのは危険なので手を出さない。

 

ってことで、現時点ではよくわからんことばかりですいません。そもそも「万人に向くような枕は存在しない」ってのがいまの結論ですし、枕の世界は難しいですなぁ……。

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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