糖質を減らしすぎると甲状腺ホルモンが減って元気がなくなっちゃうのでは？問題
糖質制限のデメリットに関するご質問をいただきました。
糖質制限ダイエットについて質問です。糖質をカットすると甲状腺に問題が起きて良くないと聞きました。鈴木さんは糖質制限には良くも悪くもないという立場だと理解してますが、甲状腺の問題はどうなんでしょうか？
ってことで、糖質をカットしすぎたら甲状腺に問題が出てしまうのではないか？と。確かに、これはよく耳にする問題じゃないでしょうか。
ちなみに、ご質問にもあるとおり、私は糖質制限については「好きならおやりなさい！でも、あんま効果を期待しすぎないでね！」ぐらいのスタンスでして、減量に一定の効果はあるものの、それは決して他のダイエット法より優位性があるわけじゃないし、ましてやその他にいろんなメリットを得られるってわけでもないしなー、ぐらいの感じっすね。
で、ご質問にある「甲状腺」ってのは喉仏のすぐ下ぐらいにある器官で、T4やT3ってホルモンを作り出す働きを持っております。そのうち影響力が大きいのはT3ホルモンのほうで、安静時の体の代謝とか多量栄養素の代謝を助けてくれるんですよね。
もしT3の量が減っちゃうと新陳代謝は下がっちゃうし、エネルギーの消費量も低下しちゃうしでいいことなし。ヒドい場合には、疲労感、や筋肉痛、脱力感が激増しまして、生活の質がかなり下がってしまうんですよ。これはどうにかしておきたいところですねぇ。
それでは、なぜ糖質制限が甲状腺に悪いと言われるのかと言いますと、昔から「甲状腺がちゃんと働くには糖質が大事！」って話があったです。たとえば80年代の古い研究(R)とかだと、低カロリーな食事をしつつ1日の糖質を120g以下にすると、T3のレベルがガツンと下がっちゃうと報告されてるんですよ。もっとも、この報告における総摂取カロリーは360kcal、645kcal、1200kcalの3パターンなので、普通に食事をした場合の低下量については謎なんですけど、とりあえず糖質が甲状腺に大事な働きをしてそうだなーってのは言えるわけです。
ここらへんは追試(R)でも確認されていて、低カロリー下で1日44gの低糖質食を続けるとT3は減ったものの、1日12gの高糖質食の食事を1週間続けたところ、1日1,000kcalの低カロリー食でもT3の数字はもとにもどったそうな。これを見ても、やっぱカロリーとは無関係に糖質が甲状腺の働きを左右してるんだろうなーってとこです。
ならば、やはり糖質制限は甲状腺によくないのかと言われれば、そこは意外と判断が難しいところでして、ケトジェニックと普通食の違いを比べた最近の研究(R)では、「めちゃくちゃ糖質を減らしても安静時の代謝には違いがなかったよー」と報告されてるんですよ。これはサッカー選手を対象にした4週間の研究で、1日のタンパク質量を体重1kgあたり1.8gに設定しつつ、1日約50gの低糖質食と普通食の違いをみたところ、
- どちらの食事でも安静時の代謝に変化は見られなかった
- 体重や体脂肪にも目立った違いは見られなかった（総カロリーとタンパク質の量が同じなら糖質を変えても体組成は差が出ないってのは、昔からよく言われてることなので驚きはないですが）
って結果だったそうな。こうしてみると、糖質制限は甲状腺ホルモンを減らす方向には働くものの、安静時の代謝に影響を与えるほどでもないって感じもしてくるわけですな。
もっとも、こられはあくまで数週間の実験でしかないので、数年にわたってケトジェニックをやった場合にどんな悪影響が出るのかは判断できないとこです。個人的には、あんま極端な食事は長く続けるべきではないって考え方なので、長期のケトジェニックについては積極的におすすめしないですが、いたずらに甲状腺のダメージを心配するほどでもなさそうではあります。
話をまとめますと、
- 糖質制限は甲状腺ホルモンを下げる（ただし、これは糖質を増やせばすぐリカバーできる）
- ただし、甲状腺ホルモンの低下量は深刻なレベルじゃない……ような気がする
- とはいえ、すでに甲状腺の問題を抱えている人の場合は、糖質をいたずらに減らすのはおすすめできないので、1日に最低でも120gは摂取しておきたい
ってとこですかねぇ。私は普通に糖質をとってる人間なので関係がない話ですけど、上記に該当する方はご注意くださいってことでー。
