今週末の小ネタ:3倍健康になれる方法、みんな自分には「役に立たない」アドバイスをしがち、IQが高い人ほど健康なのはなぜか?
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
コミュニティに入ると健康習慣が身につく確率が3倍に
「パレオチャンネル」では、似たような考え方を持つ人たちが集まって、日々自分の疑問や成果を投げかけあっております(部族のみなさんいつもありがとう)。このような、同じ考え方を持つ人が集まるコミュニティは非常に重要で、「自分と似た仲間と体験を共有すると、健康的な習慣が身につく確率がグンと高くなる」からです。
その実例として、マサチューセッツ工科大学などによる調査(R)がおもしろいので、チェックしておきましょう。この実験は、710人の参加者を対象にしたもので、研究チームは全員を「ヘルスバディ」と呼ばれる小さなコミュニティに分け、オンラインの健康プログラムに参加するように指示。それぞれの参加者には「健康ダッシュボード」と呼ばれる機能がオンラインで提供され、それぞれのコミュニティのメンバーが、「毎日どれだけ運動しているか?」「どれぐらい健康的な行動をしているか?」などの情報をリアルタイムで把握できるように設計されていたんだそうな。
でもって、それから7週間後の成果を確認してみると、結果には大きな違いが確認されました。健康系のコミュニティに参加したグループは、そうでないグループとくらべて、ダイエット日記の使用やその他の健康的な行動をとる確率が3倍も高くなったんですよ。
この結果について、研究チームはこんなコメントをしています。
私たちはコミュニティにとても影響されます。仲間となんらかの交流をするだけで、自分が変わろうとするモチベーションは高まるのです。
ヒトは社会的な動物なので、同じ目的を持つ人たちとコミュニケーションを取るだけで、最高の体調を目指すモチベーションが大きく高まるわけですね。似たような目標を持つ仲間を作るだけで、健康のゴールを達成する確率が3倍も上がるんなら、こいつは試す価値がありますな。
みんな自分には「役に立たない」アドバイスをしがち問題
「みんな他人には役立つアドバイスができるのに、自分ではそのアドバイスを守らないよねー」みたいな研究(R)が出ておりました。
これは149人の学生を対象にした試験で、みんなに「期末試験が迫ってきたら、どんな準備をするべきか?」を考えるように指示。その際に、「自分への対策を立てるグループ」と「友人へのアドバイスを考えるグループ」の2つにわけて、それぞれについてベストなものを考えてもらったんだそうな。
ここで、期末試験に対するアドバイスは大きく2パターンにわかれてまして、
- 「火曜日は午前10時から午後2時に勉強する」のように、明確な時間や勉強の内容を決めて取り組む。
- 「午前のどこかで1時間、夜のどこかで1時間ぐらい勉強する」のように、ざっくりしたスケジュールで勉強する。
みたいになっていたそうな。当然、正しい勉強法は前者で、はっきりしたスケジュールを組んだほうが成果が出やすいのは、多くの研究が示すところであります。
が、実験の結果は、アドバイスを自分に向けるか他人に向けるかで大きな違いが出まして、
- たいていの人は、友人には「スケジュールは明確にしたほうがいいよ!」とアドバイスした。
- しかし、みんな自分の勉強計画を立てるときは、「ふんわりした計画の方が魅力的だ!」と考え、ざっくりしたスケジュールの勉強法を選んだ。
って感じだったそうな。ほとんどの人は、他人には正しい方法を勧めることができるのに、自分では間違った方法を選びがちなんだってことですね。
研究チームいわく、
多くの人々は、自分の計画に多少の余裕を持たせることを好む。しかし、ほとんどの人は、より体系的な計画を立てる方法を、他の人に勧めてしまう。
言い換えれば、なんらかの計画を立てるとき、私たちは他人には非常に良いアドバイスができるが、自分自身にはその同じアドバイスに従わないのだ。
とのこと。みんな友人には「厳しいけど効果的」なアドバイスができるんだけど、自分ではつい「甘いけど無効」なアドバイスを採用しちゃうってことですね。これはあるでしょうねぇ。
ただし、この研究によれば、「明確なスケジュールのほうが効果が出やすい!」と自分に言い聞かせることで、この問題をクリアできるようになるとのこと。このバイアスは注意しておきたいところですな。
IQが高い人ほど健康なのはなぜか?
健康科学の世界では、「IQが高い人は健康的!」ってデータが昔から何度も確認されてたりします。不思議なもんで、IQが高い人ほど病気にかかりにくくて寿命が長い傾向が報告されてるんですよ。
ただ、そういう現象が見られる理由はまだよくわかっておらず、「IQが高い人はなぜ健康なのか?」ってとこは謎のままだったりします。一説には、知能が高い人ほど高度な医療を受けやすいとか、健康的な選択をしやすいとか、ストレス管理がうまいとか言われてきたんですけど、これといった理由はわかってないんですね。
が、そんな状況下、新しい研究(R)は「高IQ=健康」の原因を掘ってくれてて参考になりました。
この研究は、SHAREという有名な健康調査を使ったもので、10,996人の参加者を13年にわたって調べたデータから、IQと健康の関係を掘り下げております。そのうえで、どんな結論が出たかと言いますと、以下のようになります。
- まず、「IQが高いほど健康である」という仮説はここでも支持されており、認知機能のスコアが高い人は、慢性疾患や症状の割合が低かった。
- 喫煙、アルコール摂取、BMI、職場環境などの要因は、「高IQ=健康」な理由とは無関係だった。
- IQと健康の両方に関連する唯一の変数は「運動不足」だった。これらの知見は、国や文化を超えて一貫していた。
というわけで、このデータからは、IQが高い人ほど健康なのは運動をよくするからであり、それ以外の要素はあんま関係ないのではないか?ってことですね。うーん、これはちょっと意外だ。
まー、この研究は、参加者の知能を50歳以降に測定しているので、そこらへんはデータの限界になっております。さらに、当初の参加者の3分の2は研究から脱落してまして、その点でもデータが偏っているのはあるかもしれません。このあたりの制約にはご注意いただきたいですが、とにかく「IQが高い人ほど運動をしており、そのおかげで寿命が伸びるのかも?」ってあたりは覚えておくとよいかもしれません。