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「最強の枕」についていろいろ調べたあげく、めちゃくちゃ常識的な結論に落ち着く話


  

諸事情で枕について調べておりました。簡単に言えば「最高の睡眠をもたらす最強の枕の条件とは?」みたいなテーマでして、かつて「適当に丸めたTシャツとかを首の下に置いて寝てる」と発言してドン引きされた経験を持つ私としては、なかなか気になるところなわけです。ちなみに、丸めた服を枕がわりにしているのは個人的な実験のためでして、あくまで皆さまにおすすめしてるわけじゃないのでご注意ください。

 

 

で、まずはこのエントリの大きな結論から言っておきますと、

 

  • 最強の枕は存在しない!自分の首や頭に適したものを探すしかない!

 

みたいになります。ぐわー、めちゃくちゃ普通だ!普通すぎる! でも、こういう結論に落ち着くしか感じなんすよねー。

 

 

良い枕を左右するパラメータとは?

ということで簡単に詳細を見ていくと、大きなガイドラインとして参考になるのは2020年の系統的レビュー(R)でして、枕に関する11件の過去研究から309人のデータをもとに「どんな枕が睡眠の質を上げてくれるの?」ってのをまとめてくれております(IFはかなり低めですが)。系統的レビューとしてはデータが少ないんすけど、あらためて調べると「そもそも枕に関する質の高い研究は少ない!」って感じなので、いたしかたないと申しますか。

 

 

そこで分析の結果なにがわかったかと言いますと、「良い枕を左右するパラメータ」は以下の4つらしいんですな。

 

  1. 枕の素材(ここではラテックスが推奨されている)

  2. 自分の寝方に適した形状(横向きで寝る人には側面が高い方がいいし、仰向けで寝る人は中央が低くて平らな方がいいし、うつ伏せで寝る人はかなり低めの枕か、なんなら使わなくてもいい)

  3. 枕の高さ(ここでは7~11cmぐらいを推奨してるものの、まだ断定はできない感じ)

  4. 枕が熱を逃してくれるかどうか

 

まぁ本気で枕を探したことがある方にとっては、どれも定番のポイントじゃないでしょうか。いずれもデータの質は中程度って感じでして、枕選びの基礎ポイントとしては良いのではないかと。

 

 

では、もうちょい各論を掘り下げてみると、以下のようになります。

 

 

 

1.素材と形は何がいいの?問題

素材に関する調査はいくつかあって、たとえば韓国の研究(R)だと、睡眠不足な332人を対象に、ラテックスやメモリーフォームを使った枕を使ってもらったところ、普通の枕を使ったグループよりも首や肩の痛みが減ったそうな。ここでのポイントとしては、

 

  • 各部位(頭、首、肩)に適した形状設計が、効果的な枕の最も重要な要素かも
  • 首や頭の部分は水平面がフラットで垂直面が緩やかなカーブを描いている枕が効果的かも(こういう感じの、中央部がなだらかにヘコんでるやつ)
  • 立体構造の枕(こういう感じの、水棲生物みたいなグニャッとした形をした枕)の効果はよく分からん

 

みたいになってます。要するに、首をしっかりとサポートする枕が大事だから、その点でラテックスや形状記憶系の素材はやっぱ有利だし、逆に羽毛系は不利なんじゃないか、と。頸椎や頭のサイズはみんな違うから、そりゃあそういう結論になりますよねぇ。

 

 

ただ、ここでは立体構造の枕は「よくわからん」って感じですが、一方では「羽毛枕と形状記憶枕と立体構造枕を比べたら、立体構造がベストだったよ!」って報告(R)もあったりしまして、特殊な形状の枕が良い可能性も残されてたりはします。この点でも、やっぱ試すしかないか……って結論になっちゃいますね。

 

 

ちなみに、この結論は2017年の報告 (R)でも似ていて、

 

完璧な枕はあるのだろうか? 結局のところ、ひとつのサイズがすべてに合うわけではないことがわかった。ある人にとっては、平らなパンケーキのような枕が安らかな眠りを誘う。またある人は、膨らんだ雲型の枕でないと眠れなかった。 

 

って感じなんすよね。うーん、難しい……。

 

 

 

2.枕の高さはどうすりゃいいのか問題

枕の高さについては2016年の報告(R)がありまして、健康で若い10人の被験者を集めて4種類の高さの枕を使ってもらい、1000個以上のセンサーを搭載した感圧マットで圧力データを計測したんだそうな。その具体的な圧力についてはリンク先の画像を見ていただくのが早いですが、全体的に見ると、高い枕を使うほど背骨と頭蓋骨をつなぐ部分に圧力が生じてまして、研究チームは、

 

(枕の高さは)枕の設計において考慮すべき重要な影響力のあるパラメータである可能性がある。

 

と述べておられます。これで見ると、やっぱ11センチぐらいの高さが良さそうな気がするわけですが、要するに「もっとも大事なのは背骨の位置を正しく誘導する高さだよー」って話なので、これまた「何センチの枕を使おうぜ!」とは言いづらいとこがありますね。

 

 

 

3.枕の放熱問題

枕は頭を涼しくしてくれるものが良い!ってのは多くの文献で一致するところで、その理由については2015年のレビュー(R)いわく、

 

枕のもうひとつの重要な特徴は、夜間の睡眠時に頭部と体幹の温度を下げることだ。なぜなら、深い眠りに重要な交感神経系の神経伝達が、冷たい枕では興奮しにくくなるからである。

 

とのこと。熱がこもりやすい枕は交感神経の覚醒をうながしちゃうので、徹底的に冷やすべきなのだ、と。この点で、とにかく「脳を冷やそうぜ!」と主張してるブレインスリープピローとかは理にかなってるんでしょうな(さすがに値段が高すぎるとは思いますが)。一方で、テンピュールに代表される低反発ウレタン系の枕は、首のサポートって点ではいいんだけど、熱がこもりやすくてアレだよなーって気がしますね。

 

 

 

暫定的な結論

ということでいろいろ書いてきましたけど、すべてをひっくるめれば「良い枕を左右するパラメータ」を参考に、通気性が良くて自分の首をサポートしてくれるものを選ぼうぜ!」ぐらいの話になります。そう考えると、どんなに高級枕でも一定の否定的なレビューがついちゃうのはいたしかたないんでしょうな。もうめんどうになってきたから、今後もTシャツをまるめた枕を使うか……。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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